これで終わりじゃ、なくってよ?――大晦日の「エアノベル#15a24」奮闘記(後編)(3/3 ページ)
男はどこだ! 裏切り者は誰だ! 合い言葉は何だ!――前編に引き続き、セカイカメラを使った“参加する物語”「エアノベル#15a24」の体験リポートをお伝えする。作家・新城カズマ氏のタクトに引き寄せられつつも、自ら“物語”を構築していく参加者たち。その結末やいかに!
これ以上、待っていられなくってよ?
こうして都庁付近に到着したルノアール組は、男の姿を探します。このころ、時刻は確か10時30分ぐらい。タイムリミットの深夜12時が迫っています。尾行組と連絡が取れず、男も確認できないまま、人気のない街を徘徊するメンバー。実はこの時、男のエアタグ履歴に「このホテルに泊まってみたい」「こっちは第一……議会……」など、正確な場所をほのめかす情報が出ていたのですが(さらにいえばエアタグをポケットに入れてマップを表示すれば正確な場所が分かったのですが)、寒さと疲れと集団でいる安心感とで、筆者の脳は完全に思考停止してました。と、ここでメンバーが不審人物を発見。遠くてよく分かりませんが、黒い上着を着ている。もしかして、男?
もし男じゃなかったら、我々こそが不審人物です。深夜の新宿で、無関係な人物を集団で取り囲もうものなら、通報されちゃいます……。メンバーの一部が、人物の背中に刺繍があるか、確認に行きます。身を隠す場所がない広場を、体をかがめながら人物に接近する捜索隊……その姿、逆にあやしいです。
しばらくして、帰ってきたメンバーは、両手で「×」のジェスチャー。どうやら一般の方だったようです。あぶねぇーっ、でも何であんな場所をうろついているんだろう……と、気が付いたらメンバーに見慣れない顔が。実は「不審人物」は、単独行動していた捜索隊でした。なるほどね。
このあと、男の正確な場所がメンバーに伝わり、尾行組と合流することになりました。この時、時刻は10時45分ごろ。「その場所」に到着すると、尾行メンバーの奥に、男の姿――。ついに来ました。約11時間の死闘の末、エアノベル、堂々のチェックメイト……。
ん? しないの? 男を複数人で確保し、合い言葉も判明して、条件はそろってますよ――実はこの時、捜索メンバーに共通の思いがわき上がっていました。それは、ともに寒さと疲労に耐えた仲間ができるだけそろった状態で、フィナーレを迎えたいという気持ちです。せめて、阿佐ヶ谷から新宿に向っているメンバーは、待ってあげたい。男と捜索隊が互いに見て見ぬフリをする、奇妙な時間が続きます。そして、阿佐ヶ谷組合流! さあ、エアノベル、ここに完結……。
……まだしないんだ。ひっぱるねー。なんと、エアノベル有志の中心的人物である@epics_jpさんが、いつのまにか行方不明に。「えぴくす、ここだ!!」とエアタグを打ち、待ちます。ここで、元裏切り者で新城カズマさんの知人である@IzunoHiranariさん(のちに作家の伊豆平成さんと判明)に、電話が入ります。その相手は、新城さん。な、なにが伝えられるのだろう……。
「男のライフがゼロ。早く捕まえてあげて」
寒さと戦っていたのは我々だけではなかった。でも、もう少しで来るから、我慢してください「男」さん!!! そして、ついに@epics_jpさんが合流し、「その時」が来ました。
男を一斉に取り囲み、そして――
「呼び止めたのは私で、その相手はあなた。間違いなくってよ!!」
深夜の都庁に、異様な合い言葉が響き渡ります。その瞬間、「男」さんから、何かが抜けていきました。物語世界の呪縛から「男」さんを解き放つ、何かが。本当に、捜索隊、協力者のみなさま、お疲れ様でした!!! 大晦日の「エアノベル#15a24」、無事、大団円を迎えることができました!!!!
もう1つのエピローグ――捜索隊の前に現れた「サプライズゲスト」
この後、捜索隊には嬉しいサプライズが。ホテルの喫茶室で待機していた頓智・の井口尊仁代表らに加え、公式アカウントの「中の人」である新城さんと合流することになったのです。営業している店を見つけ、新城さんを迎え、2010年が始まる瞬間に祝杯を上げます。
新城さんの話によれば、エアノベルは「ジャズのセッション」のように物語が進行していたそうです。ネット上で参加者の動きを見ながら、「男」に次のアクションを伝え、シナリオを書き換えていたとのこと。「二つの塔=都庁」という動きも、参加者の言動に合わせたもので、トールキンの本に付箋を挟んだのは「たまたま」だったようです。一応僕たちも、物語の“つむぎ手”だったってことです。ちょっとうれしい。
ちなみに今回、「本の一文」をクイズに据えたのは、捜索隊が自力で手に入れられない情報だったから。協力者と捜索隊のチームワークがないと物語が進まないようにし、さらに、参加するタイミングを逃した「観戦者」を協力者側に引き込むという、新城さんのテクニックでした。これがあって、エアノベルの絶妙なバランスが保たれていたんですね。
早朝まで飲み明かし、最後は新城さんの一声で月食を見に行くことに。元日の月食は、国内では「史上初」――。いろんな意味で、記憶に残る日となりました。新城さんは第2、第3のエアノベルに意欲を燃やしており、小説はもちろん、今後のエアノベル的活動も注目です。きっと第2弾が実施されるころには、セカイカメラに新しい機能が加わり、気温も暖かくなり、新感覚のエアノベルが生まれる……かもしれません。
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