「分離プラン」の弱点をカバーしたau新料金プラン MVNOへの流出阻止なるか:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
KDDIは新料金プランとして「auピタットプラン」と「auフラットプラン」を提供。端末の買い替えをサポートする「アップグレードプログラムEX」も導入し、分離プランの弱点解消にも努める。新料金プランの狙いや、同時期にドコモが導入した「docomo with」との違いを解説する。
MVNOへの流出を食い止める切り札になるか、他社の対抗策にも要注目
KDDIが新料金プランを導入した背景には、MVNOやY!mobileをはじめとしたサブブランドへの流出を何とかして食い止めたいという思惑がある。田中氏は、「MNOの勢いは弱まっている。お客さまのご要望に、MNOが応えられなくなっているという認識でいる」と、率直に現状を分析する。MVNOは料金が安いぶん、端末は定価で購入しなければならず、大手キャリアにも価格的な優位性はあったが、総務省のガイドラインによって、そのメリットも薄くなってしまった。この状況に対応するために用意したのが、2つの新料金プランだというわけだ。
一方で、価格だけで純粋に対抗できているかというと、必ずしもそうではない。例えば、auピタットプランで1980円(税別)という料金を実現するためには、通話定額のないシンプルを選び、キャンペーンが適用されなければならず、スーパーカケホやカケホを選ぶと、auスマートバリューが必須になる。
対するY!mobileやUQ mobileは、キャンペーンだけで1980円を実現しており、しかもこの料金にはY!mobileで10分、UQ mobileで5分の通話定額が含まれる。2社とも、データ容量も2年間2倍になるキャンペーンも実施しているため、単純比較ではauよりも安く、しかも多くのデータを使えることになる。そのため、新プランが出たからといって、他社からMVNOやサブブランドに移ろうと考えている人が、auを検討する可能性は低い。
田中氏も、「他社からお客さまに来てもらうというより、MVNO、LCCに対して、われわれの弱いところをしっかりフォローするというのが狙い」だと語る。つまり、新規ユーザーの獲得よりも、既存ユーザーの引き留めに重きが置かれているということだ。確かに、auユーザーにとっては、機種変更したり、料金プランを変更したりするだけで、Y!mobileやUQ mobileに“近い”価格帯になるため、MNPの転出料や新規契約手数料、端末代といったスイッチコストを払ってまでキャリアを変えるモチベーションは低くなる。
使ったデータ量に応じて自動的に料金が変わる仕組みも、導入しているMVNOはFREETELなど一部に限られるため、ユーザーを引き留める効果がありそうだ。実際、KDDIの調査では、ユーザーのデータ利用量は月ごとの変動が大きく、「使い切っていない月があると、無駄だと感じてしまう」(田中氏)といった結果も出ていた。田中氏も、「結果として(MVNOへの)流出は止まると思っている」と自信をのぞかせる。
見方を変えると、端末限定で分離プランを導入したドコモに対し、KDDIは全機種で使える分離プランを用意したという格好だ。KDDIは新プランの影響を「200億円と見積もっている」(田中氏)というが、ユーザー数が多いドコモでは、影響がさらに大きくなるため、すぐに追随するのは難しいかもしれない。また、ドコモは、家族利用が前提の「シェアプラン」でお得感を打ち出していることもあり、料金体系的にも段階制プランを導入するのはハードルが高い。
一方で、ドコモやauの分離プランが功を奏して流出が減れば、他社からユーザーを獲得しているY!mobileにとっては、死活問題になりかねない。KDDIグループのUQ mobileも、置かれている状況は同じだ。田中氏は「UQはUQで頑張ってほしい。お互い切磋琢磨(せっさたくま)して、マーケットの期待に応えていきたい」と語っていたが、分離プランの成否次第では、Y!mobileやUQ mobileなどのサブブランド側にも、何らかの対抗策が求められそうだ。
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