世論は否定的? それでも「第2青函トンネル」が必要な理由:杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)
青森県議会議長が国土交通省に対して、非公式としつつも「第2青函トンネル」の建設を要望した。これに対して世論は否定的だが、日本全体の物流政策を考える上で、青函トンネルを新幹線と在来線の共用するには問題がある。関門トンネルと同様に、別のトンネルを作るべきではないか。
第2青函トンネルはすべてを解決する
最近、トラック業界専門誌の記者さんとお話しする機会があって知見を新たにした。実は、現在のモーダルシフト(自動車や航空機による輸送を、鉄道や船舶による輸送で代替すること)の問題点は、鉄道貨物のデメリットではないという。貨物列車が足りないからトラックから移行できない。これが最も重要な問題だという。
私は今まで、鉄道貨物はトラックよりコストが大きいし、12フィートコンテナを基準とした規格は現在の輸送ニーズに合わない。だから、国による支援が必要だったり、31フィートコンテナへの移行が必要だと思っていた。しかし、荷主や輸送会社の立場では、そもそもトラック不足になれば、コストなどで選り好みする場合ではなくなるという。運ばなくてはいけない荷物があって、鉄道貨物に移行したくても、貨物列車が足りないのだ。
日本の鉄道貨物輸送は増加傾向にある。JR貨物が発表している輸送実績(参照リンク)によると、コンテナ輸送は増加傾向である。政府のモーダルシフト支援策や、企業の環境負荷軽減運動が功を奏したようだ。もちろん、JR貨物や輸送会社の営業努力もあるだろう。そして、今後はトラックドライバー不足による半強制的なモーダルシフトが起きるはずだ。鉄道貨物の重要性が高まるこの時期に、貨物列車を減便する施策はあり得ない。
もう1つ、趣味的な視点ではあるが、青函トンネルから在来線旅客列車を切り捨ててはいけない。本当に寝台特急をなくしてもいいのか。JR東日本は2017年からクルーズトレインを走らせるが(関連記事)、この列車は北海道に向かわなくてよいのか。
クルーズトレインで海外からの旅行客を獲得するために最適なルートはどこか。私は、京都・奈良と北海道を結ぶべきだと思う。ライバルはカナダ、米国、オーストラリアなどの大陸横断列車、欧州のオリエント急行である。アジアに目を向けると、韓国一周列車「ヘラン」がある。中国は「Z列車」という夜行列車がサービス向上に取り組んでいる。
日本で海外からの観光客向けにクルーズトレインを走らせるなら、海外からの観光客が最も行きたいところを走らなくてどうするのか。「ななつ星in九州」の海外観光客へのアプローチがうまくいかない理由は、京都と東京と北海道を走らないからだ。JRグループの総力を結集して日本一周列車を設定すべきだし、そのためにも青函トンネルは必要だ。
これらの問題をすべて解決する方法は「第2青函トンネル」である。そもそも本州と九州を結ぶトンネルは3本もあって、さらに橋も架かっている。一方、本州と北海道を結ぶルートは複線トンネル1本だけだ。少なすぎる。
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