Androidに刷新しておサイフケータイにも対応 「NuAns NEO [Reloaded]」投入の狙いを読み解く:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
トリニティが「NuAns NEO」の後継機である「NuAns NEO [Reloaded]」を発表。OSをAndroidに一新し、防水やおサイフケータイにも対応する。この新モデルを投入する狙いはどこにあるのだろうか?
おサイフケータイに対応し、他のSIMロックフリー端末との差別化も図る
もう1つ、NuAns NEO [Reloaded]を語るうえで忘れてはいけないのが、おサイフケータイだ。冒頭で述べたように、おサイフケータイはSIMロックフリースマートフォンの中にも採用例がある一方で、3大SIMロックフリーメーカーのASUS、Huawei、FREETELは、まだ(SIMロックフリーでは)搭載端末を出せていない。
ことSIMロックフリー端末のおサイフケータイに関しては、大手キャリアでの採用実績が多い、富士通やシャープが先行している状況だ。富士通の「arrows M02」「arrows M03」のように、売れ行きがいい端末もあるが、全体として見ると、まだまだ対応端末は少数派といえるだろう。
対応するサービスは未定だが、星川氏は「個別のサービスについては、現在、コンテンツプロバイダーと調整している」としながらも、「基本的にはいわゆるおサイフケータイで使えるサービスは、全部使えるようにしていきたい」と語った。これを素直に受け取るなら、モバイルSuicaやiD、楽天Edyなどに完全対応するという意味になる。星川氏は明言を避けていたが、モバイルSuicaに対応するために、JR東日本の試験も行うと見ていいだろう。
おサイフケータイへの対応にあたっては、FeliCaネットワークスの協力を仰いだ。FeliCaネットワークス側でも、おサイフケータイを広げるため、SIMロックフリー端末への対応を進めていた。ソニーモバイルの「Xperia J1 Compact」を皮切りに、富士通やシャープの端末が続々とおサイフケータイに対応したのは、そのためだ。同社のプラットフォーム推進部 相澤浩氏は「現在伸びているSIMフリー市場でも、FeliCa端末を拡充していきたい」と意気込みを語っている。
目標は2020年で8000万台にFeliCaを搭載すること。ユーザー数も、同年までに2000万へと拡大させる計画を立てている。2017年は端末数とユーザー数がそれぞれ5000万台、1000万人。3年間で3000万台の端末を増やし、ユーザー数を倍増させるには、市場の拡大が急速なSIMフリースマートフォン市場への対応が欠かせないと判断しているようだ。その相澤氏も、「通信キャリアには納入していないメーカーとしては初のおサイフケータイ対応で、それだけでも驚くべきことだが、これまでに例がないほど開発スピードが速い」とトリニティのフットワークの軽さを称賛する。
星川氏が、「Suica、PASMOを使っていた人が、明日から切符を小銭で買ってくださいと言われるのはハードルが高いが、おサイフケータイからそうでないものに行くのも同じ」と語っていたように、おサイフケータイは、一度使い始めると、元の生活には戻りづらい、生活に密着した機能だ。現在、同機能を利用している1000万人をターゲットにできることは、販売面でのインパクトも大きいだろう。
とはいえ、SIMロックフリー市場はまだまだ拡大途上で、2016年からようやくハイエンドモデルも数が出始めるようになってきたところだ。キャリア経由の販売が大半を占める日本市場で、数十万台規模の大ヒットを飛ばせる可能性は残念ながら低いだろう。星川氏も2017年のSIMロックフリースマートフォン市場を300万台から350万台と推定したうえで、「そのうちの5%がハイエンド端末だが、アクティブな端末は4、5台。そのうちの1台に入れば、それなりの数を想像できる」と目標を語っていたが、これを最大で見積もっても3〜4万台といった数になる。
逆の見方をすれば、わずか数万の規模でも、ここまでの端末を作ることができるということだ。見方もできる。しかも、トリニティのように小規模な日本メーカーが、だ。もちろん、これは日本市場に限った話。同社は2月27日から開催されるMobile World Congressにも、NuAns NEO [Reloaded]を出展する予定で、ここで商談がまとまれば、海外市場への進出も実現できるかもしれない。Androidに対応し、対応バンドも増えたことで、以前よりもその可能性はずっと高くなっているはずだ。
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