これからのAIの話をしよう(美意識編)
AIは“美しさ”を感じるか ディープラーニングの先にある未来(1/4 ページ)
劇団四季「ライオンキング」を鑑賞して最初に出た感想は「なんかスゴイ」「なんかカッコイイ」でした。月並みな感想しか出ないのは、見たことが無い世界だったからです。うまく表現できないもどかしさを味わい、自分の言葉の引き出しの少なさにぼうぜんとしました。
そんな私を、ある先生が「感じる心と目が先で、言葉は後。まずは美しいものを美しいと思える心と目を育てなさい」と慰めてくれました。
このように美しいものと美しいと感じる心は、人間だけの特権なのでしょうか。人工知能は、ライオンキングを見て“美しい”と思うのか。もし美意識を持った人工知能が誕生すれば、人間よりもはるかにうまい絵画や音楽を生成できるのでしょうか。
そこで今回は「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」を執筆された、コンサルタント企業コーン・フェリー・ヘイグループの山口周さん(シニアクライアントパートナー)と、「人工知能プログラミングのための数学がわかる本」を執筆し、AIプログラミング学習サービスを展開するベンチャー企業Aidemyの代表取締役・石川聡彦CEOを交えた対談を行います。
目次
» 「美しさ」は学習できる?
» AI視点で見る「中田ヤスタカと秋元康の違い」
» AIは直感型で音楽が得意?
» 「遺伝子はデータ」 AIは“本能”を持つのか
» あとがき
(編集・構成:ITmedia村上)
「美しさ」は学習できる?
――(聞き手、松本) 「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」の第7章に、美意識の鍛え方が記載されてます。アートに触れるのが重要とありましたが、そうした機会を増やすと人間の美意識は鍛えられるものでしょうか。
山口さん(以下、敬称略) 本書の「美意識」にはいろいろな意味合いがあり、道徳観念に加え自分らしさを鍛える力も「美意識」と表現しました。今日の対談では狭義の意味、つまり西洋美術史の文脈で「歴史的に美しいと位置付けられている美術を見抜く審美眼のような能力は鍛えられるのか」を考えます。
僕は鍛えられると思っています。小林秀雄(文芸評論家)も言っていますが、骨董屋に入った小僧が真贋を見抜く能力をどうやって鍛えるかといえば、専門家から良いと評価されているものをずっと見続けると、偽物が出てきたときに分かるというんです。
僕自身、子供のころから絵画や音楽などで“本物”に多く触れてきたので、あるときその良さがパッと分かるという感覚を何度も体験してきました。
例えば、ロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーの話は有名です。彼は来日したとき、若手日本人が作曲した大量の音楽テープを早送りで聴いていたようです。すると、あるテープを聴いた所で「ちゃんと聞きたい!」と要望して、それが武満徹の「弦楽のためのレクイエム」だったと。
結果的にストラヴィンスキーは(当時)無名の作曲家を発掘し、武満徹は世界的な評価を獲得しました。ストラヴィンスキーのような人が「何かここにはある」と感じ取れるのは、普通の人には分類できないロジックがあるんでしょうね。
もっとも、歴史の評価は結構ダイナミックに変わっていくものです。ゴッホは生前評価されませんでしたし、フランス印象派も当初は評価されませんでした。良いとされるものは時代によって変わっていきます。その時代に支配的だった「良い」とされるものを判断していく能力、これは鍛えられるという言い方が正しいでしょう。
―― 時代によって姿・形は変わっても、本質は変わらないのでしょうか。
山口 それは相当に慎重な議論が必要です。バッハやモーツァルトの曲は永遠だという人もいます。しかし1万年、10万年後も永遠かと言えば、1万年後の人類が私たちと同じ環境で彼らの音楽を聴いているかどうか分かりません。つまり美意識とは非常に限定的、相対的なもの。
―― 過去にさかのぼり、その当時良いとされているものを画像認識で大量に学習させてて、「真贋を見抜くAI」みたいなものを作ろうと思えば作れるものでしょうか。
石川CEO(以下、敬称略) 今の話を伺った限りだと、できると思います。歴史的に美しいとされるものを学習していけば、同じようなテイストのものをピックアップできるでしょう。ただ、山口さんもおっしゃられたように、美しさの価値観は年々変わっていきます。
いわゆる教師あり学習で「これは美しい」というラベルを付けて学習させるだけではなく、その時代の特徴、歴史的な背景、中世では美しいとされていたけど近世では美しいとはされていない、などのラベルを付けないと、歴史的コンテキストの中での美しさの評価が下せないでしょう。
AI視点で見る「中田ヤスタカと秋元康の違い」
―― では、歌や曲はどうでしょうか。ある時代にはやった歌を学習させて、新しく登場した歌がはやるかどうかの判別はできますか。
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これからのAIの話をしよう
いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。
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