「スピードテスト」にどれだけ意味があるのか?:MVNOの深イイ話(2/3 ページ)
MVNOの実力を測る1つの指標に「スピードテスト」があります。ただ、このスピードテストは正しいタイミング・環境で実行しないと、有意義な結果にならない場合があります。今回はスピードテストに影響を与える要因と、よりよい測定の仕方を考えていきます。
MVNOの実力を測るにはどうすればよい?
POIの混雑を比較するためにはどうすればよいのでしょうか。
最も理想的な方法は、電波状況や基地局の混雑による速度低下が全く発生しない状態でスピードテストを行うことです。しかし、実際の街中ではそのような状況を作り出すことはできません。
次善の策としては、電波状況や基地局の混雑がボトルネックにならない程度に環境の良い場所で、測定の間に周辺の状況ができるだけ変わらないように配慮する必要があるでしょう。電波状況も基地局の混雑も刻一刻と変化していますので、同じ場所にずっといたとしても、MVNO A社のスピードテストを行ったときと、B社のスピードテストを行ったときで状況が変わってしまうかもしれません。できるだけそのような変化が起きなさそうな場所を探す必要があるのです。
また、測定対象であるPOIの混雑の特性を把握しておくことも重要です。
よく言われていることですが、日本のスマートフォンの使われ方は時間に大きな偏りがあり、特に昼の12時〜13時に顕著なピークがあります。例えば、IIJmioの利用状況を詳しく見てみると、ピークが始まるのは12時3分あたりであり、12時ちょうどではまだそれほどの利用はありません。つまり同じ「12時台」であっても、12時0分に調査するのと12時5分に調査するのでは計測結果に大きな違いが出るのです。
もし、MVNOA社、B社…と順番に測定をする場合、A社が12時0分、B社が12時5分に測定をしたのでは公平な比較というのは難しいだろうと考えられます。予備調査を十分に行い、ある程度混雑状況が安定していると思われる時間帯に、素早く調査を行うとよいでしょう。
ネットで見かけるスピードテスト
冒頭で言及した通り、ネット上にはさまざまなスピードテストのレポートが公開されています。典型的な例をいくつか取り上げてみましょう。
「住宅地ではMVNO A社が、繁華街ではMVNO B社が良い結果が出た」
MVNOによって得意とするエリアが違うのではないか? という仮説を立てて調査される方がいらっしゃいます。調査の結果から各社の違いを読み取ろうとされているようですが、この考察にはあまり意味がないと思われます。先に紹介した通り、MVNOの実力を示すPOIの混雑には地域性はありません、ですので、住宅地と繁華街でそれぞれ測定をすることに意義はないのです。仮に測定結果に差が出たとしても、それは電波状況や基地局の混雑などキャリア設備起因の速度低下による影響を排除しきれなかったためだと考えられます。
「山手線の主要駅で複数MVNOのスピードテストをしてみた」
スマホの利用者が多いと思われる駅周辺でのテストはリアリティーのある調査だと思いがちですが、これも「MVNO同士を比較する」という点ではあまり良い方法とはいえません。
山手線の駅の周辺は非常に人が多いため、そもそも電波状況が悪く、基地局も混雑していることが予測されます。これらが原因で速度低下が発生してしまうと、MVNOの実力であるPOIの混雑による速度低下が見えにくくなってしまいます。
さらに、混雑する駅周辺では高い通信需要を満たすために多数の基地局が設置されています。同じ場所で同時に複数のスマートフォンを使っていたとしても、異なる基地局と通信していることがあるのです。通信する基地局が異なれば電波状況も基地局の混雑状況も変わってしまいますので、比較測定の前提条件を満たせていません。
さらに、大量の乗客を乗せた電車が不定期に駅のホームに入ってきます。乗客の方々は当然スマートフォンや携帯電話をお持ちですので、電車がホームに入ってくるだけで基地局の混雑状況が激変することが考えられます。山手線駅のように頻繁に電車が発着する駅であれば、常時このような急変が発生しているでしょう。
このような場所では周辺状況があまりに不安定なので、POIの混雑を測定するという点では意義のある結果を得るのは極めて困難だと考えられます。
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