日本の“教育格差”はどうすればなくなるか:INSIGHT NOW!(2/2 ページ)
経済的理由や家庭環境などの事情で、学習したくても学習できない――日本にはそんな子どもたちがたくさんいるという。そんな“教育格差”をなくすためにNGO「3keys」は活動しているが、大多数の大人がこの問題を認識していないことに問題があると言う。
“同情”を買うのではなく、問題意識を持ってもらう
そこで「学習支援」と同様に「啓発活動」にも「学習支援」と同様に力を入れているという。この分野の情報を積極的に発信することで、多くの人たちに関与を促し、社会そのものを変えていくという狙いがある。
こうした子どもの教育問題は家庭や女性の問題と捉えられがちだが、もっと企業や地域をはじめ、社会全体が関わるべきであり、女性だけでなく男性も積極的に関わらないといけない――こうした考えのもと、2013年度から「Child Issue Seminar」というセミナーを設け、家庭・学校・地域・企業・社会の5つのテーマから子どもの社会保障について考えている。
「従来は講演登壇やパブリシティを中心に行ってきましたが、これらは普段私たちがなかなかリーチできない層に対して、リーチできる貴重な機会ではある一方、どうしても“待ち”になってしまいます。そこでもっと主体的に情報を発信できる機会をつくろうと考え、2013年度から『Child Issue Seminar』を設け、講演登壇・パブリシティ・セミナーをうまく使い分けながら、情報発信をするようにしています」(森山誉恵氏)
「児童支援」という言葉を使うと、途上国の問題と混同され、物資支援などを想起する人も多いそうだ。しかし、今日本で起きている問題は、学習したくてもできなかったり、そもそも学習意欲が欠如していたりするなど、環境に起因するものがほとんどであり、物資を提供すればすむような単純な話ではないという。
そのため、啓発活動においては、他人事として“同情”を買うのではなく、自分たち大人が向き合うべき問題だときちんと誤解なく伝えることを特に意識しているそうだ。
“数の原理”ではなく“覚悟と継続”
「現代社会において取り残された課題というものは、一般的な営利分野のように数の原理で進めるものではなく、覚悟を持って地道に我慢強く続けていくことによって初めて成果が表れる」と森山氏は言う。なので、3keysの組織自体を大きくして全国で展開するのではなく、それぞれの地域で、地域に根ざした形で課題解決に取り組む人を増やしていきたいとしている。
「児童憲章」では最低限の保障がうたわれているにも関わらず、それにすら達していない子どもたちが存在する実態の中で、「まずは“学習保障”の分野で、最低限の教育環境を整備していくとともに、今後は“学習保障”以外の分野においても、何ができるのかを模索しながら、すべての子どもたちが最低限の保障を確実に享受できる社会にしていきたい」と森山氏は力強く語ってくれた。(小槻博文)
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