テクノロジーと温かさを融合 新生「AQUOS R」に込めた思い:開発陣に聞く「AQUOS R」(前編)(2/2 ページ)
シャープの新スマートフォン「AQUOS R」が7月7日に発売される。ブランドを統一しただけでなく、中身もフルリニューアルを果たした。AQUOS Rになって何が変わったのか? 開発陣に話を聞いた。
倍速駆動だけでなく応答速度も重要
シャープのスマートフォンといえば「IGZO液晶ディスプレイ」が特徴だ。AQUOS RのディスプレイももちろんIGZOだが、ディスプレイ開発を担当したIoT通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 係長の佐藤雄一氏は、「AQUOS RにはIGZO史上最高のディスプレイモジュールを採用しました」と自信を見せる。
まず解像度が、従来のフルHD(1080×1920ピクセル)からWQHD(1440×2560ピクセル)に向上して、より精細な表示が可能になった。サイズは5.3型。そして、通常の液晶の2倍となる、1秒間に最大120回の画像を更新する120Hz駆動の「ハイスピードIGZO」を採用している。
ハイスピードIGZO自体は2016年夏のハイエンドAQUOSにも採用されていたが、佐藤氏は「倍速にしても、必ずしもレスポンスがいいわけではありません」と話す。もう1つ重要なのが「応答速度」で、AQUOS Rでは2016年夏モデルと比べて応答速度を1.5倍上げることに成功。指で操作をしてから、よりスピーディーに反応するようになった。
シャープの検証によると、これまでの120Hz駆動だと、一度の描画にかける時間が約9〜12ms(0.009〜0.012秒)だったが、AQUOS Rでは約6ms(0.006秒)にまで向上したという。「応答が遅いと、液晶の素材がついていけず、残像が見えます。AQUOS Rではさらに残像感が少ない液晶になりました」(佐藤氏)
応答速度の向上は、画素構造や液晶の材料など、ディスプレイパネルの設計を見直したことで実現した。これは「ディスプレイ部門を持っているシャープだからこそできることです」と佐藤氏は胸を張る。
より広色域になる「リッチカラーテクノロジーモバイル」も採用。これは液晶テレビ「AQUOS」の技術をモバイル向けに最適化したものだ。「近く(スマホ)と遠く(テレビ)から見るのでは、若干味付けが変わります。(シャープの)テレビ画質のプロフェッショナルのチェックを通して調整をしています」(佐藤氏)
HDR10規格に準拠した、4K HDR対応動画コンテンツの再生も可能になった。「Amazonプライムビデオ」が配信するHDR対応コンテンツにも対応させるべく、Amazonの認証も受けている。ただしシャープとAmazonで画質の基準が異なる部分があるため、「Amazon側といろいろやりとりをして、パラメーターを調整した」(佐藤氏)。「Amazonさんは、どちらかというとナチュラルな画質を好む傾向にありました。シアトルまで行って調整をして、折り合いを付けるのが大変でした」(同氏)
自分で撮影した動画を疑似的にHDR画質に変換できる設定も用意した。「映像データから、どういった色と輝度の広げ方ができるかを判断して拡張しています」(佐藤氏)
リアリティーを追求した広角カメラ
カメラ設計も一新した。約2260万画素のアウトカメラには焦点距離が22mm相当、約1630万画素のインカメラには23mm相当(いずれも35mmフィルム換算)の広角レンズを採用した(2016年夏モデルはアウトカメラが26mm、インカメラが24mm)。デュアルカメラや背景ボカシなどがスマホカメラのトレンドになりつつある中、なぜ「広角カメラ」にこだわったのか。
フィーチャーフォンの頃からシャープのカメラを開発してきたという、IoT通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 係長の藤澤傑謙氏は、「リアリティーを追求するため」と話す。
しかし開発当初、藤澤氏は「そもそもカメラのリアリティーとは何か?」の答えをなかなか出せず、かなり悩んだという。その悩みを解決するきっかけになったのが、厳島神社を観光していた外国人の家族が、スマホのカメラで写真を撮ろうとしていたシーン。鳥居を背景に撮影しようとしていたが、鳥居が大きすぎて、なかなか全体をカメラに収めることができない。最適な構図を探して動き回っていた様子が、たまたまそこに居合わせた藤澤氏の心に残った。
「スマホのカメラは、ポケットから取り出して簡単に撮れるものですが、目で見た印象と、実際に撮った写真にギャップがあることが分かりました。スマホと人間が見ている画角が全然違うため、広角でいこうとなりました」と藤澤氏は振り返る。「広角レンズはその特性上、近くは大きく、周辺は小さく写すので、遠近感が強調され、リアリティーのある写真が撮れると考えました」(同氏)
広角レンズを採用した一方で、F1.9という明るいレンズを搭載することに苦労した。「(レンズの開口部が)広くなるほど周囲の光が足りなくなってくるので、極端な話、中心部が明るくて周囲が暗い写真になりかねません。特に4隅が大変です」と小林氏は説明する。それでもレンズのパラメーターを見直すことで、周囲が暗くなるという部分は、「一般の方が気付かないレベル」(小林氏)にまで改善できたという。
※後編では発熱対策やOSバージョンアップ、ロボクルなどを聞きます。
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