日本のスマホシェア4位に――2016年にHuaweiが躍進した理由:石野純也のMobile Eye(12月5日〜16日)(1/3 ページ)
2014年にSIMフリー市場への本格参入を果たし、徐々に存在感を高めてきたHuawei。スマートフォンメーカー全体の中で4位につけるなど、シェアも急上昇している。Huaweiはなぜここまで躍進できたのだろうか?
2016年に、日本市場で最も躍進したメーカーを1社挙げるなら、Huaweiで異論はないだろう。
同社は2014年にSIMフリー市場への本格参入を果たし、徐々に存在感を高めてきた。2016年にはフラグシップモデルの「HUAWEI P9」や、販路限定でコストパフォーマンスに優れた「Honor 8」、そして大画面モデルの「HUAWEI Mate 9」といったハイエンドモデルを続々と投入。そのいずれもがヒットし、BCN調査では、Appleやソニーモバイルなども含めたスマートフォンメーカー全体の中で4位につけるなど、シェアも急上昇している。
BCNの調査は家電量販店が中心で、キャリアショップが含まれていないため、数値は割り引いて見る必要はある。ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアだけでも数千店舗にのぼるため、家電量販店だけでは、真の売れ行きを反映しているとはいえない。それでも、Huaweiが販売を伸ばしているのは事実だ。MVNOでの取り扱いも増え、楽天モバイルのように、Huaweiのスマートフォンを戦略的にプッシュする会社も増えてきた。 12月16日に発売されたMate 9に関しては、楽天モバイルだけでなく、DMM mobileやエキサイトモバイルも約1万円の割引を行い、目玉に据えている。
では、Huawei躍進の背景には何があったのか。ここ1年の動きを中心に、その理由を解説していく。
ブルーオーシャンへの先行投資が当たり、2016年はハイエンドモデルへシフト
HuaweiはMVNO市場の拡大をにらみ、2014年からSIMロックフリースマートフォンを日本で販売してきた。“格安スマホ”という言葉ができた一方で、SIMロックフリーのスマートフォンはまだ種類が少なく、この市場はいわゆるブルーオーシャンになっていた。ライバルの少ないSIMフリー市場にいち早く参入し、存在感を高めていったというわけだ。2014年時点での市場規模は小さかったが、MVNOの拡大に伴い、SIMロックフリースマートフォンの販売台数も徐々に増えていく。
転機となったのは、2016年4月に施行された総務省のガイドラインだ。これによって、実質0円が禁止されキャリアの端末販売に大きくブレーキがかかった一方で、MVNOやSIMロックフリースマートフォンの販売には弾みがついた。複数の業界関係者は、ガイドライン開始前の2月ごろから、MVNOの契約者数やSIMロックフリースマートフォンの販売台数が急増したと口をそろえる。実際、市場調査もその傾向を裏づけており、MM総研の調査によると、2016年上期は、SIMロックフリースマートフォンが79.1%と高い成長率を示している。全体に占めるSIMロックフリースマートフォンの構成比も、5%から9.8%に上昇した。
早くからSIMロックフリースマートフォン市場に注力してきたHuaweiは、この大波に乗ることができた。規模の拡大に伴い、MVNOのユーザー層も変化。もともとの売れ筋だった3万円未満のミッドレンジモデルだけでなく、5万円を超えるハイエンドモデルにも、光が当たるようになった。この市場動向をいち早く察知したHuaweiは、6月にフラグシップモデルの「HUAWEI P9」を発売した。2015年は「HUAWEI P8」の投入が見送られていたことを考えると、これは大きな変化だ。P9発売の狙いを、同社の日本法人でデバイスプレジデントを務める呉波(ゴハ)氏は当時、次のように語っていた。
「SIMフリー市場はスタートしたばかりで、キャリア市場が大部分を占めていました。日本のハイエンドスマートフォンは購入補助があり、0円で手に入ったり、キャッシュバックまでもらえたりしていた。そこに日本政府(総務省)がガイドラインを打ち出し、スマートフォン市場の競争環境が激化しました。これがP9とP9 liteを(同時に)発売した理由です。P9はフラグシップではあるが、価格競争力もあると思っています」
果たして呉波氏の読みは当たり、P9はSIMロックフリースマートフォンの売れ筋モデルとなった。販売台数こそミッドレンジモデルの「P9 lite」の方が多いものの、5万9800円(税別、以下同)と高額なモデルながら、SIMロックフリースマートフォンの販売ランキングではトップ10に顔を出すようになった。P9はその後、価格も5万円800円に改定。11月には各1000台の限定色としてレッド、ブルーの2色を加え、販売も引き続き好調だという。一方で、9月には楽天モバイルとオンラインショップに販路を絞ったHonor 8を発売。キャンペーンで3万5800円という低価格を打ち出したことが功を奏し、楽天モバイルの主力商品になっている。
そして、12月16日には、満を持して「HUAWEI Mate 9」が発売された。Mateシリーズは、「Pシリーズとともに日本で主力として展開する」(呉氏)フラグシップのライン。サムスン電子のGalaxy Noteシリーズ対抗として2013年のCESで発表された「Ascend Mate」がその原点で、他のモデルと比べ画面が大きく、ビジネスユーザー向けという位置付けになる。
Mate 9はこうした特徴を備えつつ、カメラはP9で好評だったライカとのコラボレーションを一歩進め、モノクロセンサー側の画質を上げ、より高画質な写真が撮れるようになった。6万800円と価格は同社の現行モデルの中で最も高いが、機能性の高さやコストパフォーマンスを考えると、P9に続くヒット商品になるかもしれない。
関連キーワード
華為技術(Huawei) | SIMロックフリー | UQ mobile | MVNO | 楽天モバイル | iPhone | Leica(ライカ) | 石野純也のMobile Eye | 総務省 | HiSilicon
関連記事
- P9との違いは?――「HUAWEI Mate 9」はココが進化した
「HUAWEI Mate 9」は、「フラグシップモデル」と呼ぶにふさわしい仕上がりになっている。一方、同じくフラグシップモデルである「HUAWEI P9」との違いも気になる。Mate 9は何が進化したのだろうか? - 進化したライカカメラを搭載――5.9型の「HUAWEI Mate 9」、12月16日発売
Huaweiのフラグシップスマホ「HUAWEI Mate 9」が日本で発売される。5.9型ディスプレイに最新のプロセッサ「Kirin960」や4000mAhバッテリーを搭載。ライカと共同開発したカメラはさらに進化している。 - 「HUAWEI P9」を欲しいと思う5つの理由/残念なところ
Huaweiの最新スマホ「HUAWEI P9」が6月17日に発売される。数あるSIMフリースマホの中でも、このP9は特に「欲しい」と思えるデキだ。その理由を紹介したい。 - デザインを洗練させてカメラ機能を強化、熱対策も――Huaweiの“生き残り”戦略
HuaweiがSIMロックフリースマホを本格展開してから1年がたったが、同社は今の市場をどのように捉えているのか。同社の最新戦略を、日本で端末事業を統括するデバイス・プレジテントの呉波(ゴハ)氏に聞いた。 - 「グローバルでの競争力」と「日本での経験」が強み――SIMフリー市場を攻めるHuaweiの勝算
Huaweiが6月下旬に発売を予定しているSIMロックフリースマホの「Ascend G6」の価格は2万9800円(税別)で、キャリアが販売する端末よりもはるかに安い。ファーウェイ・ジャパンの担当者が、SIMフリー市場参入の背景を説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.