アップルがアプリ開発者への報酬料率を1.5:8.5に大幅改訂――グーグルも即座に追随し、アプリ経済圏拡大に躍起:石川温のスマホ業界新聞
年に1回開催されるAppleの世界開発者会議(WWDC)。その直前に、Appleはアプリの報酬比率を変更を発表した。Googleも含めて、アプリの流通環境のてこ入れが進んでいる。
来週13日より、アップルの世界開発者会議(WWDC)が開幕する。その直前、アップルは、アプリ開発者向けの報酬比率を見直し、これまでアップル3:開発者7からアップル1.5:開発者8.5にすると発表。さらに、一部サービスにしか認められていなかった、サブスクリプションモデルも拡大するとした。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年6月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
アップルの動きを追う形で、グーグルも報酬比率の見直しを発表している。
この動きを受けて「さすがアップル」と相変わらず持ち上げる人がいるが、当然の流れと言えるだろう。むしろ、アプリの流通に関して、先に改善を図ってきたのはグーグルのほうといえる。
グーグルは、5月中旬に開催した開発者向け会議「Google I/O 2016」にて、Chrome BookへのAndroidアプリ対応、ロボット向けへのアプリプラットフォームへの拡大などを発表している。
特にGoogle Playにアクセスしにいかなくても、ウェブ上でアプリの一部を取得し、その機能を使える「Instant Apps」を始めようとしている。その場限りでお試し的にアプリを使ってもらい、その後、気に入れば、すべてをダウンロードしてもらい、継続的に使ってもらえばいい。当然、Instant Appsの使用を前提としたスマホ向けウェブページというのも出てくるだろう。
初代iPhone登場から9年が経過し、その後登場したアプリ市場も踊り場を迎えている感がある。スマホが普及した頃は「おもしろアプリはないか」と一般メディアも盛り上がりを見せていたが、最近では、ほとんどのユーザーにとって、使うアプリは固定化しており、新しいアプリを入れても、すぐに使わなくなる傾向も強い。継続的に使われるアプリといえば、SNSやメディア系、ゲーム系が中心なのではないだろうか。
かつてに比べると、新しいアプリが登場し、一気にユーザーを獲得するというモノは少なくなってきているように思える。
また、最近では「bot」の登場により、LINEアプリさえあれば、専用アプリがなくても、ピザの注文を頼めたり、宅配便の再配達をお願いできるようになりつつある。今後、botの存在感はますます高まるだけに「アプリをわざわざ使わなくていい環境」はさらに広がるものと予想される。
スマホの魅力を高める上で、アプリの存在は重要だが、そのアプリが面白くなくなるのは、この業界にとって危機的状態と言える。
アップルもグーグルも、アプリ市場を活性化させ、さらに盛り上げようと、配布できるデバイスを増やしたり、報酬比率を変えると言ったテコ入れをしてきているのだろう。
とはいえ、いまどき「アプリで一攫千金」といったような夢が見られるほど現実は甘くないだけに、既存の開発者は喜ぶだろうが、今回の施策で、アプリ開発者がどれだけ増えるかは不透明といえそうだ。
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