麻倉怜士のデジタル閻魔帳
2013年を総括! 「麻倉怜士のデジタルトップ10」(後編)(1/3 ページ)
この1年間を振り返り、とくに印象深いハードとソフトをランキング形式で紹介する恒例「麻倉怜士のデジタルトップ10」。後半は第5位からスタートです(前編はこちら)。
第5位:コルグ「DS-DAC-100」
麻倉氏: 第5位は、コルグが発売した「DS-DAC-100」です。これは10万円以下のUSB-DACの中では“ぶっちぎり”に高音質な製品です。ワイドレンジで解像感が高く、かつ音が緻密(ちみつ)。DACチップは、「DS-DAC-10」と同じCirus Logic(シーラスロジック)の「CS4398」ですが、驚いたことに音は随分と変わりました。オーディオ的な良さがアップしています。
例えば、有名なノルウェー「2L」のDSD 64コンテンツ「ヴァイオリン協奏曲」は非常に透明で、音の色数が断然多い。一音一音が溌剌(はつらつ)とし、ビビッドな音進行を聴かせてくれます。DSDならではのソノリティーの厚さと透明感が楽しめました。そしてソロバイオリンの美しいこと。倍音の多さも感動的です。同音源のDSD 128版はさらに透明度が高く、音のテンション感と浮遊感が現実離れしています。楽器から発せられた音の粒子が、無重力のようにふわふわと空間に浮いている感覚が聴けるのです。
コルグはオーディオ専業メーカーではなく、音源制作の側に立つ会社で、ベースにある考え方も違うのではないでしょうか。今でこそ他社からもDSD対応の製品は多く出ていますが、プロ向けの「MR-1000」など、何年も前から人知れずDSDを手がけてきたのがコルグです。実際、ハイレゾ音源配信サイトのDSD音源も同社の「MRシリーズ」を用いてDSD録音したものが多い。最近の作品ではスウェーデンの「OPUS3」レーベルは最高です。DS-DAC-100はそれを忠実に再生します。
また、自社製ソフト「AudioGate 」で再生し、自社のDACで音を出すという、1つの垂直統合もうまく機能しています。AudioGateは、ファイル変換ソフトとして登場した経緯もあり、以前はプレーヤーとしての使い勝手はいまひとつだったのですが、AudioGate 3では「foobar2000」(Windows用の定番ハイレゾ再生ソフト)のようなプレイリスト機能やカスタマイズ機能まで取り入れて使いやすくなりました。また、DSDとリニアPCMのファイル(WAV、FLAC)が共存していると、ノイズが発生するプレーヤーもありますが、AudioGate 3には皆無。
バランス出力(XLR)を搭載したのも10万円以下のクラスでは初めてではないでしょうか。コルグでは業務用途にも展開します。実売価格は5万円とちょっとですから、とてもコストパフォーマンスが高いDACといえるでしょう。今、一番に推薦するべきDACだと思います。
第4位:ヤマハのセパレートAVアンプ「CX-A5000/MX-A5000」
麻倉氏: ヤマハが10月に発売した「CX-A5000/MX-A5000」は、実に22年ぶりとなるセパレート型のAVアンプです。これも実に出来が良い製品です。
AVアンプは、いかに新しい機能を取り込んでタイムリーに市場に出すかが重要で、これまでは音が“二の次”にされがちでした。アクション映画などはともかく、音楽再生はいまひとつ。アクション映画の爆発音は出せても、バッハの繊細なチェンバロの音を出すのは難しいのです。今までは、そこにかけるリソースが決定的に不足していました。しかし、「CX-A5000/MX-A5000」でCDを聴くと、スピード感があってヤマハらしい質感の良さも感じられます。
また、「CX-A5000」と「MX-A5000」の筐体(きょうたい)は、それぞれAVENTAGEの「RX-A3030」と「DSP-Z11」をベースにしています。とくに「CX-A5000」と「RX-A3030」はフロントマスクも共通で、デザイン的な目新しさはありません。しかし、今の時代は金型に投資することよりも中身の方が重要です。
例えば、DACにはESS Technologyの「ES9016」を採用しています。パイオニアなど各社が採用した人気のチップですが、ヤマハはそのポテンシャルを発揮させた上で自社の“音作り”をしました。
また、11chものパワーアンプを搭載した「MX-A5000」は、柔軟なアロケーションが可能です。例えば、5.1ch構成として5chのスピーカーをすべてバイアンプ駆動にしたり、大きなスクリーンを使っている場合にはセンタースピーカーを3台まで並べるといったこともできます。
セパレート型のAVアンプには、サラウンドフォーマットやインタフェース(HDMIなど)が進化しても、プリアンプを交換するだけでパワーアンプは長く使えるという合理性もあります。ヤマハが再びセパレート型を提案したことは、AV業界の底上げにもつながる“英断”だったと思います。
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