モバイル通信市場の「公正競争」促進には何が必要? 総務省の検討会が論点整理(2/3 ページ)
2017年度内に開催されると思われた「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第5回会合が、年度をまたいで4月9日に行われた。総務大臣への提言にむけた論点整理が行われたが、その「論点案」は多岐に渡る。
論点2:中古端末の国内流通について
手頃な携帯電話を購入する手段として、ロー・ミドルレンジのSIMロックフリー端末に加えて期待されているのが「中古携帯電話」だ。
日本でも中古携帯電話市場は成長傾向にあるが、他の先進国と比べると盛り上がりに欠けると言われている。それに対し、検討会では「MNOが下取りした端末の海外流出」「B2B取引市場の未確立」「第三者による修理サービスに対して正規部品の供給がない」「SIMロックのかかった中古端末のロック解除手続きの制限」……といった阻害要因が示された。
下取り後の端末について、MNOは「国内流通を制限してない」「(下取り端末の)売却先が流通先を判断している」という旨の説明をしている。しかし、論点案はMNOが下取り端末の国内流通・販売を制限することが是正対象になることを明確にする必要性を盛り込んでいる。
中古端末のB2B取り引き市場の創設や修理部品の供給などについては、民間での取り組みを総務省がバックアップすることや、必要に応じてMNOが調整の場に参加する必要性も示している。 中古SIMロック端末のロック解除については、明らかな盗品や不払い端末を除き応じるように求めていくように指摘している。
中古端末の普及促進策として提言のあった「MNOによる中古端末販売」については、MNOがニーズを踏まえて判断すべきとしている。
論点3:利用者の利用期間拘束について
MNOの料金プランは、定期契約(基本的に2年間の契約)によって一定の割り引きを行うものが主流で、ユーザーからの申告がない限り自動更新するようになっている。このことが事業者乗り換えの阻害要因であるとして、その廃止を求める声が挙がっている。さらに、一部のMNOが提供している48カ月間(4年間)の長期分割払いと下取りプログラムを組み合わせた販売方法が、より強力な利用期間拘束であるという批判もある。
論点案では、高額な中途解約金を緩和・解消するための取り組みを総務省が行う必要性を訴えると共に、当面の措置として「定期契約の有無による提供条件の格差縮小」などの措置を取るようにMNOに働きかけつつ、その対応をフォローするように提言している。
48回払いの分割払いと下取りプログラムのセットを前提にした販売方法については、提供条件などをMNOがより丁寧に説明することと共に、総務省の監視対応の強化も求めている。
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