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IIJ、個人向け低価格SIMなどのモバイル事業を説明フルスペックサービスはもういらない

Nexus 5といったSIMロックフリーデバイスの登場と、1000円を切る“低価格低速SIM”の成功など、MVNO市場が拡大しつつある。その実情をIIJが説明した。

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イオンSIMで気づいた低価格低速SIMの可能性

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、11月18日にSIMビジネスに関連したモバイル市場の動向とIIJの取り組みを紹介する説明会を行った。2008年の参入当初は法人向けに限定していたIIJの事業は、2009年11月にNTTドコモとのL2接続を開始し、2012年2月からはLTEデータ通信サービスを個人向けに開始している。

 現在、IIJのモバイル事業は、法人向けモバイルデータ通信サービスと個人向けモバイルデータ通信サービス、そして、他業種から参入を考えている企業に向けたMVNO支援事業(MVNE)で構成している。MVNEについては、参入を希望する企業は、有力キャリアより同じ立場にあるIIJに相談しやすいといい、また、同じ立場のIIJだから適切な支援ができるとIIJ サービス戦略部長の神田恭治氏は説明する。

 神田氏は、IIJがモバイル事業を推進する理由として、固定回線であってもモバイルネットワークであっても、接続したその先にあるIPネットワークに関して、IIJは長年にわたって技術を蓄積しており、高速化などで必要なノウハウも有線と無線の垣根を越えて提供できることを挙げている。

 また、業界変動でこれまでの垂直分業から水平分業にシフトしたこともIIJの強みをだせる機会と述べ、個人向けの低価格低速SIMについても、ただキャリアのSIMより安いという意識ではなく、グローバル市場から入手したSIMロックフリーモデルなど、キャリアの契約に縛られないデバイスが増えている現状が、個人向けSIM市場を拡大するきっかけになっていると語った。

 神田氏は、IIJがモバイル事業でこれから重視するキーワードとして、「クラウドの拡大」「デバイスの低価格化」「SIMロックフリーデバイスの拡がり」「MVNOの拡がり」を挙げた。クラウドの拡大では、デバイスの先にあるクラウドサービスではなく、点在するデバイスも含めた全体でクラウドサービスと認識するほか、デバイスの低価格化では、以前あった中国製低価格Androidデバイスのブームはすぐに沈静化したが、Nexus 7やNexus 5などの“使い物になる”低価格Androidデバイスの登場で、再び注目する企業が増えているという。

IIJモバイル法人契約回線数の推移。2012年3月末から2013年3月末にかけて、それまでにないペースで契約数を増やしている(写真=左)。IIJのモバイル事業は法人、個人、そして、MVNO参入支援となっている(写真=中央)。IIJはモバイル事業で重視するのがクラウド、低価格デバイス、SIMロックフリーデバイス、MVNOそれぞれの拡大だ(写真=右)

海外メーカーのSIMモデル参入にMVNOは有力な手段

 IIJサービス戦略部 サービス企画1課長の青山直継氏は、MVNO市場の現状と動向を解説した上で、IIJが現在取り組んでいるMVNO事業を解説した。

 青山氏の説明によると、2012年度末におけるMVNO契約数は1037万回線数で、これは前年度末と比べて61.3パーセントの増加となっている。そのシェアは、日本通信、NTTコミュニケーションズ、IIJの順に多い。IIJの契約状況については、「IIJmio 高速モバイル/Dサービス」の四半期ごとの純増数を示し、2013年第1四半期は1万8700件、第2四半期が2万2000件と純増ペースが上がっていることを訴求している。

 IIJが長年取り組んでいる法人向け事業では、これまで大企業向けの直販が主力だったが、これまでカバーできなかった中小企業向けにもパートナー企業を協業することでIIJのサービスを紹介してもらう形式でビジネスを展開して事業規模の拡大を図っている。また、個人向け事業では、パートナーとの協業形態の違いによって、店頭取次やWeb取次、または、個人向け再販という形でIIJのSIMを販売している。店頭取次では、取り扱う量販店のブランドでパッケージを販売し、Web取次では、ASUSがNexus 7にIIJのプリペイドSIMを組み込んで販売するなど販売パートナーにあわせた方法をとっている。

MVNOのシェア順位ではなんだかんだいいながらも日本通信が強い(写真=左)。IIJのMVNO事業は最初法人限定だったが、イオンSIMの低価格低速SIMの成功で個人向けにも参入することになった(写真=中央)。ASUSはNexus 7 2013にIIJのプリペイドSIMをセットにしたパッケージを用意している。海外メーカーにとってMVNOとの連携はSIM対応モデルの参入障壁を下げる有力な手段となる(写真=右)

 青山氏は、2011年に登場した「イオンSIM」の成功を、日本に低価格低速SIMの可能性を示した転回点と位置づけ、機能限定でも低価格なら需要があると判断したIIJが個人向けSIM市場に参入するきっかけになったと述べている。ただ、SIM市場では技能の高いユーザーが主流となっており、このようなユーザーは、自分で比較検討して自分に適したSIMを見つけて移行するため、流動性が高いという側面があると青山氏は解説する。このような流動リスクを低減するためにも、“普通のユーザー”の拡大が課題という。

 現在、イオンSIMのなどの成功によって、多くのユーザーがキャリア以外のSIMがあることを知るようになり、あわせて、SIMロックフリーのスマートフォンやタブレットも増えてきた。ユーザーには、これまでのようなキャリアが提供するフルスペックのサービスでなく、自分の利用方法に合わせて必要な機能が使える低価格なSIMを提供し、スマートフォンの購入方法を契約期間やVoIPによる音声通話、ユーザーが選ぶ最小限のアプリを導入したSIMロックフリーのデバイスなどから自由に選ぶ時代になると青山氏は訴えている。

スキルの高いユーザーを中心に普及してきた低価格SIMをいかにして“普通のユーザー”に拡大するかがこれからの課題になる(写真=左)。イオンなどの大規模量販店で低価格SIMを販売したことは、普通のユーザーにたいする認知度を大きく向上させた(写真=中央)。低価格SIMが普通の存在となることで、スマートフォンの購入方法は自由になる、というのがIIJの持論だ(写真=右)

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