AIでイラスト価格を適正に
「このイラスト、価格はいくら?」 AIがプロ目線で見積もり
「企業からイラスト作成を発注されたが、提示された価格は安すぎないだろうか」──SNSなどで、イラストレーターからこんな声が時折上がっている。客観的に、イラストの工数や価格を評価できないか。こんな要望を叶えるシステムを、コンテンツ制作会社がAI(人工知能)で試作した。
「塗り方」「描き込み量」「難易度」「価格」 AIが評価
このシステムに、食べ物を持った女の子のイラストを入れてみる。すると、AIが数秒かけてイラストを解析し、「水彩塗り」「ギャルゲ塗り(※)」といった塗り方の割合判定や、背景画像の比率、描き込み量、制作難易度、総合スコア、想定制作価格を提示してくれる。
※ギャルゲ塗り:美少女ゲーム(ギャルゲー)でよく用いられる塗り方。主にエアブラシツールなどで、キャラクターの柔らかな陰影や色のグラデーションを表現する手法を指す。
イラストの価格をAIで評価するシステム「アートディレクターAI」を作ったのは、ゲームメーカーなどからコンテンツを受託制作するジーアングル(東京都渋谷区)。版権イラスト制作などで、年間1200件の制作実績があるという。
同社の森宏晃執行役員は、「イラスト制作の仕事を非常に多く受けることから、価格を適正に判断できるディレクターの業務量が膨大になっている」と現場の課題を語る。「これを機械化することで見積もりから受注までのフローを円滑にできないか」(同)というのが、アートディレクターAIのコンセプトだ。
アートディレクターAIの作成には、自社で制作したイラストに、価格情報や、ディレクターやイラストレーターの知見をタグ付けしたものをデータセットとして用意。既存の機械学習モデルに用意したデータベースを学習させた。開発作業は森執行役員がほぼ1人で、数カ月掛けて行ったという。
「われわれのようにAIの専門企業でなくても、手軽に精度の高いAIシステムを作れる時代が来ている」(森執行役員)
アートディレクターAIがイラスト制作にかかる工数などを計算することで、ディレクターが不在であっても、営業が取引先メーカーに、制作価格や価格の根拠となる工数や難易度を説明できるようになるのが利点だ。
また、AIが計算した価格は「最低価格」であり、取引先の要望などをヒアリングすることで最終的な価格を決定するともしている。価格基準をAIで示しておくことで、安すぎる価格で受注してしまうことを防ぐ狙いもある。
社外での活用は検討中 前向きな考え
数カ月という急ピッチで開発したことから、社内以外の活用方法は今後の検討としている。社外の反応を見るために、「AI・人工知能EXPO」(東京ビッグサイト、4月3日~5日)に参考展示したところ、関心を持ってくれる人も多いという。
今後の展開はあくまで未定としつつ、「イラストをスコア順に並べてみたい。(「pixiv」などのイラスト投稿プラットフォームでは)閲覧数やいいねの多さがランキングになってしまうが、アートディレクターAIのスコアで並べれば、無名の作家でも上位に表示できるのではないか」(森執行役員)と社外の活用に前向きな姿勢を見せた。
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