「スプリント売却か、それともT-Mobile買収か」――孫社長は「経営権譲渡報道」にMWCで何を語るのか:石川温のスマホ業界新聞
ソフトバンクグループが、傘下にある米Sprintの経営権をT-Mobile USに譲渡するという報道が一部にあった。ソフトバンクグループの孫正義社長の「腹の内」は一体どうなっているのだろうか?
2月18日(日本時間)、ロイターが「ソフトバンクがスプリントをT-Mobile USに経営権を譲渡するのではないか」と報じた。
現在は米連邦通信委員会(FCC)が周波数入札中の競合会社間の接触を禁じているため、交渉していないとされているが、早ければ4月の入札後にも交渉がはじまるのではないか、としている。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年2月18日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
これまで、孫社長がいち早くトランプ大統領に会いに行き、アメリカに5兆円の投資と5万人の雇用を約束したことから「T-Mobile US買収の布石か」とみられていた。
2月8日に行われたばかりの決算会見で孫社長はスプリントの再建が順調に進んでいることをアピール。孫社長は「スプリントがソフトバンクの足を引っ張っているといまだに思っている人がいる。しかし、その認識は変えていただきたい。スプリントが成長の牽引役になる」と語ったばかりなのだ。
確かに一時期は売却も考え、髪の毛が抜けるほど悩んだと言っていた(スプリントのせいにしてはいけないと思う)が、ネットワークが改善し、営業力も増したところで、経営権の譲渡という話が出るとは思わなかった。
ただ、決算会見でも触れられていたが、買収当時は1.95兆円(平均株価6.90ドル、1ドル85.2円)の持分価値が、円安効果もあり、いまでは3.09兆円(株価8.34ドル、1ドル111.8円)、つまり買収後に58%も増加している。
ここでスプリントを売却しても、利益は十分であり、投資家としては優秀な功績といえるだろう。
実際のところ、昨今のアメリカのスマホ市場は、再びデータ通信定額制の争いになっており、これから収益が増えていくとは考えにくい。
また、AT&Tのタイムワーナー、ベライゾンのヤフー買収など、キャリアの契約者数競争から、コンテンツや広告に競争軸が移っている。スプリントが上位2社と互角に戦うには、T-Mobile USと一緒になり、さらに他の企業を買収しないことには勝ち目がない。
もちろん、孫社長としては、すでにキャリアの経営に興味はなく、ARMや10兆円にもなるというソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資事業に夢中で仕方ないという感じだ。
スプリントを3兆円以上で売り払い、次の投資事業に足しにしたいと考えていておかしくない。
とはいえ、現状ではロイターが、スプリントの経営権譲渡の「可能性」を報じただけに過ぎない。
果たして、孫さんの本心はどこにあるのか。
奇しくも、2月27日からスペイン・バルセロナで開催されるMobile World Congressのキーノートスピーチに孫社長が登壇する。テーマは「Mobile. The Next Element」。ほかにテレフォニカやKTのCEOが同席するセッションとなるなか、孫社長の発言に注目が集まりそうだ。
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