「スピードテスト」にどれだけ意味があるのか?:MVNOの深イイ話(3/3 ページ)
MVNOの実力を測る1つの指標に「スピードテスト」があります。ただ、このスピードテストは正しいタイミング・環境で実行しないと、有意義な結果にならない場合があります。今回はスピードテストに影響を与える要因と、よりよい測定の仕方を考えていきます。
スピードテストのベストプラクティス?
ここまで紹介した通り、MVNOの実力をスピードテストから推測するのはとても困難です。それを承知の上で、できるだけ有意義な結果を得るためにはどのような点に注意すれば良いか、いくつかアイデアを紹介したいと思います。
人の移動が少ない住宅地でテストする
繁華街や駅前は人が多くて基地局が混雑しているだけでなく、人の移動によって時々刻々と状況が変化します。そのような場所を避けて、人の移動が少ないところを測定地点にするのが良いでしょう。
ただし、ドコモは都市近郊の住宅地であっても、場所によっては800MHz帯(Band 19)が主に使われている場合があります。国内で発売されているSIMロックフリースマートフォンの中にはBand 19に対応していないものがあり、そのような機種を使った場合は電波の対応が原因で十分な速度が出ないことがあります。スピードテストに使用するスマートフォンにも注意が必要です。
少ない回数の測定結果で評価するのではなく、1日の変化の傾向を評価する
基地局の混雑や電波状況は刻一刻と変化しているため、同じ場所で連続して数回の測定を行ったとしても、結果に大きな差が出ることがあります。数回の測定結果をもって数字の大きい、小さいを比較するのは難しいように感じます。
そこで、以前筆者が試した1つの方法を紹介します。
これは、Androidスマートフォンの実機に「RBB TODAY SPEEDTEST」アプリをインストールし、15分に1回スピードテストを実行、それを3日間繰り返したものです。測定結果をグラフにプロットすることで、通信速度の変化の傾向を観察することができます。
定期的に調査する
これも以前に別の記事で紹介したことですが、各MVNOは利用者の増加に合わせて設備の増強を行っています。
会員素の増加に合わせて設備の増強も逐次行うことができればよいのですが、実際には月に数回〜数カ月に1度のタイミングでしか増強は行えません。そのため、増強直前は利用者数に対する設備が不足気味になり、逆に増強直後は設備が過剰気味になります。設備が不足気味の時は通信速度が遅くなりますし、過剰なタイミングでは速めになります。
MVNOによって設備の増強タイミングはばらばらですので、同じ日に調査を行ったとしても、A社は増強直前、B社は増強直後という可能性があります。
ですので、特定の日に測定した結果だけで評価するのではなく、定期的に調査を行い、そのMVNOが適切なタイミングで設備の増強を行っているかを評価することが重要だろうと考えています。
ここまでいくつかのアイデアを紹介しましたが、これらは1つの考え方に過ぎません。また、ここまでやったとしても、それを持ってMVNOの実力が間違いなく測れるというわけではありません。
スピードテストは明確な数値が表示されるため、一見科学的な評価をしているようにみえます。しかし、実際にはさまざまな外乱の影響を排除することは困難で、科学的な評価と言うには不十分な結果しか得られません。それを理解した上で、あくまで「1つの楽しみ」程度の気持ちでスピードテストに付き合うのが良いのではないかと考えています。
著者プロフィール
堂前清隆
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ) 広報部 技術広報担当課長
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
- Twitterアカウント @IIJ_doumae
- IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」 http://techlog.iij.ad.jp/
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