ソニー、ツートップからの乗り換え狙う「Xperia Z4」を発表━━十時体制で「ソネットと融合し、IoTデバイスを開発」か
4月20日に行われた「Xperia Z4」の発表会。発表会後に行われたソニーモバイルコミュニケーションズの十時社長との囲み取材の様子をお伝えする。
4月20日、ソニーモバイルコミュニケーションズは日本向け今夏モデルとなる「Xperia Z4」を発表した。キャリアの夏商戦向け発表会を待たずにメーカーが独自に発表会を実施するというのは、かなり異例のことといえる。やはり、サムスン電子「Galaxy S6/S6 edge」が4月23日に発売されるのを意識しているのだろう。発表会終了後、十時裕樹社長の囲みが行われた。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2015年4月25日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
━━ ソニーがMVNO向けにSIMロックフリー端末を発売する可能性はあるのか。
十時社長 グループ会社にソネットがあります。ソネットはご存じのようにMVNOもMVNEをやっておりまして、先般、Xperia端末を出した。今後、その延長線上で可能性はあると思いますけど、依然として通信事業者さんとのビジネスが大きいので、そこを最重要視していくのは変わりはないです
(★まさか3日後に楽天モバイルがXperia J1 Compactを発表するとは。延長線が短すぎ)
━━ 実際、イオンで発売となっているが、手応えはどうか。
十時社長 判断するにはまだちょっと早いかなと。MVNO、MVNEについては拡大していく可能性はあるのではないか。新規参入も多いと聞いていますので、増えていくのではないかと思います
(★ソネット縛りもないようなので、これからはいろんなMVNOから出て来そうな予感。特におサイフケータイ関連サービスを提供しているところからは引き合いが多そう)
━━ この夏はキャリア向け、MVNO向けを含めて、ポートフォリオはXperia Z4一本になっていくのか。
十時社長 それはまだ決めていませんけども、基本的にはXperia Z4を中心にやっていきます
(★日本市場はXperia Z4が中心になりそう)
━━ Xperia Z4の位置づけだが、まずはXperia Z3の置き換えを狙っていくのか。
十時社長 スマートフォン市場の浸透度を考えると、日本ではかなりシェアが高い。Zシリーズが発売されてから時間も経って、お客様のベースも広がっていますので、そういった方に新しいフラグシップを選んでいただきたいという思いが強いですね
(★日経新聞電子版のコラムに書いたけど、このタイミングで発表するのはやはり、2年前のツートップ戦略で購入したユーザーを意識してのことだろうな)
━━ 販売ランキング上位はiPhoneだが、そこを食っていくつもりはあるか。
十時社長 私どもの商品の訴求力を高めて、それをきちんとお客様に届けていく。そこに集中していくのが、いまの考え
(★iPhoneとの直接対決は避けているような言い回しだな)
━━ 今後、スマホにおいてどのようにワクワク感を出していくのか。
十時社長 スマートフォン自体は基本的にはみなさま、かなりの方がお持ちになって、使われている。ちょっと将来の話をすると、スマートフォンにつながるようなもの、スマートウェア、スマートウォッチ、IoTとして語られますけども、ガジェットの類い、スマートシングスと言いますか、そういうものが非常に広がっていくと私どもは考えています。スマートフォンの強化と共に、新しいカテゴリーの商品も開発していこうじゃないかという議論を中でしている
(★このあたりはソニーであれば実現しそうなんだけど、何年経っても上手くいっていない感じ。他の製品が分社化されるとさらに実現が難しそうな気もするが)
━━ Xperia Z4のグローバル展開はどのような方向性なのか。
十時社長 Xperia Z4の海外展開については、一部の地域で検討していますけど、また決まってからお話しした方が良いと思います。それまでちょっとお待ちいただければと思います
(★海外ではXperia Z3が出て日が浅いところもあるし、すぐには出せそうにはない感じもあるけど)
━━ これまでは、発表した地域からグローバル展開をしているが、今回はそうした言い方はできないのか。
十時社長 海外のどこでやるというのが決まったら、そういうお話をさせていただきたい。今、きちんと決めているのは夏から日本でやるということですので、そこをお話しさせていただいたと言うことですね
(★今回のXperia Z4は日本市場専用という位置づけに近いのかも知れない)
━━ 今回、サムスン電子がGalaxy S6、S6 edgeでデザインを変え、プロモーションを強化するなど攻めている一方、ソニーは守りに入っているように見えるが、勝算はあるか。
十時社長 我々としてはXperia Z4はZシリーズのひとつの完成形ということを今回、お話ししましたけど、基本的なことをきちんと抑えて、進化させていくと言うことで、ひとつの完成形ということを申し上げたのですけども、もちろん、今回のフラグシップで安住するということはない。競争環境が厳しいことも、コンペティターが強いことも、自覚していますので、商品力を高めて、また新しいものを出すということは休まずやっていきたい
(★これ自分の質問。Xperia Z4について、十時社長がやたらと「完成形」と言っているので、Zシリーズの進化は行き着くところまで到達しており、次のモデルはがらりとフルモデルチェンジしそうな雰囲気だな)
━━ フラグシップは年1回という考えでいいのか。
十時社長 「基本的には年1回で組み立てて行きたいと思っていますけども、地域によって通信事業者様との関係、求められるものというのもありますから、それに対応する形でバランスをとってやっていかなくてはいけない
(★サムスンみたいにフラグシップとペンタイプというような性格の異なる商品をそれぞれ年1回ずつというのが無難なような気がするが)
━━ アップル、サムスン、中国メーカーなどがいるなかで、性能勝負で差別化するのは難しいと考えていないのか。
十時社長 我々としては出発点は商品力だと思う。これから先もどうやって、ユニークなフィーチャーを入れて、商品力を高めていくのが一番の競争力の源泉になると思う。そこが最大のチャレンジだし、最重要課題だと思っていますので、そこに集中していく
(★Xperiaの方向性は間違っていないと思うけど。毎年2回、マイナーチェンジだけしかしなくて、ワクワク感がないように見えるのが残念なところ)
━━ 商品力というのはスマホ単体なのか、周辺機器も含めたものなのか。
十時社長 それは両方だと思う。スマートフォン単体の商品力も上げていかないといけないですし、それにつながる世界観を提供しなくてはいけないというのも非常に重要な話だと思います
(★スマートバンドとかももうちょっと質感が良くて格好良ければいいんだけど)
━━ 2014年度の中期経営計画では、テレビとスマホは投資をしないと言っている。そんななかでどのように商品力を高めていくのか。
十時社長 一般論で言えば、経営には制約要因がいくつかあります。ヒト、モノ、カネに代表されるように、経営資源をどのように自分たちなりに有効に使っていくか。そのなかで自分たちのポジションをどのように作っていくのかは重要な課題だと認識している。
投資をしないと言っているわけではなくて、投資も慎重にやると理解していますので、きちんと可能性が高いものであれば、投資することもできると考えている。我々としてはそこをやっていきたいと思う
━━ 経費の削減、リストラは順調に進んでいるのか。
十時社長 トランスフォーメーションについては、こういう計画でやらせていただきたいというのをご案内していますけども、それについては順調に進捗しております
━━ 海外の開発責任者を日本に常駐させたりしているが、その狙いは。
十時社長 効率面で組織が必ずしも生かされていなかったところを、少し整理整頓して、効率を上げるようにしたのが今回の狙いですね
━━ ソニーモバイルはどういったスマホメーカーになろうとしているのか。
十時社長 我々はソニーモバイルコミュニケーションズ、ということで、ソニーモバイルプロダクツと言う名前ではありませんので、コミュニケーションが着いている意味をもう一回、深く考えようと言っています。我々が提供するのはスマートフォンであり、大事なのですが、それに限らず、新しいコミュニケーション体験とか、そういったことを新しいお客さんにご提供するのが、我々にとって最重要。プロダクトカテゴリーをスマートフォンだけに閉じないというこを考えていきたいですし、サービス的なことをやるというのも考えていきたい
(★この言葉は結構、深い。そうだよ、やっぱり新しいコミュニケーションをつくらないと。そう言っている割には、Xperiaは薄さがどうだとか、画質がどうだとかスペックばかりを訴求しているんだよなぁ)
━━ 商品展開の課題はなにか。WindowsPhoneは検討していないのか。
十時社長 課題でいえば、プロダクトポートフォリオの整流化といいますか、それはもう少しやらないといけない。プラットフォームに関しては、この場ではお話しするのは難しいのでご容赦いただきたい
━━ 海外から格安スマホが入ってきているが、危機感は感じていないのか。
十時社長 それはひとつの市場だと思う。ただ、通信技術が2Gから3G、4G、いまは2020年を睨んで5Gとなる。そういった通信のインフラストラクチャの進化を、具体的なお客様のリッチな体験につなげる意味で、新しいデバイスは必ず必要になる。
そういうインフラストラクチャの発展も睨んで、我々のデバイスを通じて、新しい体験をお届けするということを念頭に置いてものづくりを進めていきたい
(★格安スマホが入ってきているからと言って、キャリア向けからすれば台数は少ないだろうし、国内メーカーから見れば「とりあえずやっておく」という感じなんだろうな)
■取材を終えて
Xperia Z4の発表会は、何とも力が入っていないというか、とても静かだったという印象しか残っていない。
Xperia Z4は十時社長が就任する前から開発していたのだろうから、十時社長にとっては「消化試合」みたいな発表会だったんだろうな。十時社長の手腕が問われるのはこの先なんだろう。
一部報道ではソネットと社屋が一緒になり関係が強化されるという話もある。十時社長はソネットでの経験もあるし、実現すればかなり面白いことになりそうな気がする。
MWCで十時社長に会ったとき「ソネットにMVNO向け端末を提供するのは、将来的にはIoTデバイスの可能性を模索したいから」と話していただけに、今回の囲みとも通じる部分がある。
「ソネットを生かしつつ、MVNOのネットワークを使って、IoTデバイスを出す」というのが十時社長の当面の戦略なのだろう。
関連記事
- スペックで比較――「Xperia Z4」はココが進化した
ソニーモバイルのフラッグシップスマートフォンの最新作「Xperia Z4」が姿を現した。どこがどのように進化したのか、Xperia Zシリーズ5世代を比較してみよう。 - 「Xperia Z4」を写真で速攻チェック!――Z3との違いや新機能は?
ソニーモバイルの最新フラッグシップスマートフォン「Xperia Z4」が発表された。Xperia Z3との違いも含め、外観とソフトウェアの見どころをチェックしていこう。【写真追加】 - 「Xperia Z4」の卓上ホルダは縦置きで、マグネット端子は廃止に
Xperia Z4のハードウェア上の大きな変更点が、キャップレス防水になったこと。これに伴い、卓上ホルダの使い方も変更された。 - 外観や操作感をチェック――動画で見る「Xperia Z4」
さらに洗練されたボディと、Android 5.0の基本UIを動画で見ていこう。 - 「Xperia Z4」の「料理モード」は、どれだけおいしそうに撮れるのか
プレミアムおまかせオートでようやく「料理」のモードが追加されたXperia Z4。その実力やいかに?
関連リンク
© DWANGO Co., Ltd.