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「シリア日本人誘拐」の裏にある、テロ組織の“身代金ビジネス”伊吹太歩の時事日想(2/4 ページ)

シリア北部で日本人が、イスラム教過激派組織に誘拐されたことが判明した。欧米でもジャーナリストや技師が過激派組織に誘拐されているが、その裏にはテロ組織の資金源となる、巨額の「身代金ビジネス」があるのだ。

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フォーリー氏に137億円の身代金を要求

 フォーリー氏の殺害ビデオは「米国へのメッセージ」とタイトルがつけられている。動画の中で、ISISのメンバーは「処刑の動機は、米軍が始めたイラク北部への空爆に対する報復であり、空爆を止めなければ別の米国人拘束者を殺害する」と脅迫している。さらに捕虜の交換なども釈放の条件にしていたようだが、そんな大義とは裏腹に、水面下では身代金の交渉が行われていた、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 同記事によれば、ISIS側はフォーリー氏の身代金として1億3200万ドル(日本円で約137億円)を要求していた。要は、彼らの目的は身代金だったのである(参照リンク)。

 実はフォーリー氏の殺害直前、その犯行グループから、フォーリー氏の家族宛てに電子メールが送られており、メールに「お前たちは、ほかの政府は受け入れてきた現金送金という手段で、釈放を交渉する多くのチャンスを与えられていた」という文があった。この文言からも、彼らの目的は明らかだろう。

photo フォーリー氏への身代金を取り上げた、ニューヨーク・タイムズ紙の記事「Before Killing James Foley, ISIS Demanded Ransom From U.S.」

 だが、米政府は身代金の支払いを拒否した。もちろん法外な金額であることは言うまでもないが、米国がテロリストに妥協しない方針を貫いたからだ。米政府はかねがね、身代金を払えばテロ組織を延命させるだけでなく、同様の事件が繰り返されるだけだと主張している。ただ結果として、自国民を見殺しにしたのは間違いない。

 身代金を支払っていれば、フォーリー氏が斬首される必要はなかっただろうという事実が明らかになり、見方によっては“冷酷”な米政府の方針が、批判の矢面に立たされることになった。というのも、自国民が誘拐されることが多い欧州の国々は、やはり身代金を払ってでも彼らを救い出しているからだ。

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