“Note”がヒット、中国勢も台頭――スマートフォンの新しい形が見えた2012年:ITmediaスタッフが選ぶ、2012年の“注目ケータイ&トピック”(ライター山根編)
iPhone一人勝ちの構図に大きな変化が訪れたのが今年の世界の携帯電話市場だろう。Nokiaの勢いが失速した中でSamsungが急成長、そして中国勢の力が水面下で徐々に強固になった1年だった。
2012年は各社の新製品がスマートフォンへ完全にシフトし、海外の量販店でも携帯電話売り場の目立った位置にはスマートフォンがずらりと置かれるほどになっている。また新しいメーカーの参入も目立ち、中国TCLが欧州向けの「Alcatel One Touch」の好調によってシェア10位内に顔を出すなど、新興の躍進も目立った。各社からは特徴的な製品も多数登場したが、その中から筆者が最も目立ったと感じた製品を3機種紹介しよう。
5インチ市場を確固たるものとした「GALAXY Note II」
2011年秋に発売された5インチサイズのスマートフォン、GALAXY Noteは「大きすぎる」との事前の予想を裏切って世界中で売れまくった。その1年後、今年9月に発表された後継モデルの「GALAXY Note II」は。さらなる大型画面化と本体のスリム化という相反する条件を両立。さらには使いやすくなった「S Pen」や、デュアルウィンドウによるマルチタスク機能など、性能も大きく高まった。初代Noteは発売から10カ月で1000万台を販売したが、Note IIは発売2カ月で500万台と売れ行きは絶好調だ。
「携帯電話としては大きい」とも言われるGALAXY Note IIだが、スマートフォンで利用する機能は音声通話よりもLINEやFacebook、Twitterなどソーシャルサービスのほうが上回っているのではないだろうか。特にアジアでは音声通話とSMSに頼っていたコミュニケーションが、ここに来て一気にソーシャルサービスに置き換わりつつある。タイムラインを見たりアップロードする写真を選んだりするのには画面が大きく、なおかつ持ちやすいサイズの端末が優位であり、その中でGALAXY Note IIは最適の製品として人気が高まっているのだ。
筆者の居住する香港でも、今では「右も左もGALAXY Note II」と言えるほど売れまくっている。単純なスマートフォンの大画面化ではなく、「5インチノート」という新たな市場を作り上げ、そしてその代表製品とも言えるGALAXY Note IIは、2012年最も話題になった製品だと筆者は感じている。後を追いかけようと各社が相次いで5インチ台の製品を投入している状況も、まさにそれの裏付けではないだろうか?
もはや安かろう悪かろうではない「Xiaomi M2」
世界最大の携帯電話市場、中国でも今年はスマートフォンが売れまくった。携帯電話出荷台数の過半数がスマートフォンとなり、毎月のように新しいメーカーが新規参入し、毎週どこかで新製品の発表がアナウンスされているほどである。闇製造携帯電話である山寨機ですらフィーチャーフォンが売れない時代となり、闇メーカーによる怪しいスマートフォンが続々と市場に出てきている状況になっている。
その中にあって2011年冬に市場参入したXiami(小米)は、中国スマートフォン業界の台風の目になっている。まったく無名の同社が最初に発売したスマートフォン「Xiaomi M1」は、オンラインのみの販売にも関わらず、販売開始後わずか2日間で40万台を売り上げた。ユーザーが開発に加わり製品のフィードバックを行い、販売時点で最高のスペックを搭載する同社のスマートフォンは、それまで大手メーカーのハイエンド製品に目を向けていたアーリーアダプタ層を一気に惹きつけたのだ。
2012年にはChina Unicom(中国聯通)、China Telecom(中国電信)の2台通信事業者向けにも製品を供給するなど破竹の勢いで成長を続けている。それにあわせてXiamiのブランドの認知度も急激に上がっており、例えば山寨機メーカーの中にはXiamiのコピー品を販売するところも出ているくらいだ。Androidのマスコット、通称「ドロイド君」のストラップなども、同社オリジナルで販売した製品が、今では中国中でコピーされて売られているほどである。
そして2012年秋に発売された後継モデルの「Xiaomi M2」は、初代同様にインターネットでの販売が行われたが、10月末の第1回販売で用意された5万台はなんと2分51秒で完売してしまった。これは仮に100万台が用意されていれたとしたら57分で売れてしまう勢いだ。その後の11月末の第2回の15万台は、さらに人気が高まり1分43秒で完売。中国のオンライン通販サイト「Taobao」ではプレミア価格が付くほどになっている。ちなみに筆者はまだ実物を見ることすらできていない。
Xiaomi M2のスペックは4.3インチ(720×1280ピクセル)のIPS液晶、Snapdragon S4 1.5GHzクアッドコアCPU、Bluetooth 4.0、8メガピクセルカメラ、W-CDMA/GSM、Android OS 4.1など。大手メーカーの上位モデルに匹敵するスペックながらも価格は16Gバイト版で2319人民元、約3万1000円だ。これは年末に発売された「iPhone 5」の半額以下でもある。恐らくこれだけのスペックでこの価格の実現は、他の中国メーカーでも無理だろう。無名メーカーから一気に大手メーカーと肩を並べる存在になり、大手メーカーの上位製品をも脅かす存在になった「Xiaomi M2」は今年中国で最も目立った製品だろう。
世界最薄スマートフォン「Huawei Ascend P1 S」
長年海外市場を見ている筆者にとって、シェアトップの座に君臨していたNokiaの製品を今年の注目3製品の中に1つ入れたいところだが、残念ながら今年同社が発表したフラッグシップモデル「Lumia 920」は4位か5位をつけるのが精一杯というのが本心だ。なぜなら、Nokiaよりも野心的な新製品を次々に投入したメーカーがあるからである。
そのメーカーはHuaweiだ。中でも2012年初頭に発表したAscendシリーズはスマートフォンの新しいブランドであり、自社開発のクアッドコアCPU搭載モデルもラインアップするなど昨年までの「中低位モデルメーカー」のイメージを一新させる製品が出そろった。その中から最も注目したいのが世界最薄、6.68ミリ厚の「Ascend P1 S」だ。
Ascend P1 SはデュアルコアCPUや4.3インチの有機ELディスプレイを搭載するなどスペックも当時としては十分なものを有しているが、やはり大手メーカーや日本メーカーを抜き去って「世界最薄」の製品を世に送り出した開発力には脱帽したい。ボディも光沢感を持った上品な素材を利用しており、Huaweiがスマートフォンメーカーとして上位メーカーと戦えるだけの品質に仕上がっている。Ascend P1 Sの登場以降、もはやHuaweiを格下メーカーと侮ることはできなくなったはずだ。
なお、Huaweiの日本向けモデルとしてはイー・アクセスが「GS03」を、NTTドコモが「Ascend HW-01E」を販売している。日本での売れ行きはブランド力が低いこともあってまだまだ期待するほどではないかもしれないが、この2機種を見るだけでも将来投入されるであろう今後の新機種には期待が持てるのではないだろうか?
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