日本人が抱える「英語トラウマ」の取り除き方:8言語マスター・新条正恵さんインタビュー(2)(2/3 ページ)
グローバルビジネスの世界で、日本人は「英語が苦手」なばかりに取り残されてしまっている――そう警鐘を鳴らすのは、外資系企業で長く働いてきた新条正恵さんだ。8カ国語をマスターした彼女に、日本人が抱える「英語トラウマ」の取り除き方を聞いた。
グローバル企業では今、ビジネスで使う英語を「非ネイティブの人が間違いなく理解できるレベル」にしようという動きが進んでいます。使う言葉の数を制限し、ゆったりとしたスピードで会話する。そのほうがコミュニケーションは円滑になり、企業としての生産性も上がるからです。実際に対面で会う機会が少なく、電話会議やビデオ会議で3〜10カ国の人が週に1度以上話すことが多い企業では、とくにその傾向が強いといえます。
こうした英語は、グローバルイングリッシュ=「グロービッシュ」と呼ばれます。つまり共通言語としてのビジネス英語は、ネイティブを前提としていないのです。
日本人に植え付けられている「英語トラウマ」とは?
では、日本人はなぜ英語を話すのが苦手なのでしょうか。日本人の多くは6年から10年間、学校で英語を勉強しています。これは世界で見ても決して少ないわけではありません。それだけ勉強していれば、本当は英語を話せないはずはないのです。
英語を読み書きすることはできるのに、なぜ話せないのか。耳が慣れていないために「聞けない」からだと唱える人もいますが、私はそれだけではないと思います。リスニングのあるTOEICのテストで800点、900点と高い点数を取りながら、英語が話せない人はたくさんいます。
一番の原因は、日本人の多くが「英語トラウマ」を抱えているからだと私は思います。日本人にとって英語は「科目」であり「学問」です。学問としての英語は難しい単語を暗記して、文法を正しく理解していればテストで高い点数が取れるというものです。テストは減点法ですから、時制や単語を間違えたら点数は下がります。この「間違えることはいけないこと」という恐怖心が、日本人の心の深いところまで植え付けられているのです。
だから言葉が口から出てこない。発言する前に頭の中で自分の考えた英文法が正しいかを検証してしまい、会議でそうこうしているうちにタイミングを逸してしまう――。結果、さらに話すことに恐怖を感じ、話さないから会話も上達しないのです。
しかし、これは根本が間違えています。言語は学問ではなく、コミュニケーションのための道具です。文法の正しさよりも伝えることのほうが優先されるべきで、学問としての英語とコミュニケーションツールとしての英語は全く違うものです。
まずは考えを伝えること。伝えられればコミュニケーションが円滑に楽しくなります。会話ではテンポも大事。単語や文法を間違えても、誰もあなたを減点しません。日本人にとってはこの「英語トラウマ」をなくすことが、グローバル人材になるための第一歩なのです。
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