ソフトバンク、国内通信は“先行投資”で顧客基盤を拡大 ドコモとauの新料金プランには追随せず
ソフトバンクグループの国内通信事業の営業利益は前期比で9%減となった。Y!mobileやソフトバンク光などを積極的に販売し、顧客基盤の拡大に努める。孫社長はドコモとauの新料金プランには追随しない考えも示した。
ソフトバンクグループが8月7日に発表した2017年度第1四半期の決算で、国内通信事業の営業利益が前期比で9%減となったことが明らかになった。国内通信の営業利益はこれまで右肩上がりで増加してきたが、2016年度第1四半期の2390億円から2185億円にダウンした。
これは、より料金の安い「Y!mobile」の積極的な販売、ソフトバンク光とスマホをセットで契約すると2年間スマホの料金を割り引く「おうち割 光セット」、1GBあたりの単価が安い大容量プラン「ギガモンスター」、毎週金曜日に特典を提供する「SUPER FRIDAY」、Yahoo!ショッピングのポイント10倍・Yahoo!プレミアム無料……といった施策で先行投資をした影響によるものだという。
「(国内通信事業は)5年、10年、20年という単位で見て、十分健全に成長できると考えている。目先の利益を最大限にするよりも、少しでも顧客基盤を増やしたいので、健全な先行投資をしようと、いくつかの販売促進策を行っている」とソフトバンクグループの孫正義社長は説明する。
特におうち割 光セットが好調で、「光ファイバーサービス(ソフトバンク光)が思いのほか順調に増えている」(孫氏)とのこと。これらの施策は「来年(2018年)、再来年(2019年)、健全に収益を伸ばしていく材料になる」とみる。
ソフトバンクとの連携(ポイント10倍、Yahoo!プレミアム無料)効果もあり、ソフトバンクとY!mobileユーザーのYahoo!ショッピング購入者は、月間100万人規模で増えており、2017年1月から6月にかけて倍増した。「伸び率はAmazon、楽天よりも高いと思っている。Yahoo!とソフトバンクとのシナジーを出し合い、販売促進費として積極的に踏み込んだ」と孫氏は手応えを話す。ちなみにポイント10倍の費用は、ソフトバンクとYahoo!で折半しているとのこと。
携帯電話の契約数は6月30日時点で3244万8000になり、3月31日から4万8000の純増となった。フィーチャーフォンとデータ端末の契約数は前期末から減少したが、スマートフォンが大きく増加した。スマートフォンの純増数は前期比61%増の45万となった。
解約率は携帯電話のみだと0.79%で、前期の0.85%から0.06ポイント改善した。孫氏によると、これはおうち割 光セットが効いているという。また、携帯電話の解約率で初めてKDDIを下回った。ただし20GB、30GBの大容量プラン(ギガモンスター)の影響でデータ端末の解約が増えたことで、ソフトバンク回線トータルの解約率は前期と同じ1.13%だった。
ソフトバンク回線のうち、SoftBankブランドとY!mobileブランドの構成比率は公表されていないが、Y!mobileの比率が上昇しており、これによってソフトバンク全体のARPU(1回線あたりの売り上げ)は前期の4610円から4380円まで下がっている。
一方、他社を見るとNTTドコモが「docomo with」、KDDIが「auピタットプラン」「auフラットプラン」という新料金プランを提供している。ソフトバンクはこれらのプランに追随することを検討しているのだろうか。ソフトバンクの宮内謙社長は「全く考えていない」と話す。「Y!mobileが順調で、ソフトバンクもスマホデビュー割などでスマホの数字が伸びている。ここ1カ月ほど様子を見ていたが、全く影響がない。Y!mobileとソフトバンクの差別化がうまく演出できていて、ユーザーにもフィットしているので、変える方向性はない」と同氏。
孫氏は「(ドコモとauの新プランは)分離プランということで、特段大きな値下げには実態としてなっていない。お客さんが(他社に)多く流れ込んでいるというふうには認識していない」とみる。あくまで現在の施策で攻めていくようだ。
孫氏は国内通信事業について、IoT、ロボット、AI、クラウド、自動運転、電力などに領域を拡大する意欲を見せている。先行投資で増えたスマホや固定回線のユーザーから、どれだけ売り上げを増やすことができるかが、腕の見せどころといえる。
米国事業ではSprintが増収増益となり、「売り上げがずっと下がり続けていたのが底を打って反転した。(ソフトバンクグループの)成長エンジンになる」と孫氏は手応えを話した。
ソフトバンクグループがT-Mobileを買収してSprintと事業統合するのでは……という点について孫氏は「Sprintについては、複数の事業統合の相手先を想定し、交渉している。統合は『近い将来』だと、われわれは考えている。あえてコメントを控えたい」と述べ、交渉が前進していることを示唆した。
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