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マストドン本「これがマストドンだ!」を読んだ そしてGON、Pawoo、無料インスタンスマストドンつまみ食い日記

» 2017年05月04日 14時21分 公開
[松尾公也ITmedia]

 世間はゴールデンウィークに突入したとはいえ、最新かつ最大級のトレンドであるマストドン(Mastodon)界隈は相変わらずのスピードで突き進んでいる。

 今日も新しいiPhoneクライアント「GON」というのが出て、無料で広告なし、マルチインスタンス対応でデザインスッキリ、キビキビ動作するという好感が持てるアプリなのでオススメの1つに入れておきたいところ(App Storeへのリンク)。特に大きな特徴があるわけではないが、周囲での評判もよい。はじめ人間ギャートルズが由来だというので応援したい。

photo GON

 PawooのiPhoneアプリも1.1に更新され、マルチインスタンス、メディアタイムライン、通知とタイムラインのストリーミング表示に対応した。こちらも十分によくなった。メディアタイムラインがApp Storeの審査に引っかかりそうな気がしたが、無事に通ったようだ。

photo iPhone版Pawooもメディアタイムラインに対応

 もう1つ報告していなかった話題としては、Masto.hostに対抗するような日本からの動き。「無料マストドン作成β free.m.to」というホスティングサービスがスタートしている。サーバ構成見直しを理由に新規受付を停止中だが、すでにこのサービスを利用して立ち上がっているインスタンスもいくつかある。将来は広告モデルにするか、有料ホスティングにするかを選択可能にするらしい。5月10日以降に再開予定なので、その時点で試してみようと思う。

photo 無料マストドン作成β

 さて、今日の本題。紙としては最初のマストドン解説書籍「これがマストドンだ!」が5月3日、まずは電子版で発売された。早速Kindle版を購入して読んでみた。税込みで864円。紙版は1296円(税込み)で、インプレスR&Dが推進しているオンデマンド印刷によるペーパーバックだ(12日発売)。だからこそこのスピードでできるのだ。

 マストドン物語の発端である4月10日の遠藤砲から本書の締め切りである4月26日までの間に起きたことを社会的、技術的に切り取ったタイムカプセルとしての意義は大きい。

 時間的な制限はもちろんあり、Masto.hostのような個人向けお手軽インスタンスホスティングサービスの勃興やその後のトラブルまではカバーできないのだが、これまでずっとマストドンのニュース、記事、ブログやツイート、トゥートを追ってきたと自負しているぼくからみても読むべきポイントは多い。

 ぼくらと同時期にマストドンに注目してブログで紹介し、この本の支柱となるべき概論を執筆した堀正岳さんは「特別インタビュー:絵師とブロガーはマストドンをどうみたのか?」で吉田誠治さん、コグレマサトさんに話を聞いている。吉田さんは絵師さんたちがPawooに流れていった経緯を説明しており、なるほどと納得させられる内容。実際、TwitterでPawooをキーワードに検索していると、Twitterは当面閉鎖してPawooに移行しますというツイートを頻繁に見る。

 コグレさんはネタフルを主宰するアルファブロガーであり、マストドンへの食いつきもぼくらと同じくらいのタイミングで、今も精力的に関連情報を発信している。しかし、ここでは自分の趣味的インスタンスを立ち上げた人としてインタビューされている。旅をしては酒を飲み、食うという「オジ旅」のためのインスタンスだ。執筆時の規模は50人程度。やはりここでも酒を酌み交わすような感じらしい。

 マストドン初期段階での歴史に残るであろう、清水亮さんと江添亮さんのプロレス的やり取りも、本書には収録されている。やはり熱い。ぼくはマストドン会議というイベントでこの2人の後にライトニングトークを3分でやれと言われる地獄を味わったのだ

 清水さんはGoogle帝国、Apple帝国からの脱出を説き、江添さんはマストドンの技術的な問題点を指摘しつつ、そこで手に入れられる自由の素晴らしさを語っている。なんだ、仲いいな。もともと知り合い同士の出来レースだったんじゃないかと清水さんに聞いてみたら、この場の初顔合わせだったらしい。まあ、そんなことも含めて歴史的資料の収録である。

 歴史的といえば、本書最大の歴史的価値はここにある。

 ぬるかるさんによる、「mstdn.jpの歴史解説「mstdn.jpをたちあげてみて個人で大規模インスタンスを作ったらドワンゴに入社することになった」だ。ITmediaの家庭訪問インタビューをはじめ、isidaiさんによるさくらインターネットへの移行解説2人の対談さくらインターネットの鷲北賢さんらによる、さくらサイドでの取り組み座談会などの傍証的資料はあるが、本人執筆による一次資料はこれだけだ。

 5ページではあるが、そこには個人が自宅でサーバを立ち上げていろいろな苦難にぶち当たりながらスケールさせていくときの苦労が余すことなく語られており、マストドンのインスタンスをこれから立てる、または現在運営中の人たちにとっても必読となるだろう。

 神田さんの記事を飛ばしてそれ以降は思いっきり技術書である。OStatus、Mastodon API、お一人様インスタンスの立て方(GCP)。

 「運用してみてわかった、大規模インスタンスを運用するコツ(道井俊介・ピクシブ)」は、現時点でユーザー数13万人超えとトップを走るPawooの運用ノウハウ。AWSでスケールさせていく際の参考になるだろう。

 ところで、表紙のマストドンが猪突猛進なイノシシにしか見えないのはぼくだけだろうか?

photo 「これがマストドンだ!」

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