携帯が“財布”になるために携帯電話が財布代わりになるために、通信キャリア各社は取り組みを始めている。携帯とレジとの通信手段では、2次元バーコード、赤外線などが既に実用化されているが、切り札として控えているのが「非接触ICカード」だ
カメラ、PDAなどの機能を取り込んだ携帯が、次に飲み込もうとしているのは“財布”だ。各キャリアは、既に取り組みを始めている。 「財布の中でかさばっているものはカード。これが場所を取っている」と、WIRELESS JAPANのドコモブース「モバイルキャッシュカード」の説明員(7月17日の記事参照)。 携帯でコーラが買える(2001年3月の記事参照)、クレジットカード代わりに商品が買える(2001年11月の記事参照)、携帯がキャッシュカード代わりになる(7月17日の記事参照)……。いずれも、財布の代わりに携帯を持ち歩けば用が済むという世界を目指している。
カード類の機能を携帯に取り込んでいく際に、問題となるのは携帯と読み取り機との間の通信手段だ。例えば、携帯があるショップのポイントカード機能を備えたとする。プラスティックの磁気カードならば、レジで手渡せばカードリーダに通してもらえる。携帯の場合は、どうすればいいのか。 技術的な解決策はいくつか出ている。1つは、1次元/2次元バーコードを使うものだ。携帯からWebアクセスなどを行い、ディスプレイにバーコードを表示。レジのスキャナで読みとる。日本コカ・コーラがドコモなどと共に提供しているCmode(8月8日の記事参照)や、東京モーターショーの電子チケットとしても使われる(2001年10月の記事参照)など多くの実績を持っている。また、Webアクセス対応の端末ならば、古くてもほぼ機種を問わないのもメリットだ。 ただし、バーコードのダウンロードに時間がかかること、ディスプレイをスキャナに向けなくてはならず手間がかかること、専用スキャナの価格がまだこなれていないことなどの欠点もある。双方向通信が行えないため、発展性にも欠ける。 次なる候補は、赤外線だ。携帯電話からレジなどの受光部に向けて赤外線を照射して認証を行う。ドコモの504iシリーズでは全機種が赤外線通信に対応しているほか、iアプリ(Java)から赤外線を操作できる(5月21日の記事参照)。例えば、ポイントカードとしてこれを使った場合、携帯電話上で残ポイントが確認できるなど双方向性を生かすことが可能だ。iアプリのセキュリティを生かし、ユーザー別にiアプリ側で個人情報を保存することで、より強固なセキュリティも実現できる。 先のモバイルキャッシュカードをはじめ、レンタルビデオ店のゲオでは会員証代わりに携帯を使えるなど(5月23日の記事参照)、赤外線の利用は既に始まっている。“向きを合わせないと使えない”という高指向性によるセキュリティの高さや、「ソフトとハードを合わせても何百円」(赤外線に詳しいリンク・エボリューションの北角権太郎社長)というコストの低さも赤外線のメリット。504iでは未対応だが、金融情報のやりとり用に手順を定めた「IrFM」という規格が定まっている。赤外線を使って携帯をクレジットカード代わりにする実験を行うKDDIでは、「セキュアな通信方式を開発したことが赤外線採用の理由」としている(4月18日の記事参照)。
しかし、赤外線にも欠点がないわけではない。1つは指向性の高さゆえに、通信が失敗する可能性が高いということ。実際、WIRELESS JAPANのドコモブースでも、説明員が失敗していたほどだ。 また赤外線とJavaを組み合わせるやり方はメリットがある反面、Javaの起動が面倒という問題もある。早い話が、レジや銀行ATMに行く前に、Javaアプリケーションを起動しておかなくてはならないのだ。携帯をキャッシュカード代わりに使うデモを見た人たちの感想も、多くが「これなら携帯を使うよりもキャッシュカードを入れたほうが楽」というものだった。 ドコモによると、「仕様上、赤外線を端末が受信することで、指定のiアプリを自動起動させることも可能」(5月21日の記事参照)だというが、現在の端末は消費電力などの問題から赤外線の常時待受に対応しておらず、実現できていない。 そこで、“携帯財布化”の切り札として挙がってくるのが非接触ICカードだ。電波によってICカードにアクセスする技術で、NTTのICカード公衆電話やJR東日本の「Suica」、ソニーグループやNTTドコモが出資するビットワレットの「Edy」(2000年12月の記事参照)などに使われている。指向性のない微弱な電波で動作することに加え、高いセキュリティを持つことが特徴。リーダ/ライタ(受信機)からの微弱な電波を捕らえて動作するため、バッテリーも必要ない。
また通信には暗号化を利用するほか、ICチップそのものが回路的に破壊されるような偽造・変造・改竄などが難しくなっている(耐タンパ性)。 ICチップ自体は、第3世代携帯電話のUSIMカード(FOMAの場合、FOMAカードと呼ぶ)に使われており、将来的にはJavaと組み合わせて使うことも想定されている(2000年12月の記事参照)。ドコモとソニーは、非接触ICカードとパケット通信を用いたモバイルコマースの実験も行っており(2001年6月の記事参照)、JR東日本が、SuicaのICチップを携帯に搭載するため、通信キャリア3社と交渉を始めたという報道もある。携帯+非接触ICカードというソリューションも遠い話ではなさそうだ。 なお、候補として名前が挙がりそうなBluetoothは、金融などに使えるセキュリティの高いプロファイルが未策定なのと、認証に数秒かかること、そして指向性がなく電波が飛びすぎることなどから、携帯を“財布”にするための通信手段としては適さないと見る専門家が多い。 関連記事 パケット通信と非接触ICカードでモバイルコマース──ドコモ、ソニーなど3社が実験 携帯を財布にする──KDDIなど決済連動型モバイルコマースを2002年春 携帯がクレジットカード代わりに──KDDIが赤外線を利用して実験 携帯電話とICカードで情報ステーションを目指すマクドナルド ドコモ、504iを銀行キャッシュカード代わりに使うデモ 「そろそろ携帯電話にもリセットボタンを」〜KDDI小野寺社長 今度こそ本命? ソニーなど11社が電子マネー事業を共同で推進 「通信のあるところに必ずセキュリティ」──オープンループ モードでジュースが買える?──コカ・コーラ、ドコモ、伊藤忠商事が実証実験 504i赤外線ソリューションの期待と課題 関連リンク ソニー FeliCa [斎藤健二, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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