なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。
求められるのは「位高ければ徳高きを要す」の感覚
もちろん、これは日本の調査捕鯨などが世界的に注目されているという流れに沿うものであり、世界的にも批判しやすい風潮がある。また人権や環境団体は、時に「走り過ぎる」こともある。
ただ1つはっきりしておきたいことは、筆者自身はジャーナリストであり、「自称ジャーナリストの活動家」ではないので、例えば捕鯨についてもどちらかの肩を持つつもりは毛頭ない。
楽天が国際的な企業として本当の意味で正当に存在感を示すためには、こうした問題とその対処が足を引っ張りかねないということを忘れるべきではない。結局のところ、英語公用化などで国際化をうたう楽天は、国際的な企業になりきれていないのかもしれない。
もはや語り尽くされているが、そもそも英語教育がなされていない日本で英語を公用化したところで、「国際企業ごっこ」の域は超えない。今回の件では、国際感覚のなさが図らずも露呈したと見られても仕方がない。
世界的には、英語=国際化ではない。外国企業のエリートと話をすると、やはり「ノブレスオブリージュ(財力や権力、社会的立場が高い人や組織は、相応の社会的貢献をすべきだという考え)」という感覚が大事であることに気が付く。
もちろんそんなきれいごとは表向きだけのものかもしれないが、それでも企業としてどう国際的に認められていくかという意味では、見せかけであってもノブレスオブリージュの感覚は必要だろう。
これは企業に限らず、個人にも当てはまる。欧米で、政府系や一流企業、一流大学などに深く関わっていく際には、社会奉仕またはコミュニティ活動などについて聞かれることが多い。社会的な責任、もしくは少なくとも社会奉仕に対する意識があるかどうかは重要視される。
真のグローバル企業になるために、失敗に学べ
2010年、日本国内で人気の高いディスカウントチェーン「ドン・キホーテ」が米ユダヤ系団体から批判を受けたことがあった。というのも、ナチスドイツの制服を模したコスプレ用商品をパーティグッズとして販売していたからだ。
このユダヤ系団体はWebサイトに公開質問状を掲載し、商品の撤去を求めた。このニュースは国外でも報じられ、ドン・キホーテにグローバルな感覚がないことを露呈する結果になった。世界的にはあり得ないことである。
楽天はもはや、ドン・キホーテのようなドメスティックな存在ではない。しかも世界的な企業でありたいと考えているはずだ。ならば、まず環境団体に叩かれるような問題は直ちに排除すべきである。
楽天は、世界の有名起業家などを集めてシンポジウムなど立派な活動を行っているが、企業倫理や社会的責任について批判される企業というのが広まれば、世界の大企業に仲間入りはできない。
買収を重ねることで企業規模を拡大し過ぎ、もはやそこまで目が行き届かなくなっているなら、楽天の未来は暗い。批判や失敗などから学び、楽天が本当のグローバル企業になる日を見たいものである。
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