“中の人”が明かすパソコン裏話
そのノートPC、指一本でスムーズに開けますか? 米国担当者を魅了して実現した「ヒンジ」の心地よさ(2/3 ページ)
ここで失うもの、それは「スムーズさ」です。
本来、ヒンジはスムーズに扉や“ふた”を開けるために用いられますが、フリーストップヒンジではそれが失われてしまいます。分かりやすいところでは、ノートPCのディスプレイを開けたときに、キーボード側のシャーシが一緒に浮いてしまうような状態です。
この状態を解決するために、ヒンジの反発力のような部分を調整し、ディスプレイが自由に固定されながらも不快と感じないギリギリのレベルでスムーズさを調整する必要があります。
特に重さ1キロを切る軽量なノートPCの場合、キーボード側も軽いため、ディスプレイを開くつれてキーボード側も浮き上がってしまいます。弊社のノートPCの場合、ディスプレイパネルとキーボード側の重量バランスをとり、ヒンジのトルクを画面がグラグラしない最小レベルになるように設計のマイスターが調整しています。いわば“こだわりのレシピ”のようなものです。
構造上、指一本でスムーズに開くような調整ができない製品もあります。そういった製品は画面が取り外せるなど、別の特徴を持っていることが多いので求める機能とのバランスを考える必要があります。
裏話ですが、弊社でもこの指一本でスムーズに開くヒンジを得ることは非常に困難な道のりでした。そもそも、このようなヒンジのトルクまでこだわった製品は少ないのです。一般化していないことを推し進めるのは容易ではありません。しかし、いざ製品化したのもの使用してみると、事実として明らかに気持ちが良いのです。
ここでも、共感力が重要になります。製品開発のROI(投資対効果)を考えた場合、正直言ってこのような性能は、なかなか評価ができません。
米国の製品担当者が来日した時に、ここぞとばかりに指一本でスムーズに開くヒンジを実現したノートPCをパカパカ開け閉めさせて、「気持ちいい体感」を持ち帰ってもらいました。共感を得ることで、ROIなど度外視してでも「何としてもアノ素晴らしいヒンジを実現しよう!」という力に変わってくるのです。数値的な情報だけでは困難を乗り切ることができないのです。
結果的にこのようなヒンジを持つことは、製品のセールスにも確実に作用すると確信しています。ユーザーは製品を提供側が考える以上に、このような見えないこだわりを感じ取り、無意識に製品への評価を決めているのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
“中の人”が明かすパソコン裏話
昔はPCを購入することはそれこそ一大決心でしたしワクワクするものでした。この連載では、そんな「ワクワクする気持ち」をもう1度思い起こすきっかけとなるような、PCのちょっと面白い「小ネタ」や「裏話」を、“PCを提供する側”というちょっと変わった視点からご紹介していきます。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
2
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
3
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
4
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
5
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
-
6
ジョーシンへの不正アクセス、最大623万件漏えいか 運転免許証2件・マイナカード1件なども
-
7
野村総研、サイバー攻撃時の「能動的なシステム停止」を支援する新サービス
-
8
タイムズカー流出で顧客らが損害賠償求め運営会社提訴へ サイト開設の弁護士が記者会見
-
9
Xの「いいね」長押しで1ドル送金 マスク氏が“投げ銭”機能を予告
-
10
「漏えい」の一言で素通り客が振り返る──相次ぐ情報流出の中で開幕のセキュリティ展示会 来場者の態度も激変
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR