SIMフリー市場はどう攻める? 未来のGalaxyはどうなる?――サムスン堤CEOに聞く(3/3 ページ)
2016年のフラグシップモデル「Galaxy S7 edge」が好調に売れているサムスン電子。同社はVR、カメラ、ウェアラブルなどスマホの周辺領域も拡充している。スマートフォンは今後、どのように進化するのか。サムスン電子ジャパンの堤浩幸に話を聞いた。
SIMフリー端末やNoteの投入は?
―― 日本のSIMロックフリー市場をどう見ていますか。2015年は様子を見るとおっしゃっていましたが、2016年になって変わったことはありますか。
堤氏 きちんとしたタイミング、ニーズが高いタイミングで、しかるべきアクションは取っていきたいと思っています。SIMフリースマホは当初、やたらと安い端末が出てきました。でも、今は安い端末から高い端末に移行しています。「どうせ持つならいい物を持ちたい」という要求に変わってきているんですよ。
あとは、単に(通信が)つながればいいという人もいれば、もう少し付加サービスが欲しいという人もいらっしゃる。そこの見極めをきちんとしないと、お客さまの要求にマッチしない可能性もあります。お客さまの要求にマッチして、SIMフリーによって新しいサービス形態が出てくるなら、喜んで出していきたい。やらないのではなくて、きちんと見極めて、ベストなタイミングで考えていきます。
―― Galaxy S7 edgeをSIMフリー化して売るのは簡単なことではない?
堤氏 Galaxy S7 edgeは非常に価値が高いと思っています。これをSIMフリーのマーケットに持っていって、どのぐらいの人から評価いただけるかは、まだギャップがあるのではないかと思いますね。
―― 「Galaxy A8」のような、ミッドレンジよりも少し上のスペックを持つSIMフリースマホを出せば、今の市場にもマッチすると個人的には思います。
堤氏 A8はauさん専用で出しています。auさんをサポートするのが今のミッション(の1つ)だと思っていますので。ただ、あれで大画面化(への要求)が読めたというのも事実です。
―― 大画面化といえば、Noteシリーズがどうなるのかが気になります。2015年はNote 5の日本投入が見送られました。
堤氏 去年出さなかったことで、いろいろなお叱りを受けました。今年出すかどうかは何とも言えませんが、皆さんが「ああすごい」「なるほど」と納得する形で必ず回答申し上げます。200%納得するような形です。
―― Noteではないカテゴリーになる可能性も?
堤氏 いや、Noteの市場はあると思います。違うカテゴリーというのは、また次のレベルだと思います。
人がモノに支配されてはいけない
―― サムスンは「Gear S2」をはじめウェアラブル製品も開発していますが、ウェアラブルはどのような方向に進んでいくとお考えですか、
堤氏 ウェアラブルは、IoTに向けての1つの提言ですが、今のままの姿で行くはずはないと思います。AI機能を入れるとか、ビッグデータのやり取りを入れるとか……。ヘルシー志向やビューティー志向も強まっていくので、それらにマッチングする形、時計型じゃないウェアラブルも出てくるでしょう。そういったところも考えているのでご期待いただきたいですね。
―― シャープやASUSなど、最近はスマホメーカーがロボットも作っていますが、そのあたりの市場はどのように見ていますか。
堤氏 スマホの進化形は「マジカルデバイス」だと言っていますが、そういった(ロボットなどの)市場に必ず移行するでしょう。ポイントは人が便利だと思うものじゃないとダメ。モノに人が支配されると困るんです。下手をするとそういう世界になってしまうので、それだけは作ってはいけないと思います。
―― その中でGalaxyというブランドをどのように育てていきたいとお考えですか。
堤氏 Galaxyをマジカルデバイスにするのが私のミッションです。スマホの進化形だから形も違ってくるかもしれない。皆さんが楽しめる世界にするのが私の夢……いや、実現できる近未来のソリューションだと思っています。
取材を終えて:新たな市場をどこまで創出できるか
総務省が「タスクフォース」の一環で推し進めている「実質0円販売の停止」「キャッシュバックの停止」によって、端末メーカーには逆風が吹いている。実際、ドコモは年間の端末投入サイクルを減らすことも明かしている。そんな中でサムスンが早くから周辺領域に着目し、新たな市場を創出しようとする姿勢には好感が持てる。
満を持して投入したGalaxy S7 edgeの評価も上々で、かつてドコモが「GALAXY S4」で実施した“ツートップ”の優遇施策なしでも存在感を出せていると感じる。一方、サムスンはAシリーズを始め、ミッドレンジのスマホも多数手掛けており、SIMロックフリー端末の売れ筋も3万円台のモデルが中心だ。それだけに、SIMロックフリー市場では商機を逃している気がしてならない。
一時は「サムスンが日本でスマホ事業から撤退する」といった臆測も出たが、今回堤氏がGalaxyの未来を見据えている話を聞いて「それはない」とあらためて確信した。同氏の言う「マジカルデバイス」がどんなモノになるのか、楽しみだ。
関連記事
- Galaxy S7/S7 edgeは何が変わったのか? 防水/microSDスロット復活の経緯は?
Samsungの「Galaxy S7」と「Galaxy S7 edge」は、同社の最新技術を詰め込んだフラッグシップスマホ。S6シリーズから正統進化した2モデルだが、何が変わったのか? 韓国のSamsung本社で企画担当者に疑問をぶつけた。 - 高速AFで明るく撮れる――「世界最強」を目指したGalaxy S7/S7 edgeのカメラ
Galaxy S7/S7 edgeで大きく進化した機能の1つが「カメラ」だが、従来モデルから何が変わったのか? その中核をなす「デュアルピクセルセンサー」と「明るいレンズ」を中心に、Samsung Electronicsの担当者に話を聞いた。 - 防水対応の5.5型「Galaxy S7 edge」が日本でも登場――KDDIが5月19日に発売
KDDIが「Galaxy S7 edge SCV33」を発売する。より精密にAFができる「デュアルピクセルセンサー」をアウトカメラに採用。LTEは「3CA」により下り最大370Mbpsまで高速化した。期間中に予約をしたユーザーに「Gear VR」(約1万5000円)をプレゼントする特定も用意する。 - ドコモも「Galaxy S7 edge」を発売、「Gear VR」がもらえる予約特典も
ドコモが「Galaxy S7 edge」を5月19日に発売する。左右がカーブしたデュアルエッジスクリーンに5.5型のWQHD有機ELや、高速でAFができる「デュアルピクセルセンサー」を搭載。予約購入すると「Gear VR」がもらえる特典も用意する。 - S7 edgeを体験できる「Galaxy Studio」現地レポート ダチョウ倶楽部もVRに驚き
サムスン電子のフラッグシップスマートフォン「Gakaxy S7 edge」を体験できるイベントが、東京駅前のKITTEで開催中だ。開催初日には、ダチョウ倶楽部の面々が駆けつけ、S7 edgeと「Gear VR」を“体験”した。 - サムスン、グランフロント大阪にS7 edgeやGear VRを体験できる「Galaxy Studio」を期間限定オープン
「Gakaxy S7 edge」や「Gear VR」を体験できるエンターテインメントパークの第2弾が、大阪駅前のグランフロント大阪に出現する。Gear VRの“本気”を体感できる4D VR Theaterなど、見どころはたくさんある。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.