“フレームレス”の驚きを日本のハイエンドユーザーにも――「AQUOS CRYSTAL X」開発秘話:開発陣に聞く「AQUOS CRYSTAL X」(2/2 ページ)
まるでフレームがないかのような外観で大きなインパクトを与えた「AQUOS CRYSTAL」のハイエンドバージョン「AQUOS CRYSTAL X」が、14年12月から販売されている。AQUOS CRYSTALとの違いや、開発で苦労したところなどを担当者に聞いた。
内部構造の影響を考えて「フルセグ」は見送り
機能面ではフルセグに対応していないのも惜しい。せっかくフルHDディスプレイに進化したのだから、高精細なフルセグを楽しみたいところだが……。「ワンセグは災害時のニュースや、オリンピック、ワールドカップの結果を知りたいといったニーズがあるので搭載しました。フルセグについてはいろいろ(議論が)ありましたが、このデザインを実現するための内部構造の見直しや、ソフトバンクさんとの価格も含めたお話の中で、今回は見送りました」と楠田氏は説明する。
シャープはワンセグ/フルセグに対応したチューナーを開発しており、これを載せれば済むのでは……とも思えるが、そう単純な話ではなかった。「アンテナ特性を得るために、単純にチューナーを載せ替えるだけで済むわけではありません。フルセグ用のアンテナ感度を取るために、特定の場所で距離を取らないといけない、といった具合に内部構造に影響を及ぼす問題が出てきます」(楠田氏)
防水に対応していないのも、ほかのAQUOSスマートフォンと比べるとマイナスポイントだが、「未来永劫まったくできないというわけではありません。技術を含めて、開発にチャレンジしているところです」(楠田氏)とのことだ。
AQUOS CRYSTALと同じく、AQUOS CRYSTAL Xにはharman/kardon製のスピーカーが同梱される。スピーカーを付けず端末のみを購入する選択肢がないのはどうかと思うが、販売するのはソフトバンクモバイルなので、メーカーの一存では決められない。それでも「AQUOS CRYSTALでharmanさんのスピーカーの評判が良かったようで、それを動機で購入した人がいらっしゃいました」(楠田氏)とのことで、スピーカーが端末の購入を後押しすることも多いようだ。
搭載位置や構造を見直して「グリップセンサー」を搭載
IGZO、フルセグ、防水……これらの搭載を見送ったことを考えても、フレームレス構造がいかにハードルの高いものであるかがうかがえる。
そういう意味では、スマートフォンから語りかけてくれる「エモパー」も、搭載するにはハードルの高い機能だった。エモパーは、端末を手にしたときにさり気なく情報を表示してくれるのが特徴だが、これを実現するには(端末を握るだけで画面が点灯する)グリップセンサーを搭載する必要がある。「エモパーとグリップセンサーは切っても切り離せない、結びつきの強いもの」(楠田氏)というわけだ。
このグリップセンサーを、フレームレス構造に取り入れることが困難を極めた。「グリップセンサーは側面に載せていますが、AQUOS CRYSTAL Xは額縁がないので置けません。どうやってグリップセンサーを載せるのかで悩みました。エモパーは諦めるべきでは? という話が出たほどです」と楠田氏は振り返る。しかしエモパーはシャープとしても推したい機能。諦めるわけにはいかず、AQUOS CRYSTAL Xでは従来モデルからセンサーの構造を変えることで、グリップセンサーを実現した。
「完全な側面ではなくて、背面付近にセンサーを置いています。普通にそれをやると、金属と干渉してしまい、触っていないのに反応してしまうという課題がありましたが、金属を検知する仕組みを入れることで、何とかできました」(楠田氏)
エモパーは多ジャンルのニュースや天気予報、近くのイベントなどを教えてくれるが、AQUOS CRYSTAL X独自の話題として、Yahoo! JAPANの「映画情報」と検索の「急上昇ワード」も追加した。これはヤフーとの連携で実現している。急上昇ワードは芸能人の名前などを読み間違えないよう、テキストのみの表示としているが、映画情報は読み仮名のデータも提供してもらっているので、読み上げが可能になっている。
エモパーが話しかけてくるときの“見せ方”にもこだわった。画面を点灯させると、ウェルカムスクリーンには必ずニュースや天気予報などが表示されるので、「うざったく思われないよう、文字のレイアウトやサイズは試行錯誤してきました」と中田氏は振り返る。自宅(と認識したところ)でスマホを置くか、場所を問わずスマホを振ると、音声で話しかけてくれる。その際、画面に波の模様が走るが、この表現方法もさまざまなパターンを考えたそうだ。「端末の中にマスコットキャラが住んでいるのではなく、端末自体がパートナーであることを表現しました。エモパーは声で語りかけるので、普通に受け入れられたのが“波”でした」(中田氏)
フレームレス構造を楽しめる機能も用意
画面上部の端から端までなぞると、フル画面のスクリーンショットが撮れる「Clip Now」や、(AQUOS CRYSTALやAQUOS CRYSTAL Xなど)2台の端末をBluetoothでペアリングして、1枚の写真を2画面で表示をする「Swipe Pair」など、フレームレス構造を生かした機能も搭載した。
Clip NowはAQUOS CRYSTALでもおなじみの機能だが、AQUOS CRYSTAL Xでは、なぞってビュワーの起動も可能になった。例えば左から右へなぞるとスクリーンショット、右から左へなぞるとビュワーの起動ができるようになる(逆も可能)。
Swipe Pairは、写真をフックに新しいコミュニケーションをしてもらうことを狙った機能だ。AQUOS CRYSTAL Xはプリセットしているが、AQUOS CRYSTALもGoogle Playからアプリを入手することで利用できる。対応機種は拡大していく予定だ。
ここ最近のシャープは、新生代ケータイ「AQUOS K SHF31」を発表して話題を集めているが、スマートフォンでは、AQUOS CRYSTAL Xが最先端の技術を注ぎ込んでいると考えていいだろう。フレームレス構造のインパクトは、実際に体験してみないと分からない。ぜひ手にとって、その驚きを体感してほしい。そしてIGZO、防水、フルセグにも対応した“真の全部入りCRYSTAL”の登場にも期待したい。
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