News:アンカーデスク | 2003年6月30日 07:46 AM 更新 |
今までは単に1ベンチャーとしての存在であった米DivXNetworksも、コーデックが認められて行くに従って会社組織としてもしっかりした枠組みができてきた。同時にライセンスの課金もMPEG-2のようなエンコーダ・デコーダ単位であるところから、ビジネス的にも使いやすいコーデックへと変わっていった。
一方で本来ストリーミング用とされるMPEG-4では、エンコーダ・デコーダ以外にストリーム単位での課金もあるため、業者にとって負担が大きい。もちろんライセンス料の支払いには規模による下限があり、すべての業者がこれに該当するわけではない。しかしもし該当してしまったら未来永劫(えいごう)ライセンスを支払い続けることになり、その料金は当然ユーザー側に転嫁される。
それを避けるために、ストリーミング関係ではH.264あたりに逃げようとする動きもある(関連記事参照)。しかしH.264の場合は、まだライセンスの条件がFixされておらず、どう転ぶかわからないコーデックでスタートさせるわけには行かない。
そこでDivXという選択肢が浮上してきたのは、いわば自然な成り行きだ。既に圧縮率と画質では、ユーザーの間でも認められている。ストリーミングに関しては、マルチキャストはできないが、ユニキャストならDivXで可能である。小規模、あるいはクローズドなVODでは、それで十分だろう。
果てしないビジネスモデル
バーテックスリンクがMediaWizでやろうとしているビジネスの本当の狙いは、安価なVODシステム構築にあると見ていいだろう。LANで行なう館内放送レベルまでではなく、WANを通した商業ベースでのVODシステムも、当然視野に入っている。例えば全国にフランチャイズ展開している店舗などのビデオマニュアルや、現在衛星を使って配信している社内報、学習塾の授業放送といったビジネスも、その応用範囲だ。
また現状のMediaWizでは無理だが、将来的にはスタンドアロンで動作するIPベースのSTBとしての可能性もある。緊急報道システムとして、IPベースのブロードキャスティングは既に総務省やNHKで研究が進められている。地震など広範囲に及ぶ災害では、電話網はダウンして役に立たないことは、すでに実証済みだ。一方どこかで回線が切断されても、いくらでも迂回してつながっていくIP網は、全滅することはない。
緊急報道はテレビのような電波メディアで十分じゃないか、という意見もあろう。しかし一方的に時間単位で流して空中に消えてなくなるメディアでは、パーソナルレベルの情報まではとてもケアできない。被災者側の立場に立ってみれば、親戚の叔父さんがどこどこの病院に担ぎ込まれた、最寄りの避難所で水の配給があるのは何時、といったことを知るために、一日中テレビの前に座っていつ情報が出るか出るかと待っているわけにいくものか。
これがIPベースのテレビ端末なら、こちらから情報を探して見に行くことができる。大学や民間プロバイダーの有志が、緊急情報サーバをミラーリングしてくれることもあるだろう。インフラがなかなか死なず、誰でも使える双方向情報システムの構築は、災害対策の急務となっている。
PCのファイルがテレビで見られます、というところからスタートするMediaWizの先には、まさに未来型テレビのビジョンがぶら下がっているのだ。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
[小寺信良, ITmedia]
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