“実質0円”禁止、MVNOとSIMフリースマホの飛躍――2016年のモバイル業界を振り返る:石野純也のMobile Eye(2016年総括編)(2/3 ページ)
2016年で大きな話題を集めたのが大手キャリアの「実質0円の禁止」。その反動でSIMフリースマホの販売が伸び、MVNOも飛躍した。MVNOではLINEモバイルが注目を集め、特定サービスの通信料を無料にする「カウントフリー」の提供も増えた。
SIMロックフリースマホの販売が急増、MVNOも大きく飛躍した1年
大手キャリアが防戦に回る一方で、攻めの姿勢に転じていたのがMVNOとSIMロックフリーのスマートフォンメーカーだ。実際、あるメーカー関係者も「実質価格の値上げがささやかれ始めた2月ごろから、SIMロックフリースマートフォンの販売台数が急増した」と語っており、それを裏付けるように、2016年は各社が続々と新モデルを投入した。
ユーザーの幅が広がり、端末へのニーズも多様化している。かつては3万円を切るミッドレンジのスマートフォンが中心だった市場が、徐々に広がり始めており、それを受け、メーカーもハイエンド端末に力を入れ始めている。真っ先に動いたのは、Huaweiだった。本連載でも触れた通り、同社は市場の変化を察知し、フラグシップモデルの「P9」を投入した。
Huaweiはその後、楽天モバイルへの独占提供となる「honor 8」や、大画面のハイエンドモデル「Mate 9」など、立て続けにハイエンドモデルを発売しており、そのいずれもが好評を博しているという。これはSIMフリースマートフォン市場でシェアの高いASUSやFREETELも同様だ。各メーカーへのインタビューからは、高価格な端末の販売状況に手応えを感じている様子もうかがえる。
そのSIMロックフリースマートフォンとセットで利用するMVNOも、一般層の取り込みに力を注いだ。楽天モバイルを皮切りに音声通話の定額サービスが広がり、端末代金と通信料をセットにしたプランも登場した。楽天モバイルだけでなく、FREETELや、KDDI傘下のUQ mobileも、同様の施策を導入している。これらのMVNOは、いずれも従来のキャリアよりも月々の料金が安価で、端末も割賦で手に入り、手軽に使えることを売りにしている。GBあたりの単価で低料金を訴求してきたこれまでとは、MVNOの方向性も変わりつつあるようだ。
好調にユーザー数を伸ばすMVNOがいる一方で、すでに会社の数は500を超え、淘汰(とうた)が始まる可能性もある。本連載でも取り上げたように、8月には、日本通信が個人ユーザー向けのMVNO事業をU-NEXTに譲渡することを発表した。その後、日本通信のb-mobileは、U-NEXTとの共同運営という形態になった。
結果として事業を丸ごとU-NEXTが引き継いだわけではないが、MVNOの老舗である日本通信の決定に、業界には衝撃が走った。以前よりシェアを落としているとはいえ、同社には依然として万単位のユーザーがいる。今後は、より規模の小さなMVNOが立ち行かなくなることも予想されるからだ。総務省の政策に後押しされる格好で拡大しているMVNOだが、サービスをたたむときにユーザーをどう保護するのかは、2017年以降の課題になるかもしれない。
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