マストドンつまみ食い日記
その理由がロリコンでないのなら、なぜマストドンは日本で花開いたのか
MITメディアラボの釣りタイトル不完全レポートをこれ以上追いかけるのも時間の浪費なので、少し建設的な方向に行きたい。
たしかにマストドンは日本人シェアが高い。ブームが最高潮に達した4月ほどの勢いはもちろんないが、ユーザー数においてもインスタンス数においても、日本のユーザー、管理者が過半数を占めているのは何度か説明したとおりだ。
dc1394さんのトゥートによれば、mstdn.jpとPawooは4月末までほぼ同じペースで伸びていたが、4月27日からPawooはさらに加速している。ピクシブの急伸は、Pixivアカウントとの連携、モバイルアプリの提供、セミナーの開催など立て続けに話題をこの時期に提供したことも大きいだろう。もちろん、Pixiv本体からの送客も奏功したに違いない。
4月末にこの2つのインスタンスは10万ユーザーに到達しているので、日本におけるマストドンはこの時点で成功のマイルストーンを通過したと考えていいだろう。
そのためにはサーバをスケールさせる必要があった。運用技術を持っていたのはPawoo運営のピクシブとmstdn.jpのインフラを支えるさくらインターネット。当初8万ユーザー限界説も流れたくらいだったのをあっさり突破した。大規模サーバ運用のノウハウはfriends.nicoのドワンゴからも提供され、こうした技術の蓄積によってマストドンの上限が取り払われた。
ユーザー増による負荷に耐えられないとなると、新規ユーザー登録を停止せざるを得ない。数万ユーザー規模の英語圏のマストドンインスタンスは、たまにオープンになるがなかなか入れないという状況が続いていた。伸ばそうと思っても伸ばせなかった。大規模ソーシャルネットワークを構築・運用したことのある企業のノウハウが足りなかったからだ。
マストドンと開発力を持った企業が結びついたのはほぼ日本だけ。日本のTwitterユーザーは多いので、CGMを売りにしているソーシャルネットワークであるPixivもニコニコ動画もTwitterへの依存度が高い。Twitterを自分のサービスとして置き換えられるマストドンと出会い、彼らのノウハウとリソースがマストドンに注ぎ込まれた。ここは大きなポイントだ。
中小規模のインスタンスもボコボコ作られた。最初はまったくの手探りで。次に、技術ブログのQiitaを中心にエンジニアによる様々なインスタンス構築方法が共有されていった。これにより、さくらインターネット、ConoHa、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどのクラウドを利用したインスタンスが数多く生まれた。こうした解説ブログは英語圏のインスタンス構築法エントリーと比べてもかなり多い。
さくらインターネットは4月19日にはスタートアップスクリプトの提供を始め、導入のハードルを大きく引き下げた。
リアルな人の流れも活発だった。マストドン会議、Pixiv Night、さくらインターネットのセミナーなど多くの交流の場が生まれ、新しいアイデア、企画へと繋がっていった。
メディアの報道も多少、その助けになったのではないかと思っている。米国メディアのマストドンに関する報道は1週間程度で終わりを告げ、これからインスタンスを立てようという人たちの役に立つことはなかったが、日本ではITmedia NEWSを含むいくつかのテック系メディアが記事を書いた。書籍も信じられない速度で出版された。
新しい場を提供しようと取り組んだインスタンスの管理者たち、モバイルアプリ、Webアプリの開発者。各種ツール、サービス。いずれも日本のエンジニア、非エンジニアたちががんばって盛り上げていった。
さまざまなレイヤーで人々が面白がり、やってみたことが数字となって現れたのが、マストドンBig in Japanの正体なのだ。
みんなロリコンのせいだとか、そんな単純なわきゃあないのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
マストドンつまみ食い日記
マストドン(Mastodon)をはじめとする、脱中央集権をうたうサービス、アプリ、Web 3.0の動きをつまみ食いする連載です。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
3
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
4
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
5
Z世代に聞く次の流行、「AIイラスト」が1位に 「Claude Code」も上位
-
6
東野圭吾さん死去、Xなどで追悼相次ぐ 「ガリレオ」など数々の人気作、エンジニアから転身
-
7
はてな、11億円流出の調査報告書を公開 偽警察、口外禁止、残業・休出200時間超、孤立……ほころびが連鎖
-
8
NVIDIAやMicrosoftなど30社超、オープンAIの防御ツール共同開発の「Open Secure AI Alliance」設立
-
9
「あ、その情報メモしたい!」を叶えるワイヤレスイヤフォン、Nothing「Ear (3a)」
-
10
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR