麻倉怜士のデジタル閻魔帳
フルHDは当たり前、春のデジタルビデオカメラ総括(3/4 ページ)
――次はキヤノン「iVIS HF10」です。同社AVCHDビデオカメラとしては初めて、メディアにメモリを採用したことでも話題となりましたね。
;麻倉氏: キヤノンはビデオカメラがハイビジョン化してから――特にiVIS HV20の登場で――、高画質No.1メーカーに躍り出た感があります。それまで、画質ではソニーの独壇場という雰囲気もありましたが、キヤノンから優れた製品が登場し、HDの可能性・奥深さを私に知らしめてくれた気がします。
ですが、そのキヤノンもAVCHDについては悩んでいた印象で、AVCHDを利用したカメラはiVIS HV20の画質になかなか到達できていませんでした(iVIS HV20はMPEG-2のHDV)。ハイプロファイルを採用したHF10は“もやっ”とした印象をぬぐい去る素晴らしい出来映えです。HDVで到達した地平に、AVCHDでも到達したといえる高水準の映像です。発色もビビットでS/Nも良く透明感があります。フルHDモードも良いのですが、1440モードもさすがと思わせるデキです。
キヤノンはビデオカメラに携わって25年以上になりますが、ビデオカメラに参入したカメラメーカーで生き残ったのは同社だけです。その理由はひとえに画質へのコダワリが支持されたからです。若干ボディが大きめなのが気にはなりますが、HF10も「いま画質で買うならばキヤノン」と思わせるだけのクオリティを持っています。
――最後の1つは300グラムという軽量ボディながらもフルHD録画を可能にしている、“ポケットハイビジョン”ことソニーの「HDR-TG1」です。
麻倉氏: 横型のいわゆるビデオカメラは一世を風靡しましたが、市場そのものは頭打ちです。これは、ビデオカメラがイベントカメラとしての枠を飛び出していないからです。市場を大きくするためにも、利用スタイルを含めた新提案が求められているのですが、それを具現化したのがHDR-TG1です。
縦型で非常にコンパクトながら、画質もAVCHDのハイプロファイルを採用して高画質です。既存のビデオカメラは、「しっかりとした映像を撮るための大きなレンズにハイプロファイル」か「スタイルはいいけど画質はそこそこ」という二者択一だった感が否めませんが、この製品が素晴らしいのは、気軽に持ち出せる大きさ・スタイルながらも非常に画質も優れていることです。
映像も、ソニーのAVCHDハイプロファイル技術が惜しむことなく投入されていることが伝わってきます。レンズ径は大きくありませんが、レンズ収差は少なくヌケも良く、暗部にも強いです。記憶色指向が強いのが特徴といえるでしょう。
気になったのは手ブレ補正です。電子式手ブレ補正機能を搭載していますが、この製品は~しながら撮るというアクションカメラなので、もっとしっかりさせたいです。あとはホールドの仕方です。いまひとつしっくり来ない感じもあります。
ですが、高い画質とハンドリングの良さは、新しい地平を切り開く可能性を秘めています。記録メディアがメモリースティックのみなので、なんらかのカタチで持ち出す必要がありますが、昨年冬モデル以降の同社製BDレコーダーを利用してBDメディアに焼くこともできますし、USBでPCなどへ接続することもできます。使い勝手の良いモデルとなるでしょう。
麻倉氏: おしなべて言えば、今春のモデルはフルHDにふさわしい絵作りを各社が進めたため、高画質化が進んでいます。今回紹介したソニー、パナソニック、キヤノンの製品ならば画質面では十分に満足ができるでしょう。
ただ、収差の問題を指摘しましたが、レンズに問題のある製品、絵作りにおいて精細感に欠けたり、カラーノイズが多かったりと「フルHDらしさ」を達成できていない製品も散見されます。各社の一層の奮起を期待したいですね。
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