「政府を頼れない」 海賊版サイト遮断、苦悩するISP業界団体(1/2 ページ)
「法律に基づかず、ブロッキングという緊急対策を講じるのは無理筋だろう」――政府がインターネットサービスプロバイダー(ISP)に対し、海賊版サイトへのアクセス遮断を自主的に促すと決めた「緊急対策」を巡り、情報法制研究所(JILIS)が4月22日、緊急提言のシンポジウムを開き、鈴木正朝理事長が反対意見を述べた。登壇者からは「法的責任を持たない政府をISPは頼れない」「ブロッキングの費用は、ISPにとってダメージになる」といった発言も出た。
ISPからすると、ブロッキングは法的リスクと莫大なコストを伴う。鈴木理事長は「しかしながら海賊版サイトへの対策が不十分であり、著作権者や出版社が困難に直面しているという意見は、業界団体内でも一致している。目的は揺らがないが、法秩序の中に立って(ブロッキングによらない)手段を議論したい」と話す。
シンポジウムには、ISP団体・日本インターネットプロバイダ協会(JAIPA)の野口尚志理事、立石聡明副理事、同じくISP団体などが作るインターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)の丸橋透理事、NGN IPoE協議会の石田慶樹会長(兼 日本DNSオペレーターズグループ代表幹事)、東京大学大学院の宍戸常寿教授(専門は憲法、情報法)、京都大学大学院の曽我部真裕教授(専門は憲法、メディア法)らが登壇した。
「ISPは政府を頼れない」
「寝耳に水だった」――JAIPAの立石副理事はそう話す。「ひょっとすると大手の通信事業者には内々に政府からブロッキングについて相談があったかもしれないが、私の知る限り、ほとんどの事業者は4月に入ってから伝わった」という。立石副理事は「オープンかつ十分な議論がなされていない」と指摘し、さらに「訴えられる(リスクがある)のはわれわれ事業者側だけ」と不満を漏らす。
政府の緊急対策には、歯切れの悪い部分がある。政府がブロッキングへの法的リスクを負っていないことだ。ブロッキングでは、ユーザーの閲覧先をISPが確認し、アクセスを遮断する。この「閲覧先をチェックする」という行為は、憲法で保護されている通信の秘密を侵害するもので「形の上では犯罪に当たる」(曾我部教授)。ただ、例外として刑法上の「緊急避難」に該当すれば、侵害が正当化される。
しかし海賊版サイトへのブロッキングは、緊急避難の要件である「現在の危難」「補充性」「法益権衡」などを満たしていないとの指摘がある(関連記事)。さらに政府が公開した緊急対策(案)では「緊急避難の要件を満たす場合には、違法性が阻却されるものであると考えられる」としか説明がなく、政府が「緊急避難の要件を満たしている」と“保証”しているわけではない。
慶応義塾大学の亀井源太郎教授(専門は刑事法)は「政府の法解釈が裁判所をダイレクトに拘束するとはいえない。裁判所が政府の考えを認識していても、緊急避難に当たるかは自由に判断し、ISPが(通信の秘密について条文がある)電気通信業法に違反していると訴えられる」と、事業者にリスクが伴うことを指摘する。「『政府が促したこと』は、ブロッキングを正当化する理由にはならない。政府の法解釈は刑事上の手続きからすると意味がなく、ISPは頼れない」(亀井教授)
政府によれば、ISPへ自主的なブロッキングを促すことは、ブロッキングの法整備を進める中の緊急対策という位置付けだ。「立法までは緊急避難の考えに基づいて何でもしてもいいというような状況になりかねない。そうすると『重大な権利や利益を侵害するときは立法による』という原則がなし崩しになる。そう危惧している」(亀井教授)
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