DSDS+au VoLTEが強みに、高価格帯でも勝負――ASUSに聞く「ZenFone 3」シリーズ:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/3 ページ)
ASUSは2016年下半期に、ZenFone 3をはじめ、立て続けに新機種を日本に導入している。ライバルも増える中、日本市場をどのように攻めていくのか。ZenFone 3シリーズの特徴や開発秘話などを、ASUS JAPANに聞いた。
au VoLTE対応の苦労
―― au VoLTEに対応し、同時にDSDSが使えるのも今回は初の取り組みでした。こちらについては、いかがでしょうか。苦労もあったと思います。
村上氏 DSDSに関しては、ワールドワイドに需要がある中で、どうやって日本に訴求するかを考えてきました。まずZenFone Goでau VoLTEに対応し、ZenFone 3では発売と同時にDSDSとau VoLTEをセットでやることで、利用シーンを幅広く見せることができ、ストロングポイントになったと思っています。
au VoLTEはKDDIの技術協力がないと難しいというハードルがありましたが、そこにもかなり時間をかけています。KDDI側にもUQ mobile、mineoとMVNOがある中で、端末が少ないという悩みがあり、そこでうまく折り合いがつきました。KDDIには、かなり協力していただけましたね。苦労したのはテクニカル側で、これはASUSの本社や日本だけでなく、KDDIも苦しんでいました(笑)。
阿部氏 au VoLTEに対応し、しかもDSDSまで載せることで、SIMカードの組み合わせのバリエーションは大幅に増えました。苦労した点では、仕様にかなり特殊なところがあったため、いざ実装してみると「あれ?」ということが何度も起こりました。そうこうしているうちに、どんどん発売日も近づいてきます。
村上氏 SIMフリーとうたっている以上、「ここのキャリアでは使えません」とは言いたくなかったですね。これは本社側にも強く言っていました。ようやく対応できたのは、よかったと思っています。外資系のSIMフリースマートフォンメーカーでは、弊社が最初に対応できました。後追いで他社も対応しましたが、そこまで増えてこなければSIMフリー市場も広がりが鈍化してしまいます。私たちも、日本側から積極的に訴え、ローカライズすることで日本の皆さんに受け入れられる状況にしたいと考えています。
―― 阿部さんのおっしゃっていた「あれ?」というのは、どういうところですか。
阿部氏 普通に使う分には問題なくても、DSDSにして操作するとおかしなことになったことがありました。組み合わせが膨大になるので、一番引っ掛かったのがDSDSの部分ですね。今もau VoLTEを使う際にはauのSIMをメイン(SIM1)にしないといけませんが、他と組み合わせたとき、おかしな動きが出ることもあれば、出ないこともある。それも、製品ごとに問題があるときもあれば、ないときもあり、1つの端末でできたからといって安心していると、次で痛い目を見たりするということもありました。挙動が製品によってバラバラなんですね。
―― QualcommのチップセットがVoLTEに対応しているそうですが、実際にはどこまでメーカー側が手を入れる必要があるのでしょうか。
阿部氏 厳密に言うと、使えるだけで、その後はキャリアごとにVoLTE用のパラメーターがバラバラで、そのチューニングが必要になります。ですので、チップセットが対応しているといっても、実装はメーカー側の役割になります。
FeliCaと防水対応は「本社にリクエストをしている」
―― なるほど。そうなると、ドコモ用のVoLTEにも同時に対応するのは、かなり手間がかかりそうですね。一方で、MVNOの多くはドコモのネットワークを使っています。対応はいかがでしょう。
村上氏 まったく検討していないわけではありませんが、ローカライズするにあたり、日本側でやるべきかどうかの判断が1つあります。いくつかやらなければいけないことがある中で、優先順位はそこまで高くないというのが現実です。ドコモのネットワークだと、VoLTEで(通話が可能かどうかの)ゼロ、イチが決まるわけではありません。VoLTEで音声がキレイになったと感じる人が多ければいいのですが、今は他のローカライズに時間と労力をかけた方がいいと感じています。
―― 他のローカライズとは、例えばFeliCaですか?
テン氏 日本側は、本社にリクエストを上げ続けます。日本で成功し、ナンバー1になるためには、FeliCaと防水は必然的に必要になってきます。現段階ではこれしか言えませんが、リクエストは続けています。
村上氏 ただ、営業視点で見ると、持っている人は多くても、本当に使っている人がどれくらいいるのかはキッチリ見ていく必要があります。SIMフリー市場には防水でない端末も多いですが、それも売れています。そこを見極めてから、積極的にプッシュしていきたいですね。
「SIMフリー=格安」の時代は終わる
―― ZenFone 3を発売してから、2カ月がたちましたが、反響はいかがでしたか。
リー氏 出してみて一番受けたのは、DSDSです。製品自体もCPUやサイズ感、外観などに高評価をいただいていますが、特にDSDSは評価されました。au VoLTEも対応してよかったです。
村上氏 各MVNOからもデザインがよくなったと言われ、もちろん機能も認めていただけています。製品数が多くなったにもかかわらず、これまでと変わらない数のMVNOに採用いただけたのも、その表れだと思います。発売後も数字が著しく落ちることがなく、実績を残せました。少し価格が上がっている中でも、反響がよく、追加オーダーをいただけています。
―― より上位のモデルが売れるようになり、単価が上がってきたのは、メーカーにとってありがたい話ですね。
テン 最初から「ワンランク上のぜいたく」と言い続けてきましたが、一方で、「格安スマホ」という言葉のインパクトが大きすぎて、それが浸透してしまいました。ZenFone 2で「性能怪獣」というキーワードをうまく取り入れましたが、「SIMフリー=格安」というトレンドを変えていきたいのは、前々から思っていたことです。
実はZenPadでも同じようなトレンドが来ていて、「ZenPad 3」のSIMフリーモデルを出しました。これも約4万円しますが、ずっと売れ続けていて、製品が足りない状況です。「SIMフリー=格安」という時代は、もはや終わったといえるのではないでしょうか。それを見すえて、今回は意図的にこういうポジショニングにしています。
出浦氏 私はZenFone 5のときから関わってきましたが、当時と比べると年々市場が広がるのと同時に、お客さまもダイバース(diverse=多様)になってきています。いいものを求める人はお金を惜しまない。タブレットにしても高いスペックのものが売れていますし、ZenFone 3 DeluxeもZenFone 3も売れています。
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