多様化するディスプレイサイズ ドコモのスマホ戦略に迫る:5インチまではスマートフォン(2/2 ページ)
ドコモはこの夏、さまざまなディスプレイサイズのAndroidスマートフォンをラインアップした。ドコモは端末サイズの多様性についてどのような戦略を描いているのか? 担当者に聞いた。
年2回の調査で画面サイズのトレンドを見極める
この“最適なバランス”を見極めるために、ドコモは独自で市場調査を繰り返している。使われるのは、金型をゼロから起こしたスマートフォン型のモックアップだ。幅は52ミリから89ミリまであり、5インチ台は3ミリ刻み、それより大きいものだと6ミリ刻みで違うサイズを用意。これを実際にモニターに手にしてもらい、その感触を得るというわけだ。こうした調査はもちろん端末メーカーも行っているが、販売キャリアであるドコモも実施することで、どのサイズが求められているのか根拠を示すことができる。
調査をしてみると、全員が主流の4インチ台のものを選ぶわけではなく、一定数が3インチ台、5インチ台を選ぶという。「4インチだけではニーズを満たしきれない。そのため、必ず大ぶり、小ぶりな端末が必要という根拠を示すことができました」(プロダクト部プロダクト企画担当デザインマネジメント担当主査の高間亮行氏)。
こうして選ばれたサイズには「時代のトレンドが見える」と宮沢氏は分析する。現在は「(横幅)65ミリ付近に一番の山(ニーズ)がある」(高間氏)そうだが、今後さらに大画面化が進むのか、それとも小さい画面が求められるようになるのか、これは調査を続けなければ分からない。例えば、「女性は小ぶりの端末を片手で使うという先入観があったが、意外に5.3インチのGALAXY Noteを使う女性ユーザーが多い」(高間氏)ということもあり、予測が難しいのが現実だ。
かつてフィーチャーフォンでは、「48ミリが女性に最適で、男性向けは53〜55ミリ」(高間氏)といわれていた時代があったが、スマホ化した現在はそれよりも横幅が広くなっている。当時はそれ以上の幅広い端末は「ありえないといわれていた」(高間氏)が、スマートフォンでは手の収まりより、画面の大きさが優先されるようになった。そのため定期的な調査で傾向を洗い出し、変化するユーザーニーズを見極めてなければならない。
ただし、この調査自体は「現時点でのニーズ」であり、半年後、1年後のニーズも掘り起こせるわけではない。今後のニーズを見極めるためにも、現在、最も多く求められている画面サイズだけを用意するのではなく、少し先を見越した、幅広いラインアップを展開して様子をみている。
また調査では、サイズと合わせてカラーバリエーションの関係も調べている。海外で発売されたGALAXY Noteは、ボディカラーがブラックで、スタイラスペンが付属することから「男性ビジネスマンのツール」というイメージが大多数だった。
そこで女性ユーザーを獲得するべく、あえてボディカラーをホワイトのみとし、オレンジのフリップカバーをセットにした。それだけでなく、似顔絵をプレゼントしたり、働く女性を対象とした活用方を提案したりするなど、プロモーション面も工夫することで女性層にアピール。これが功を奏し「予想よりはだいぶ売れています」と山崎氏は明かす。
GALAXY Noteのケースは、ディスプレイサイズの調査結果を軸に、これまでと違うカラーバリエーションを展開することで、あらたなユーザー層を広げることができた一例だ。ドコモは今後も、こうした一歩進んだ提案によるニーズの掘り起こしを進めていくとしている。
海外メーカーへの提案も
さて、こうしたサイズ調査は2010年から行われており、現時点で合計4回の調査が行われてきた。当初は2.6インチの小サイズから始めており、タブレットも含めて10インチクラスまでのモックアップを使い、求められるサイズを測っている。大画面サイズのモックアップは現在6ミリ刻みだが、これもニーズが増えれば3ミリ刻みにして細かく分析していく。
調査は国内だけでなく、欧州、米国、中国でも実施している。これは海外での動向を見て、ユーザーニーズの傾向が日本だけなのか海外でも共通しているのかを調べるためだ。
こうして得られた調査結果は、端末メーカーにも無償で提供しているという。また国内のメーカーだけでなく、海外のメーカーにも提供しており、各メーカーが調査結果を参考にして端末の開発が行えるようになっている。また調査結果を提供するだけでなく、具体的な商品の開発提案もドコモは行っているという。
ちなみに、好まれるディスプレイサイズは、欧米や日本、中国であまり差はないという。各市場ともおおむね4.5インチ付近に集約されるが、明確に差があるのはむしろカラーバリエーションなのだそうだ。特に海外は「恐らくiPhoneの影響だと思いますが、黒か白がスタンダード」(高間氏)だが、国内はフィーチャーフォン時代からカラーバリエーションが多く、黒・白以外の色も求められている。
一方、ディスプレイサイズのバリエーションが増えると、プラットフォームの「分断化」を招き、特にアプリ開発者にとってはさまざまな解像度へ対応しなければならないという問題を招いている。この点についてドコモは、「現在のデバイスは8〜9割がHDまたはフルワイドVGAという解像度に集約され、十分スケーリングで吸収できる」(後藤氏)というスタンス。むしろバリエーションの多さがAndroidの良さであり、「広がりすぎない程度のバリエーション」の中でさまざまなディスプレイをサイズの端末を提供していきたいという。
後藤氏は、「効率だけでいえば、最大公約数(が望むディスプレイサイズの端末)だけをそろえていればいいですが、それではつまらない」と話す。“王道”の1機種だけを出していればいいというわけではなく、特定のディスプレイサイズを求めるユーザーのためにも多様性を担保していくのが、ドコモのスマートフォン戦略の肝といえそうだ。
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