JRは夜行列車を見捨てなかった――その先に見える「新・夜行列車」時代:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
JR西日本とJR東日本から相次いで「豪華夜行列車」が発表された。その一方で消えていく夜行列車もある。今後も夜行列車を続けていく意思があるなら、次にビジネス需要向けの夜行列車も検討してほしい。東京―函館間の新幹線夜行列車を提案する。
消えていく旧来の夜行列車
いわゆる「豪華列車」が話題となる裏で、消えていく夜行列車がある。
JR西日本は2014年5月28日に「寝台特急トワイライトエクスプレスは2015年春までに運行を終了する」と発表した。理由は車両の老朽化とのこと。トワイライトエクスプレスは1989年に誕生した。最後尾に展望スイートを備えた「元祖豪華寝台列車」で、運行開始から25年が経過している。車両自体はもっと前、1970年代に作られた「ブルートレイン」を改造している。40年以上も使われた客車だ。乗れば客室は快適。しかし通路や連結部、塗装の傷み、揺れ具合などに古さを感じる。
トワイライトエクスプレス廃止の事情としては、青函トンネルの北海道新幹線対応工事に支障があるためと言われている。そうなると、影響はJR東日本の上野─札幌間の寝台列車「北斗星」や「カシオペア」にも及ぶ。JR東日本はまだ公式発表していないが、幹部の談話として「北海道新幹線開業前に廃止を検討」と報じられてきた。特に「北斗星」に関しては「トワイライトエクスプレス」と同型の客車であり、老朽化も理由となる。
「カシオペア」は1999年に専用の客車を新たに製造した。まだ老朽化したとは言えない。しかし近年、JR東日本は「カシオペア」の車両を使った秋田行きのクルーズトレインを企画している。上野―札幌間廃止後の客車の使い道を模索しているようだ。
模索という意味ではJR西日本も同じ。旅行会社とタイアップし、トワイライトエクスプレスの車両を使った広島行きランチクルーズトレインを企画した。これらは、廃止列車の車両の使い道を探しているとも言えるし、新たなクルーズトレインに向けたリサーチとも言えそうだ。
つまり「トワイライトエクスプレス」と「カシオペア」は、次の「豪華列車」に世代交代するという見方ができる。前向きである。その一方で、座席のみの夜行列車はひっそりと消えていく。新宿―新潟を結ぶ座席夜行快速「ムーンライトえちご」は2009年に定期運行を終了し臨時列車となった。しかしこの夏の臨時列車のリストには入っていない。臨時列車に格下げされ、そのまま運行終了という事例は、上野―金沢間の寝台特急「北陸」や、同区間の座席夜行急行「能登」、大阪―青森間の寝台特急「日本海」、新大阪―博多間の座席夜行快速「ムーンライト九州」などがある。「ムーンライトえちご」も同じ運命と思われる。東京―大垣間の「ムーンライトながら」は「ムーンライトえちご」と同じ2009年に臨時列車となった。いまだ存続しているとはいえ、運行本数は減少している。
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