目指したのは「原音に忠実な音」――「Xperia Z2」で進化したオーディオの秘密:開発陣に聞く「Xperia Z2 SO-03F」(3)
「オーディオの進化」も、Xperia Z2で特筆すべきポイントだ。デジタルノイズキャンセリング、フロントステレオスピーカー、そして音質のチューニングなどについて聞いた。
ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia Z2 SO-03F」の開発の舞台裏を紹介するインタビューの第3回では、オーディオ面での進化やこだわったところを、オーディオテクノロジー担当の田原氏に語ってもらった。「デジタルノイズキャンセリング」と「ステレオスピーカー」、そして「ハイレゾ」対応が大きなトピックだが、音質はどう変わったのか? 端末単体でのハイレゾ対応は難しいのか? などの疑問点も聞いた。
互換性の検証に苦労した「デジタルノイズキャンセリング」
オーディオでは、周囲の騒音を最大99%低減できる「デジタルノイズキャンセリング(以下、DNC)」機能に対応したことがトピックの1つだ。田原氏は「以前から社内で検討していましたが、ようやく技術的に行けそうだという検証ができて、そのタイミングが今回でした」と搭載の経緯を話す。
DNCの回路をXperiaに搭載したことで、Walkman向けのDNC対応ヘッドセットをそのまま使えるようになる。ほかに、ソニーモバイルが発売している純正のヘッドセット「MDR-NC31EM」(5500円、税別)を装着したときにもDNCが有効になる。
DNCに対応したことで、イヤフォンジャックの入力プラグが従来の3極/4極から5極に増えた。田原氏によると、3極/4極のヘッドセットを使えるための互換性の検証が苦労したという。
ひずみのない低域を出せるよう苦心したステレオスピーカー
内蔵スピーカーも強化し、前面にステレオスピーカーを搭載した。田原氏は「Xperiaでひずみのないクリアな音楽を楽しんでほしいですね。きれいな液晶を搭載しているので、動画を楽しむときに音もよくないと面白くないですから」と狙いを話す。特に低域をいかに出すかに苦心したそうだ。
あわせて、立体的な音を仮想的に再現する「S-Forceフロントサラウンド」にも対応した。田原氏は「普通にステレオ再生していると、サラウンド感はなかなか得られません。VAIOやBRAVIAなど、ソニーのほかのデバイスに搭載している技術をスマートフォンにも適用しました」と話す。
スピーカーはディスプレイ面の上下にあるが、スピーカーのサイズは上下で異なり、上が8×15ミリ、下が11×15ミリとなっている。なお「聴覚保護の観点から」(田原氏)、着信音のみ下側のスピーカーから鳴る。
“レコーディングスタジオで聴くような音質”にチューニング
カタログなどではあまり説明されていないが、ClearAudio+をオンにして、DNC対応ヘッドセットを装着したときの音質が、Z1から向上しているという。
Xperia Z2ではSME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)と協業して、L.A.リード氏に音質を確認してもらった。L.A.リード氏は、エピック・レコード会長でCEO、そしてマイケル・ジャクソンのアルバム「XSCAPE」のプロデューサーを務める人物。それほどの人物に音質を認めてもらうハードルの高さは想像に難くない。
「SMEで使っているニューヨークのスタジオを訪れてスタジオの特性を測定し、レコーディングスタジオで聴くような音質を再現できるようチューニングしました」と田原氏は話す。具体的には「原音に忠実に再生すること」で、CDを上回る高音質なハイレゾ音源で目指す方向性と同じだ。
最終的にチューニングは成功し、“L.A.リード氏が認めた音”が完成した。この音を体験するには、ClearAudio+をオンにしてDNC対応ヘッドセットを装着すればよく、ノイズキャンセリング機能はオフでも構わない。ほかのヘッドセットでも音質は向上するそうだが、「L.A.リード氏が認めた音とは違います」と田原氏。
Xperia Z2でリッチな音楽体験をするには、DNC対応ヘッドセットは必須というわけだ。残念ながら、Xperia Z2にはDNC対応ヘッドセットは付属していないが、ソニーモバイル純正のヘッドセットは5500円で、「他社の一般的なノイズキャンセリング用ヘッドフォンよりは安い」(田原氏)。もちろん、Walkmanで対応ヘッドセットを使っている人は、買い足す必要はない。
ハイレゾ音源がUSB出力のみとなった理由
Xperia Z2ではハイレゾ音源の再生に対応したが、Xperia単体の再生はできず、USB DACアンプやポータブルヘッドフォンアップを使ってスピーカーやヘッドフォンに出力する必要がある。他社のスマートフォンでは端末単体でハイレゾ対応をうたっているものもあるが、「技術的な検証を重ねて品質に問題がないことが確認できないと、搭載は難しい。検証が十分にできていないので、今回はUSB対応にしました」と田原氏は話す。
「ソニーは、2013年のIFA以降、ポータブルアンプやスピーカーなどのハイレゾ対応製品を発売していて、各製品にはハイレゾ(Hi-Res AUDIO)のロゴを付けています。ソニーがハイレゾをうたうには、一定の音質基準をクリアする必要があり、社内で評価しています」と田原氏は話す。ソニーのDNAを注入した製品を出すのに、その技術を中途半端な形では搭載できないというわけだ。
ハイレゾ搭載に必要な「一定の音質基準」の詳細は明かしてくれなかったが、Xperia Z2にハイレゾを搭載するにあたって、ソニー側にUSB DACアンプやスピーカーなどの音質を評価してもらったという。Xperiaの音質基準はWalkmanと全く同じではないそうだが、「我々が目指しているのはWalkmanと同等の品質です」と田原氏は言い切る。「まだ時間はかかりますし、検証を続けているところです。もちろん今回がゴールではありません」と同氏は話す。Xperia自体にハイレゾロゴがつけられる日は、そう遠くないのかもしれない。
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