BALMUDA Phoneの技適問題、新規参入メーカーが起こしがちなトラブルとは事情が違うワケ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
「技適の認証で確認すべき事項が生じた」との理由で、BALMUDA Phoneの販売が一次停止された。スマートフォン市場に新規参入したメーカーは、技適に関するトラブルを起こすことが多かった。しかし取材を進めると、BALMUDA Phoneのケースは少々事情が異なることも見えてきた。
性質が異なるBALMUDA Phoneのトラブル、ブランドイメージの回復が必要か
スマートフォンの開発、販売に新規参入したメーカーの端末で起こった技適のトラブルのため、BALMUDA Phoneの一件もRakuten MiniやUPQ Phone A01などと同一視されがちだが、実態は少々異なる。製造や認証の作業を担当したのが、端末開発や日本の制度を熟知している京セラで、発覚のきっかけも外部からの指摘ではなく、自主的な検証の結果だったからだ。ミスを犯したことの免責にはならないが、発覚から販売の一時停止、修正ソフトウェアの配信までの期間も短く、1週間程度でリカバリーできた動きの速さは京セラの底力といえる。
また、先に挙げたRakuten MiniやUPQ Phone A01は認証の申請者を自社にしていたため、製造から申請までの全てを京セラに委託していたBALMUDA Phoneとは、位置付けも異なる。技適マークに記載されている製造元・申請元の名称も京セラだ。OEM、ODMに製造を委託する点は、他の新規参入するスマートフォンメーカーと同じだが、責任分界点はより明確だったといえる。バルミューダはファブレスのメーカーゆえに、各種試験は京セラ任せになるが、リスクヘッジはできていたというわけだ。
技適の認証に関しては、携帯電話やスマートフォンを何台も開発してきた大手メーカーの端末でも、まれにミスが起こっている。総務省は、基準に不適合だった端末の一覧をWebで公表しているが、ここには、新規参入メーカーや中小メーカーだけでなく、サムスン電子やZTEといった無線機器を主力とするメーカーも名を連ねている。海外用のロットをそのまま日本で出荷してしまったASUSの「ZenFone Max Pro(M2)」のような事例もあり、規模の大小や経験の長短を問わずミスが起こっていることが分かる。大手メーカーのミスで、しかもそれが他社から委託されていた端末だったのは京セラにとって不幸な偶然だったといえる。
一方で、発表時から賛否両論が噴出するなど、話題性の高さは突出していただけに、副作用として、バルミューダやBALMUDA Phoneのブランドイメージには傷がつく形になってしまった。BALMUDA Phoneの販売一時停止が報じられた3連休中明けの11日には、バルミューダの株価が急落。販売を再開した現時点でも、以前の水準には戻っていない。ソフトバンクショップでは販売に苦戦しているとの声も聞こえてくるだけに、割引施策などのテコ入れをする必要も出てきそうだ。
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