JRは夜行列車を見捨てなかった――その先に見える「新・夜行列車」時代:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
JR西日本とJR東日本から相次いで「豪華夜行列車」が発表された。その一方で消えていく夜行列車もある。今後も夜行列車を続けていく意思があるなら、次にビジネス需要向けの夜行列車も検討してほしい。東京―函館間の新幹線夜行列車を提案する。
「ななつ星 in 九州」よりリーズナブル?
ところで、JR九州の「ななつ星 in 九州」は高額な料金も話題となった。JR西日本の真鍋社長は「ななつ星 in 九州よりリーズナブルな料金にしたい」と語ったという(参考記事:「「1両1室」豪華寝台列車 JR西日本、17年春めど」:日本経済新聞)。
しかしJR西日本の新たな寝台列車は、最上級で1車両1室を使うぜいたくな客室である。従来の列車運賃体系とは異なるハイクラスな料金を設定するだろう。そもそもここで「リーズナブル」という言葉は失言だ。料金を安くしたいという意図だと思うけれど、リーズナブルは「理にかなった」「価値に見合った」という意味だ。この発言は「ななつ星 in 九州」に対する皮肉とも取られかねない。乗ってみなければ何とも言えないが、ななつ星 in 九州は高額であっても「リーズナブル」であるはずだ。もちろんJR西日本の寝台列車も同じである。
そして「リーズナブル」はJR東日本のクルーズトレインも同じ。料金体系や運行区間は公表されていないけれど、ハイクラスな料金設定になるだろう。客室の配置を見ると片側に寄っているから、海を眺めるルートではないか。運行区間は首都圏発、日本海側経由で、五能線を通って青森へ至るルートがよさそうだ。青森に接続すれば2016年に開業予定の北海道新幹線につながる。乗客は新幹線で首都圏に戻ってもいいし、北海道へ渡れる。JR東日本の太平洋側は、SL列車の「SL銀河」、レストラン列車「TOHOKU EMOTION」、復興支援企画列車「ポケモンウィズユートレイン」を相次いで投入している。JR東日本としては、新しい列車を日本海側に向けてバランスを取るだろう。
相次ぐ豪華列車のニュースは、鉄道ファンではなくともワクワクする。旅行資金を貯めるために「銀行で積立口座を作ろうか」という気分にもなる。
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