KDDIがメアド「ezweb.ne.jp」を「au.com」にチェンジ――「今さら」ではなく、次の秘策に向けた布石か:石川温のスマホ業界新聞
auのキャリアメールのドメインが2018年4月の新規取得分から「au.com」に変更される。「今さらメールなんて使わない」という冷めた見方もあるが、この変更は予想以上に大きな意味を持っている可能性がある。
8月22日、KDDIはメールアドレスを来年4月より「ezweb.ne.jp」から「au.com」に変更すると発表した。ネット上では「いまさら、メールなんて使わない」と失笑のような反応であった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年8月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
確かにキャリアメールの利用頻度は下がっており、このタイミングでau.comに変える意味はないように思える。しかし、ここ最近の業界の動きを見ていると、KDDIに対して「何か準備しているのではないか」という、うがった見方をしたくなる。
そもそも、KDDIはau.comというドメインをすでに2013〜14年ごろに取得している。当時も、メアドをau.comに変える検討がされたようだが、ローンチ直前になってお蔵入りになったようだ。
だが、2017年になって、まずKDDIのサイトがau.comというドメインに生まれ変わった。そして、来年春には、キャリアメールがau.comに変更となる。
あえて、このタイミングでドメインを変えてくるということは、ひょっとするとメール関連サービスの大幅刷新を準備している可能性が考えられる。
実はいま、世界的なキャリアの動きとして、GSMAを中心にSMSの進化版である「RCS(Rich Communication Service)」の導入が進みつつある。グーグルがRCSを標準的に採用し、「Android メッセンジャー」として、Androidの標準アプリにもなっている。
RCSになることで、メッセンジャーアプリのように吹き出しがでるかたちでメッセージのやりとりができるようになる。Facebookメッセンジャーのように相手が書き込んでいる様子も確認することができる。
複数デバイスでの受信が可能になり、チャットボットとして、会話型でサービスや情報を提供するということもできるようになるのだ。
この秋リリースとなるiOS 11からは、ユーザー間で金銭のやり取りが可能になるとされている。RCSベースのAndroidメッセンジャーであれば、同様のこともできるようになるとされる。
iMessageの利便性が上がる一方、Android側だけが機能的に劣るというのは許されない。となると、キャリア側としても、RCSに対応して、Androidメッセンジャーの機能強化を図っても不思議ではない。
キャリアとしても、単にキャリアメールやSMSとしての連絡手段ではなく、チャットボットへ展開し、au IDと組み合わせ、情報提供や課金などと組み合わせれば、さらなるビジネス展開が可能となる。特に課金はキャリアが最も得意とするところだ。
RCSと組み合わせることで、課金はもっと便利で使いやすくなり、結果、手数料収入の増大も期待できる。
個人的な予想に過ぎないが、もしかするとKDDIはメアドのau.comの導入に合わせて、SMSをRCS対応させ、メッセージ関連のサービスを強化してくるのではないか、という気がしてならない。
RCSについては、KDDIだけではなく、NTTドコモやソフトバンクも着手している。果たして、3社一斉に導入されるのか、それとも、どこかが出し抜くのか。
いずれにしてもSMSが大幅進化することも考慮すると、「キャリアが提供するサービスは終わっている」という早計な見方は辞めたほうがいいのかもしれない。
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