HuaweiとXiaomiのバトル、新興勢力の台頭 2015年中国スマホ市場を総括する:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
右肩上がりだった中国スマホ市場だが2015年は出荷台数が減少に転じるなど、成長鈍化が見られた。それでも買い替え需要は依然高く、新旧勢力がさまざまな製品を投入してきた。
この2社に対して、老舗メーカーのLenovoとCoolpadは伸び悩んでいる。2014年以前はこの2社が中国メーカーの中ではトップであり、首位Samsungの後を常においかけていた。しかし2015年はヒットモデルが低価格品に集まり、ブランド力を高めるためのハイエンドモデルの売れ行きは今一つだった。
Lenovoはボディカラーをイエローにし、音楽再生機能を強化しつつ1000元を切る低価格スマートフォン「楽檬(レモン)」シリーズが大ヒット。毎回の予約販売は全て完売するほどの売れ行きで、Lenovoの2015年の代表作となった。ところが他の製品が低迷し足を引っ張る。低価格モデルはこれといった特徴がみられず、カメラやデザインを強化した上位モデル「VIBE」シリーズはブランド浸透がうまくいかなかった。そのため全体として数は出たものの、メーカーの動きとしての印象は低い。
またCoolpadはセキュリティ企業の360 Securityと別ブランド「Qiku(奇酷)」を立ち上げ、低価格モデル「大神」シリーズを移管。Coolpadは高級モデルや高セキュリティ対策モデル専業として2つのブランドに製品を振り分けた。だが低価格モデルに弱くなったCoolpadは製品全体に魅力が無くなり、大神シリーズは他社との低価格品競争に巻き込まれ数を伸ばせなかった。Huaweiの2ブランド戦略をまねたのかもしれないが、Coolpadのこの展開は裏目に出てしまった格好だ。
これら4社は中国国内で2番手グループを形成するも、勢いを感じられるOPPOとVivoに対し、LenovoとCoolpadは製品ラインアップ再編やブランド再構築などスマートフォン事業全体の見直しが必要かもしれない。Lenovoは米Motorolaを傘下に収めたとはいえ、Lenovoブランドのスマートフォンの売り上げアップがブランド力維持には欠かせないはずだ。2016年はどのような立て直しが見られるのか、期待したいところである。
新興勢力の存在感が高まる
大手メーカーの仲間入りを果たしたXiaomiに変わり、新興勢力が勢いを増した2015年でもあった。中でもいきなり市場に参入し、ハイスペックな製品が大きな話題となったLeTV(楽視)はスマートフォンの販売方法にも新たなスタイルを取り入れた。LeTVはハードウェアメーカーでは無く、本業は有料のストリーミング動画配信企業だ。
同社のコンテンツはスマートフォンやPCでも視聴できる。だがLeTVは他の有料コンテンツ配信企業とは異なり、2012年には自社ブランドのテレビを発売、その後テレビに接続するセットトップボックスも販売を始めている。つまり自社コンテンツを手軽に視聴できるハードの販売も行っているのだ。
そして2015年にはLeTVブランドのスマートフォンを3機種同時に発表した。最上位モデル「LeMAX」は6.33型WQHDディスプレイに4GBのメモリを採用する超ハイエンドモデルで、スマートフォン市場で後発の無名ともいえる企業が、突如大手メーカーに並ぶ句スペックな製品を投入してきたのだ。またエントリーモデルも含め3モデルともUSB Type-Cコネクタを採用するなど時代の一歩先を見越した設計になっている。
しかもLeTVのスマートフォンは、ストリーミング放送の契約期間に応じて本体価格が割引になる。これは同社のTVを買っても同様で、つまり有料動画サービスに加入するとハードウェアの割引が受けられるというわけだ。その後進出した香港では逆にスマートフォンを買うと有料ストリーミング放送の契約が無料となり、「コンテンツ+ハード」という新たな販売モデルを生み出した。コンテンツは無料が当たり前、と考える消費者が多い中国でLeTVのビジネスモデルは順調な滑り出しを見せており、コンテンツのみならずスマートフォンの販売方法に新たな流れを生み出すかもしれない。
LeTVがコンテンツ側からハードウェアに参入したのに対し、Xiaomiのような少数精鋭のスマートフォンで市場での存在感を高めている新興メーカーも目立った。それがOnePlusとSmartisanだ。OnePlusは2000元前後のやや性能が高いミドルレンジモデル「OnePlus 2」を発売。上品なパッケージデザインを採用し、木目調の本体に砂地仕上げのバッテリーカバーを組み合わせるなどm見た目にもこだわった製品だ。秋には価格を下げた「OnePlus X」も投入した。
Smartisanは2015年9月に7色のバッテリーカバーをそろえたカジュアルなスマートフォン「JianGuo(木の実)」を発表。同時に日本参入も発表した。同社は2014年5月に3000元を超えるハイスペックスマートフォン「T1」を発表。このJianGuoは899元と価格を抑えた若年層向けの製品だ。12月29日にはT1の後継モデル「T2」も発表する。
OnePlusとSmartisanはスペックだけではなく本体の質感にもこだわった製品を出しており、「次は機能だけではなく見た目も」と考えるスマートフォン買い替え層に受けている。またOnePlusは既にオンライン販売で世界各国へ進出しており、Smartisanも日本へ製品を投入予定とグローバル展開も早いうちから視野に入れている。もしかすると先進国ではXiaomiよりも先に、この2社の製品が販売されるようになるかもしれない。
2015年の中国市場は、新ブランド「Axon」で新たなユーザー開拓を図るZTE、「Alcatel OneTouch」など着々とラインアップを強化するTCL、その一方では安売り端末で一世を風靡したTianyuが子ブランドを撤退させるなど大きな動きもあった。次の年末に笑っているのは果たしてどのメーカーなのか、中国市場の動きは2016年も激しいものになりそうだ。
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