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手数料だけでは成り立たないスマホ決済 それでも各社が注力する理由とは?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

スマホ決済が転換期を迎えている。PayPayは2022年10月から決済手数料の有料化に踏み切る。対する楽天グループの楽天ペイは、PayPayの有料化に乗じた形で中小店舗に対する手数料を1年間無料化する。KDDIはグループの金融事業との連携を強化する方針を示した。

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スマホ決済はキャッシュレスの主流になれるか? 手数料有料後が真のスタート

 PayPay登場以降、大規模なキャンペーン合戦や加盟店の急拡大で一気に伸びたスマホ決済だが、まだ解決しなければならない課題は残されている。例えば、PayPayはスマホ決済市場の中で3分の2程度と圧倒的に高いシェアを取っている一方で、同社が挙げたデータでも、まだクレジットカードや電子マネーに全体決済回数で及んでいない。市場規模で見てもそうで、クレジットカードの取扱高は2020年の実績で年間約63兆円。PayPayはおろか、スマホ決済全体でも、2020年のクレジットカードの10分の1以下の規模感で、“キャッシュレス決済の主流”になったとは言いがたい。

PayPay
スマホ決済市場で高いシェアを持つPayPayだが、キャッシュレス全体と比較するとまだまだ割合は低い。逆の見方をすれば、ここに成長余地があるといえる

 手数料の有料化に伴い、赤字を垂れ流すフェーズは終わりを迎えつつあるが、ユーザーと加盟店の双方を増やす取り組みには、本腰を入れていく必要がありそうだ。確かに現金よりは手軽なスマホ決済だが、アプリの操作が必要になるため、非接触ICカードやおサイフケータイと比べるとユーザーにとっては手間が増える。クレジットカードを財布から取り出すよりは手軽かもしれないが、やはり利用を促進する仕組みがまだ十分ではない。一時的なキャンペーンだけに頼らない、送金やポイント運用、ミニアプリといった、アプリを開くからこそ使い勝手がよくなるサービスの開発は不可欠だ。

PayPay
ミニアプリやポイント運用などの機能は充実してきたが、生活の起点になるポータル的なアプリになっているとは言いがたい。サービスのさらなる改善が必要だ

 また、手数料の有料化に伴い、加盟店が大量に離脱するような事態にはならないとみられるが、獲得のペースは緩やかになることが想定される。PayPayの導入するPayPayマイストアのような機能や、各社の決済サービスにひも付いたポイントがどこまで集客効果を見込めるのかが、今後の行方を左右しそうだ。送客効果が十分でないと、手数料を払う価値がないと見なされてしまいかねない。こうした取り組みをしっかり加盟店側に伝えていくための営業活動の重要性も、増すことになるだろう。

PayPay
有料化後は、ユーザーと店舗をどれだけ結び付けることができるかが問われる。その意味で、各社の実力が試されるのはこれからだ

 ユーザーの間で定着しつつあるスマホ決済だが、市場規模を見る限り、まだ発展途上のサービスだ。大規模な還元キャンペーンや無料の手数料でユーザーと加盟店を拡大してきたこれまでは、いろいろな意味でボーナスステージの段階だったといえる。PayPay、d払い、au PAYの手数料無料が終わった後の10月以降や、楽天ペイの無料キャンペーンが終わる2022年が、スマホ決済にとって真のスタートといえそうだ。

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