世論は否定的? それでも「第2青函トンネル」が必要な理由:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
青森県議会議長が国土交通省に対して、非公式としつつも「第2青函トンネル」の建設を要望した。これに対して世論は否定的だが、日本全体の物流政策を考える上で、青函トンネルを新幹線と在来線の共用するには問題がある。関門トンネルと同様に、別のトンネルを作るべきではないか。
解決策はあるが、実現性に疑問
ワーキンググループは2012年7月12日に第1回が開催され、2013年3月25日の第5回で「青函共用走行問題に関する当面の方針」(参照リンク)をまとめた。議論された解決策は「高速新幹線と在来線の運行時間帯を区分」「すれ違い時に高速新幹線が減速」「貨物専用新幹線(例えば、トレイン・オン・トレイン)を導入する」「第2の青函トンネルを建設する」「上下線の間に隔壁を設置する」「鉄道貨物を船に移行する」であった。
「当面の方針」では、「時間帯区分案」で開業1年後から2年後までに1日1往復の新幹線列車高速運転を実現させる。その準備と合わせて「すれ違い時だけ新幹線を減速させるシステム」「貨物専用新幹線(トレイン・オン・トレイン)の技術的実現可能性を検討し、開発の見通しを得る」となった。中でも「時間帯区分案」は、現在の技術で最も確実な案だ。他の2つの方法は、まだ技術が確立されていない。
とはいえ、JR貨物は「時間帯区分案」には否定的だ。「時間帯区分案」の場合、最高速の新幹線列車が走る時間帯の2時間は貨物列車を運行できない。それだけではなく、最高速新幹線列車が走る時間の前に、安全確認時間帯を2時間設定する。このため、約4時間も貨物列車が運行できなくなるのだ。
この結果、下り7本、上り13本の列車が運行できなくなる。青函トンネルを通過する貨物列車の4割が運行不能になってしまう。該当する列車は大手宅配便業者の荷物、大手自動車メーカー向け部品、生鮮食料品を積む列車などだ。
国土交通省の資料によると、国内貨物輸送における鉄道のシェアは、全国的レベルでは約4パーセントとわずかだ。ところが、北海道と本州間の輸送については約40パーセントになる。これらの物流が止まるとJR貨物の収入源が減るだけではなく、物価が上がり社会に与える影響も大きくなるだろう。新幹線1往復の高速化に対して、代償が大きすぎる。
国土交通省は安全確認時間と新幹線走行の手順を見直し、貨物列車の走行不可時間帯を2時間まで縮める方針としているが、それでも貨物列車の通行止めは避けられない。
では、新幹線のスピードを諦めたらどうか。しかしこれも問題がある。巨額な投資をして新幹線を建設したのにスピードが期待できないとなれば、青函トンネルだけではなく、北海道新幹線そのものの存在意義が問われる。問われたところでもう作ってしまったのだし、作ったからには有効に使いたい。スピードを上げ、増発に対応できるダイヤにしたいところだ。
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