“ランチタイムの鬼門”を打ち破れるか?――mineo「プレミアムコース」の狙い
ケイ・オプティコムがmineoユーザー向けに、快適な速度で通信ができる「プレミアムコース」を9月に開始する。最適な速度や料金を決めるべく、400人のモニターにテストを実施。ランチタイムでも快適に通信できるようにする。
ランチタイムでも快適に通信したい――。そんな声に応えるべく、ケイ・オプティコムがモバイル通信サービス「mineo」にて、優先通信オプションの「プレミアムコース」を2016年9月に開始する。
プレミアムコースでは、専用の帯域を確保することで、混雑しやすい時間帯を含め、常に快適な通信環境を提供する。MVNOは、NTTドコモやKDDIなどの大手キャリアから「100Mbps」「1Gbps」といった単位で帯域を借りている。借りた帯域は各サービスの契約者で共有するため、例えば100Mbpsの帯域で100人が一斉に通信をすると、各ユーザー1Mbpsしか速度が出なくなる。12時30分頃のランチタイムに速度が遅くなるのは、通信をするユーザーが増えるためだ。
プレミアムコースでは、通常とは別の帯域を使用するため、時間帯に左右されず快適に通信できるわけだ。では、どれだけの帯域を確保するのだろうか。その判断をするために、ケイ・オプティコムはコミュニティーサイト「マイネ王」で6月1日と7月1日からモニターを募集し、auプランとドコモプランで100人ずつのトライアルを2回実施する。テスト期間はそれぞれ1カ月になる予定。
トライアルを受けた計400人にアンケートを取り、そこで挙がった意見をもとに、2016年9月に正式サービスを導入する。このトライアルでは通信の制限を一切設けず、モニターは快適な環境で通信可能になる。どの程度の帯域を確保するかは、トライアルでの通信量を見て判断する。
ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの津田和佳氏は「100Mbpsか50Mbpsか、(帯域の)幅によって人数を厳選していく。(本サービスも)抽選になり、特急券のような事前予約制になる」と見通しを話す。利用期間は「1カ月が基本だが、日別も検討している」(同氏)とのこと。
料金についても未定だが、「MNO(ドコモやKDDI)ほど高い設定にはしない」と津田氏。また、プレミアムコースで毎月利用できる容量は、もともとmineoで契約しているプランの容量にひもづくため、例えば3GBプランの契約者は、プレミアムコースでも高速通信は毎月3GBしか使えない。プレミアムコースとチャージ(容量追加)の併用については「検討中」とのこと。
津田氏は「どんどん使いたい人は大きいプランに入る」と語っていたが、ケイ・オプティコムとしては、プレミアムコースの利用者にはたくさん通信してもらい、5GBや10GBといった容量の大きなプランに移行してほしいという思惑もあるのだろう。専用帯域の確保に掛かるコストの回収はもちろんだが、ARPU(1人あたりの売上)を伸ばすための施策と見ることもできそうだ。
そもそも何Mbps出れば“快適”といえるのか? 津田氏は「その帯域に何人ぐらいいるか、昼間の時間帯をどれだけ優先させるかなどを、ユーザーさんの感覚を聞きながら決めたい。(快適な速度の)指標は持っているが、サービスとして成り立つかはこれから議論していきたい」と話す。また、快適さは人によって感覚や基準が異なるので、モニター400人の意見を取り入れながら決めていく。
「格安SIMは安いけれど通信速度が遅い」というイメージを抱いている人は多いだろうが、MVNOの多くは、契約数の増加に合わせて帯域を増強しており、時間帯によっては大手キャリアと遜色のない速度が出ることもある。ただし12時30分前後の昼間はいまだに鬼門で、「うちは品質にもこだわっている」とアピールする事業者のサービスでも、昼は下り1Mbps前後しか出ないことが多い(連載の通信速度定点観測を参照)。プレミアムコースは、この鬼門を打ち破るサービスとして期待が集まる。
mineoの契約数は30万に、新機種は8月以降に発表
5月31日の発表会では、mineoの近況や今後の展開なども説明された。契約数は、2015年5月の7万件から順調に増加しており、2016年5月時点で30万件に達した。内訳は、ドコモプランが12万、auプランが18万。2016年度の契約数も30万を目指し、「早期の100万契約達成が目標」(津田氏)とした。
mineoを取り扱う店舗も拡充する。ヨドバシカメラ、ビックカメラ、コジマ、ソフマップ、上新電機の計373店舗で販売し、今後も順次拡大する。ヨドバシカメラでは、梅田、京都、秋葉原、横浜、川崎、新宿西口の6店舗で即日のSIM受け渡しを可能にする。さらに、グランフロント大阪に続くアンテナショップを、2017年初頭に東京の渋谷にオープンする予定。
今回、新機種の発表はなかったが、「8月から秋にかけて新機種を発表したい。現在社内でスケジュールやシステム面を調整中」(津田氏)とのこと。
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