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PC遠隔操作ウイルス事件でも使われた、匿名化ツール「Tor」ってナニ?:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
犯罪の温床になるとして、世界中で注目されている匿名化ツール「Tor」。日本でもPC遠隔操作ウイルス事件で使われたが、結局、このTorとは一体どんなものなのだろうか。
それでもTorを必要とする人はいる
こうした捜査の手が延びているとはいえ、Torのネットワークを使った犯罪がいまだに蔓延(まんえん)しているのは事実だ。
冒頭で紹介した記事に出てきた「リベンジポルノのWebサイト」は今も、携帯で撮られたような一般女性の猥せつ写真などをアップし続けている。出元が不明で、ハッカーが盗み出したり、元恋人などがアップロードしているとみられている。違法ショッピングサイトのシルクロードも別の管理人がサイトを復活させた。
こうしたTorについてのニュースを見るたびに、「犯罪者がTorを悪用することで、本来の利点が失われかねない」と感じる。もちろんTorが危険なソフトがあることは間違いない。犯罪に関わったり巻き込まれたり、無意識のうちに当事者になっていることもあるので、利用には厳重な注意が必要だ。
しかし、世界には体制に反する発言で拘束されたり、最悪の場合は殺されたりする恐怖政治が続く国も少なくない。リベンジポルノや麻薬売買などを行うサイトに絡んでTorがあちこちで訴えられるなどして、ネットワークが封鎖されたり、その利用が制限されるようなことがあれば、世界中で圧政などに苦しむ人々の情報交換や活動まで妨害することになってしまう。そうなれば、まさに本末転倒だといえる。
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