“迷惑メール”と“遅延メール”に関する「誤解」

キャリアの迷惑メール対策はどこまで効果があるのか? そしてユーザーがメールアドレスを変更すれば,メールの遅延は減るのか? ここには大きな誤解が含まれている。

【国内記事】 2001年12月25日更新

 2001年の大きなトピックといえば,携帯電話の迷惑メール。また迷惑メールと関連して,メールの遅延も大きな問題になった。J-フォンでは未だにメールの遅延が続いており,ユーザーからは不満の声が挙がっている。

 通信キャリアもその対策に追われた1年だった。これまで電話番号でメールが送れることが,携帯電話メールの大きな利点でもあったわけだが,「メールアドレスの変更」が推奨され,NTTドコモでは既に9割がオリジナルメールアドレスに変更しているという。

 ドコモの「月400パケットまで無料化」や(6月18日の記事参照),各キャリアが行った「宛先不明メールを大量に含むメールの受信ブロック」など(11月6日の記事参照),迷惑メール関係の施策がいろいろと行われたが,実はそれらの意味合いは微妙に異なる。

「受信ブロック」でも迷惑メールは届く

 迷惑メールは,基本的にはランダムに生成された電話番号に宛てて,メールを一斉送信している。ユーザーがこれに対抗するには,メールアドレスの変更が最も効果的だ。

 実際,各キャリアとも,アドレスの変更をユーザーに勧め,さらに初期アドレスを電話番号から英数字に変更している。

 しかし,迷惑メールの送信側も高度化し,人名辞書などを用いて英数字のメールアドレスを生成して送信。さらに実際に存在するメールアドレスを“名簿化”することで精度を向上させた(11月6日の記事参照)。おかげで,せっかく電話番号以外のアドレスに変更したのに,また迷惑メールが届くようになった人も少なくないだろう。

 各キャリアは,こうした迷惑メール送信側の高度化に対抗するため,「受信メールブロック」などの新たな対策を打ち出している。

 だが,実はこの点で,ユーザーの間に1つの誤解があるようだ。

 それは,最近の「受信メールブロック」などの対策は,「迷惑メールが届く」ということに関しては,それほど大きな効果はもたらさない,ということだ。「受信メールブロック」は,基本的に名簿の精度向上を阻止するためのもので,迷惑メールの送信業者が名簿に載っているアドレスに迷惑メールを送ることをブロックするものではない。

 アドレスを変えたのに迷惑メールが届くようなら,名簿に載ってしまっていると思っていいだろう。キャリアがどんな施策を打ち出そうとも,名簿に載ってしまったユーザーへの迷惑メールは止められない。キャリアは「通信の秘密」を守る義務があり,ユーザー宛のメールが迷惑メールかどうかを判別することはできないのだ。

 電話番号以外のアドレスなのに,迷惑メールが頻繁に届くようであれば,いちばん簡単なのはやはりメールアドレスを変更することだ。

 ただし裏技もないことはない。例えば一定期間,インターネットからのメールの受信をしない設定にする。実在のメールアドレスだと思って迷惑メールを送っていた業者は,メールが届かないことを知って,名簿からそのアドレスを削除する。しばらくして,インターネットからのメールの受信を許可すれば,そのアドレスは名簿に載っていない,クリーンなアドレスになっているというわけだ。

遅延メールに対する誤解

 遅延メールのほうは,ユーザーにできることはほとんどない。

 遅延メールは基本的に,キャリアのメールサーバの負荷が高まることによって生じる。各キャリアはサーバの負荷が高まった理由について「迷惑メールの急増」を挙げている(10月5日の記事参照)。

 ただしここでいう迷惑メールは,ユーザーに届く迷惑メールではなく,キャリアのサーバに届く迷惑メールの話。ここにもう1つの誤解がある。

 極端な話,ユーザーにまったく迷惑メールが届かなくても,サーバに迷惑メールが大量に届いていれば遅延は発生する。

 ドコモによると,11月時点で正常なアドレス宛のメールは1日1.5億通。ところが迷惑メールだと推測される“実在しない宛先”へのメールは1日8億通におよぶ。メールの遅延をなくすには,この“サーバへの迷惑メール”を減らす必要がある。

 そのために行われたのが,先の「受信メールのブロック」だ。大量の宛先不明メールは,迷惑メール業者が名簿を作成するために送信していると推測されている。これにエラーを返さないようにすれば,迷惑メール送信者はこの方法で名簿を作成できなくなる。つまり,大量の宛先不明メールを送信する意味自体がなくなるのだ。すぐにサーバへの負荷が減るとまでは言い切れないが,中期的に見ればサーバの負荷を軽減させることができるだろう。

 言い換えれば,「ユーザーに届く迷惑メール」自体がメールの遅延に与える影響は,さほどのものではない。だから,ユーザーが何を行ってもメールの遅延はそう簡単にはなくならない。先日,読者からも「迷惑メールの大量受信によってメールの遅延が起きている,という図式から,ユーザーにメールアドレスの変更を勧めるというキャリアの論法は納得いかない」というメールをいただいたが,これはご指摘のとおりである。

 そんなわけで,一口に“迷惑メール”といっても,ユーザーが受信する迷惑メールと,メールの遅延を引き起こしている“迷惑メール”は,似ているようで実体は微妙に異なる。両者ともに根本的な解決は難しいが,キャリアができることをすべてやっているかというと,まだまだ不十分(11月13日の記事参照)。さらなる対策が求められている。

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[斎藤健二,ITmedia]

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