これまでのWindows 10 Mobileスマホにはない「HP Elite x3」の強みとは?
Windows 10 Mobileスマホ「HP Elite x3」には、他のスマホにはない独自のポイントが多数盛り込まれている。HPはどの点に注力してHP Elite x3を開発したのか。またKDDIがHP Elite x3を採用した理由とは?
HPのWindows 10 Mobile搭載スマートフォン「HP Elite x3」が9月5日に発売される(→Windows 10 Mobileスマホ「HP Elite x3」、9月5日発売――価格は7万7800円)。日本では2015年から多くのWindows 10 Mobileスマホが発売されているが、HP Elite x3には他のWindows 10 Mobileスマホにはない独自のポイントが多数盛り込まれている。
「安全」「安心」「快適」を提供する
HP Elite x3は、スマートフォン、タブレット、PCという3つの形態を1つにまとめたデバイスだ。スマートフォンとして電話ができるのはもちろん、約6型の大画面を生かしたタブレットとしても活躍する。そしてWindows 10 Mobileの「Continuum」機能を生かし、周辺機器「デスクドック」「ノートドック」を組み合わせることで、オフィスや外出先でPCとしても利用できる。
日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業本部長の九嶋俊一氏は、「1つのデバイスに統合することでコストを下げ、生産性を上げられる。電話も統合され、(Elite x3は)携帯電話にも内線電話にもなる」とメリットを説明する。
また「ミレニアム世代」と呼ばれる10~20代の若者はスマートフォンを抵抗なく使いこなすが、「日本では逆のパターンもあり、キーボードやマウスがないと仕事ができない人もいる」(九嶋氏)ため、スマートフォンとPCの操作体験も統合した。そのカギを握るのがContinuumというわけだ。
企業でスマートフォンを利用する場合、複数のデバイスを一括管理できることも重要だ。「スマートフォンを導入されているお客さまは、スマートフォン向けにセキュリティのポリシーを考えて、それに合わせたツールを導入しているが、運用がバラバラだとリスクが生まれ、人件費もかさむ。Microsoftが提供する、統一された管理環境やセキュリティのインフラなら管理コストを下げられる。ここにWindowsを採用する大きな意味がある」と九嶋氏は説明する。
周辺環境で注力したのが「統合」だが、ハードウェアとしては「安全」「安心」「快適」の3点に注力した。
安全については、情報漏えい対策としてコピー&ペースト、ローカルでの印刷、スクリーンショットなどを禁止して“抜け穴”をふさげるほか、マルウェアから保護するために、認証したOSでないと起動しない「セキュアブート」という仕掛けも利用できる。「Windowsそのものが持っているセキュリティが、安全を担保する」(九嶋氏)
ハードウェアとしては、日本で発売されているWindows 10 Mobileスマホとしては唯一、指紋認証と虹彩認証をサポート。「パスワードは流出する可能性があるが、指紋と虹彩は盗まれることがないので、そこでセキュリティを担保できる」と九嶋氏は搭載の意図を説明する。
安心でこだわったのが、4150mAhという大容量バッテリーだ。HP Elite x3は約500時間の連続待受、約1980分の連続通話が可能で、「ハイエンドのスマートフォンと比べて、1.4倍ほど長く使える」(九嶋氏)という。ノートドックからHP Elite x3に給電をすれば、ノートドックに接続した状態で約10時間、スマートフォンとして約14時間の連続使用が可能で、計24時間、充電をせずに使い続けられる。また、HP Elite x3のバッテリーは最大1000回の充電でき、「通常のスマートフォンと比べて2倍以上の長寿命を実現している」(九嶋氏)という。防水や耐衝撃性のサポートも安心できる要素だ。
快適については、日本のWindows 10 Mobileスマホとしては、初めて「VoLTE」に対応したことがまず挙げられる。VoLTEについてはKDDIからの要望が大きかったそうで、法人向けということもあってビジネスでの利用が多い通話の品質にこだわり、ノイズキャンセリング機能も搭載した。現行では最高位となるQualcommのプロセッサ「Snapdragon 820」を採用したことは、Continuumをより快適に利用することにつながる。仮想環境から業務用アプリを利用できる「HP Workspace」は、HPならではのサービスだ。
KDDIがHP Elite x3を提供する狙い
HP Elite x3はKDDIも法人向けに販売をするが、同社は「クラウド」「ネットワーク」「デバイス」の三位一体で提供していく。
ビジネスユーザーのスマートフォン普及率は60.5%に達したという統計もあり、法人でのスマホ利用率は上がっているが、「従来のケータイと使い方はあまり変わっていない」とKDDI ソリューション事業本部 東海林崇氏は分析する。これまで、ビジネスパーソンは社内、外出先、移動中で異なるデバイスを使っており、「スペックに差分があるので1つのデバイスでは満たせなかった」(東海林氏)が、デバイスの進化によってこれを克服。HP Elite x3は、PCと同等のスペックとスマホの使い勝手を両立させたことから採用を決めた。
ネットワークセキュリティについては、「KDDI Wide Area Virtual Switch 2(KDDI WVS 2)」というサービスを使うことで、これまでは必ず本社やデータセンターを経由していたトラフィックを、最適な経路に振り分けることが可能になる。また「お客さまはいろいろなクラウドを使い分けたいという希望が大きい」(東海林氏)ため、さまざまなクラウドサービスをKDDIのネットワーク上で自由に利用できるハイブリッドクラウドを実現している。
「ネットワーク、クラウド、デバイスのセットでお客さまのワークスタイルを変えられる。これをKDDIが実現したい」と東海林氏は意気込みを語った。
左からMicrosoft プリンシパル、グループプログラムマネジャー テレコムエコシステム ピート・バーナード氏、日本HP 岡隆史社長、HP パーソナルシステムズ モビリティ・プロダクト・マネージメント バイスプレジデント キース・ハーツフィールド氏、KDDIの東海林崇氏
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