少女300人を誘拐したボコ・ハラムが恐れる「死の呪い」:伊吹太歩の時事日想(2/4 ページ)
ナイジェリアでテロ行為を繰り返す組織「ボコ・ハラム」。300人以上の少女を誘拐し、約1万2000人を殺害してきた彼らだが、ここ数日で事件解決に向かうかもしれない、ある“異変”が起きているという。
300人以上の少女を誘拐したボコ・ハラム
まずは、この誘拐事件を簡単におさらいしよう。事件が発覚したのは2014年4月14日、当局による発表だ。ボルノ州チボク地区の学校から15〜16歳の少女たち276人がトラックで武装集団に連れ去られ、ボコ・ハラムが拠点にしている森に向かったという。事件当日までの4カ月間、治安悪化で学校は封鎖されていたが、その日、少女たちは物理の期末試験を受けるために登校していた。
誘拐された生徒のほとんどはキリスト教徒だったが、事件から1カ月ほどして公表されたビデオでは、その生徒と思われる少女たちがイスラム教のスカーフ「ヒジャブ」をかぶっていた。ボコ・ハラムは少女たちをイスラム教に改宗させたと主張したのだ。
ボコ・ハラムの目標がイスラム教のシャリア(イスラム法)で統治される国家の樹立ということを考えれば、少女らを改宗させたのも納得ではある。ボコ・ハラムは少女たちを花嫁として売り飛ばすか、奴隷にすると宣言。欧米メディアも少女たちが救出されなければ“性奴隷”にされると大騒ぎした。
5月末には刑務所にいる囚人と少女を交換するという話も出たが、ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領が米英やフランスなどに相談したところ、テロリストと交渉するなと諭され、交換を止めた経緯がある。
ボルノ州知事のコメントによれば、少女たちは戦闘員らに連れられて国境を越え、隣国のカメルーンやチャドに入ったという。その後も別の少女60人が誘拐されたり、レイプされた少女2人が発見されたりしているが、一方で誘拐された女生徒たちに関する情報は錯綜し、依然として行方は掴めていない。
ボコ・ハラムがこうした学校襲撃事件を繰り返すのは、女子の教育を否定しているためだ。これ以外にもテロ攻撃を強化しており、英ガーディアン紙は2014年に入って4カ月で無差別に約1500人を殺害したと報じている。ジョナサン大統領によれば、これまでに同国北部で約1万2000人が殺害されているという。
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