初音ミク×中村獅童の超歌舞伎「御伽草紙戀姿絵」はどう作ったか 超会議・超歌舞伎総合プロデューサーに聞いた 「江戸時代の歌舞伎はフジロック」(4/7 ページ)
コード進行みたいな感覚で素材を組み合わせる
-- 面白いのは、例えば、三代目猿之助さん(二代目市川猿翁)が始めた「スーパー歌舞伎」とか、十八代目勘三郎さんがシアターコクーンと組んだ「コクーン歌舞伎」、菊之助さんの「マハーバーラタ戦記」や新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」などの新しい歌舞伎のムーブメントの中で、デジタルと融合している超歌舞伎が、演出や作劇では一番、古典を踏襲していることです。
横澤 そうですね。僕が歌舞伎を分析した結果、歌舞伎って全てがメタ化されていると思ったんですよ。そのメタ化され、最小要素まで分解されたパズルのピースを、どういう風につないでいくかというのが歌舞伎の作劇だと感じたんです。
音楽でいうコード進行みたいな感じで、このコードの次にこのコードではつながらないとか、Cの次はGがつながりやすいとか、そういうロジックで素材を組み合わせていくのが僕は歌舞伎だと思っているんですね。
-- それは、江戸後期の歌舞伎の作者と同じ考え方ですよね。お岩さんの怪談と忠臣蔵をつないだら面白そうだといって「東海道四谷怪談」が出てくるような。
横澤 もう、最小限の単位まで要素がメタ化されていると思っちゃえば、何でも取り入れられるんですよね。いろいろ作っていくと、「じゃあ、脚本は? 演出は?」とかなるんですけど、そうじゃなくて、「何に対して傾(かぶ)くのか」ということが重要なんですよ。
多分、傾くってそういうことで、その「for」が無いと難しいジャンルなんです。だから、僕は先に、そこを決める。今、お客さんはどんなことに悩んでいて、どんな風に解決したいと思っているか、そういうところを考えて、メッセージを決めれば、そこから見せたい風景が出てくるし、風景が見えれば登場人物が決まって、そうなればストーリーも決まるという作り方なんです。
民衆の体制に対する不満とか苦しみを聞いていくと、どうしても体制に対して傾いていくじゃないですか。それを演劇化、エンターテインメント化して楽しむのが「傾(かぶ)き」であり「歌舞伎」の本質だなあと思うんです。だから、ずっと歌舞伎は幕府に弾圧されてきて、でも、その度に、知恵と工夫で生き延びてきたんだと思うんです。
-- 本当に、江戸の人みたいにして作っているんですね。
横澤 僕はもともと、物事をメタ化して組み直すというのが得意なので、歌舞伎がとても合ってたんですね。0から1を作るより、あるものを組み合わせて、新しく見せていくというのが、僕の得意なプロデューシングの方法論ですけど、それもただのオマージュじゃなくて、細分化してメタ化した上で、因数分解して再構成することで、全く別のものに見せていくのが好きなんです。
それは説明のコストを下げることにもなるんですね。今や、かつての江戸の歌舞伎と同じで、見る側がいっぱい情報を持ってるから、それを引き出して、本編ではそこを省略した方がコストは下がるんです。背景を説明するよりも、お客さまに埋めてもらう。
超歌舞伎でも、それをメチャクチャ考えました。今回、切腹のシーンやだんまりなどの、歌舞伎ならではの演出を取り入れたんですが、それも、サブスクリーンでコメントが解説してくれるんですよ。ニコ動の皆さんの解説芸が輝きましたよね。イヤフォンガイドの文字版みたいで、あれも、一つのコンテンツになっているなあと感動しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
肖像画をChatGPTに読み込ませて出力→加工して納品 委託先による著作権侵害で、小学館「サライ.jp」が謝罪
-
2
新作「鬼武者」にハマったマンガ家が熱弁する、他とは違う“パリィ”の魅力とは?
-
3
経営「AIでラクして早く帰って」→社員「帰らない」 工数最大9割減のDeNAも悩むAI効率化の壁
-
4
河川監視のライブカメラ水没か――千葉豪雨、村田川の映像が水中に 「こんなの初めて見た」
-
5
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
6
“自動で耳コピ”アプリ、ヤマハが無料公開 音源読み込み→3分でピアノ譜に
-
7
「iPhone Duo」実機をマニアック目線でチェック かな入力の分割不可、ケース装着時だけの隠し設定など
-
8
YouTube、収益化基準を2027年に大幅引き上げへ 新規参加条件が従来の2倍に
-
9
「食欲が削られる」――AIで作られた“気色の悪い飲食店メニュー”がXで物議 「実物を見たい」の声も
-
10
「労働時間を長くしたい」男性3%・女性6%……どんな人? 東大が調査
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR