「今後は日本向けの機能も採用していく」――Samsung電子の端末戦略:GALAXY Sの先にあるもの
10月28日にハイスペックなAndroid端末「GALAXY S」を日本で発売し、11月下旬以降には「GALAXY Tab」も投入するなど、Samsung電子は日本市場にも積極的に進出している。同社は今後どのような端末を開発していくのだろうか。
世界で売れているスマートフォン「GALAXY S」を日本でも発売したSamsung電子。11月以降にはタブレット端末「GALAXY Tab」の発売も控えており、日本でも存在感を高めつつある。同社は今後、世界と日本でどのような端末を開発していくのだろうか。同社日本法人、サムスンテレコムジャパンの端末営業部 営業部長のオウ・チャンミン氏にSamsung電子の現状と戦略を聞いた。
20%以上のマーケットシェアを獲得
Samsung電子の端末出荷台数は年々伸びており、2009年度は2億2710万台に達した。マーケットシェアも2010年第2四半期には20.5%となり、Nokiaに次いで2位、3位以下との差を広めつつある。
シェア拡大のためには多数の製品を市場に投入することはもちろんだが、「Samsung Unpack」という端末発表イベントを世界各地で定期的に開いており、新製品をより多くのメディアや消費者に知ってもらうためのマーケティングにも力を入れている。消費者の集まる地域に出向いてデモを行う「Samsung Mobile Live」というイベントも好評を博している。
そのほかにもオリンピックの公式スポンサー(1997年に契約、最初のスポンサーシップは1998年の冬季長野オリンピックから)や英国のサッカーチームであるChelsea Football Clubのスポンサーを行うなど、ブランドの認知度を広める活動も地道に続けている。さらに、有名ブランドとのコラボレーション製品としてARMANIブランドの携帯電話や、エコロジーを考えたソーラーパネル搭載端末やトウモロコシを主成分にした生分解プラスチック素材を用いた製品を投入するなど、同社のイメージアップにつながる製品開発も進めている。
このように出荷台数が伸びたことやSamsung電子の認知度が広まった結果、同社のブランド力も大きく高まっている。大手調査会社の調べによるブランド価値順位は2002年に34位であったが、2009年には19位にまで上昇している。ちなみに同年のAppleは20位。
スマートフォンに注力、OSはAndroidを中核に
Samsung電子は2010年のビジョンとして「Smartphone for Every-lifestyle」を掲げている。これまでのフィーチャーフォン中心の製品ラインアップから、スマートフォンにフォーカスしたものに変えていく。スーパー有機ELや1GHzの高速プロセッサなどの最新技術を採用したのも、単純に技術の向上だけを考えているのではない。「ディスプレイの薄型化やマルチメディア機能の向上を進めることで、使い勝手のよい製品を開発できると」オウ氏は説明する。
豊富な製品ラインアップを誇るSamsung電子は、スマートフォンも複数のOSを採用している。同社は特定のOSありきではなく、各製品に最適なOSを搭載することを重視しているが、今後はAndroid OS搭載のスマートフォンに力を入れていく。すでに米国ではAndroid端末がiPhoneの販売台数を超えているなど、Androidはこれからスマートフォン市場でメジャーなOSになることが確実視されている。Samsung電子としてもスマートフォン分野でのシェアを引き上げるためには、Android OSへの注力は必須でもあるわけだ。
さらに既存のOSだけではなく、自社開発した「Bada」にも力を入れていく。Bada OSは端末メーカーだからこそ分かるユーザーニーズを取り入れており、オープンソースで自由にアプリケーションを開発できる環境も整えている。オウ氏によると、発売中のBada端末「Samsung Wave」は欧州でも高い評価を受けているとのことだ。
また、同社はSamsung端末向けの独自のアプリケーションストア「Samsung Apps」も提供しているが、これは端末メーカーである同社のノウハウを元に、よりユーザーの嗜好に合ったアプリを配信することを狙ったもの。Samsung Appsではより大容量のリッチなアプリや端末のファームアップデートを配信することで差別化を図り、Androidマーケットと共存していく構えだ。
「Galaxy Tab」ではWebや電子書籍の利用を広める
Samsung電子はGALAXY Sに続き、タブレット型のAndroidデバイスGalaxy Tabも日本を含む世界で今秋に投入する。Galaxy Tabは7インチディスプレイを搭載した若干小ぶりなタブレット端末であり、大きさはiPadの約半分。スーツの内ポケットにも入れようと思えば入ってしまうサイズだ。携帯性を考慮しつつもWebの見やすさも重視しており、スマートフォンとは十分差別化できる製品になっている。通話機能を搭載しているのも特徴の1つだ。
Galaxy Tabは電子書籍の利用に適したサイズでもある。オウ氏は「タブレット型端末の普及が広がれば、今後は電子書籍市場も急速に拡大していく」と考えている。特に毎週、毎月定期的に雑誌を買っているようなユーザーは、電子書籍版の雑誌が手軽に買えるようになれば、自然とそちらに流れていくだろう。そのためにも使いやすいサイズのタブレット端末を投入する意義は大きく、Galaxy Tabがタブレット端末市場をけん引する存在になることが期待される。
今後は日本向けの機能も採用していく
日本では10月28日に発売されたGALAXY Sは、すでに世界各国で販売されており、2010年夏時点では世界90カ国、140以上の通信事業者から販売されている。米国では、4社の通信事業者がGALAXY Sを同時に発売しているが、ここまでのマルチキャリア化は同国では初めてのこと。
日本市場では最近になってスマートフォンの利用者が着々と増えているが、Samsungブランドは日本ではまだ認知度があまり高くないのも事実。「GALAXY Sがどこまで日本の消費者に認めてもらえるかが売れ行きを大きく左右する要素になる」とオウ氏はみている。
今後の日本市場向けの製品については、「日本向けの機能を採用していくことも検討している」という。ただしスマートフォンは早いタイミングで最新スペックの製品を市場に投入する必要もあるため、日本向けのカスタマイズについては「開発スピードと照らし合わせながら取り入れる必要がある」とオウ氏は説明する。
「Samsung電子の目標は世界シェア1位ではなく、スマートライフ、生活に役立つ道具を提供すること。日本の消費者の方々に満足してもらえる製品の開発を今後も開発していくので、GALAXY Sや将来の新製品にはぜひ期待してほしい」(オウ氏)。
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