庵野氏がSlackフル活用、Confluenceには100GBの設定資料――「シン・エヴァ」制作支えたITシステム(1/4 ページ)
映像制作業界の働き方が変わりつつある。ともすれば労働集約的で、“ブラック”とも言われがちなコンテンツ産業だが、ITが現場を変えつつあるのだ。
庵野秀明氏が率いるカラーは、IT化で制作効率を高めている映像スタジオの一つだ。システム部を社内に持ち、自前でサーバやインフラを整備している。
「自社内にシステム部があるアニメ制作会社は2017年当時、珍しい方だと感じていました」。同年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)から転職し、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で制作進行を担当した成田和優氏(現在はフリーランス)は振り返る。
前編・後編に続き、インタビュー番外編としてシン・エヴァの制作を支えたITシステムを、成田氏の言葉と、成田氏が中心となってカラーが編集したシン・エヴァの記録書「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン -実績・省察・評価・総括-」から確認する。
プロフィール
成田和優(なりた・かずまさ)
1984年生まれ。2008年にJAXAに入社し、約9年半勤務した後、2017年にカラーへ入社。有限会社ゼクシズに出向し、『あさがおと加瀬さん。』に制作進行として携わった後、カラーに復帰。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作進行を担当。2023年7月にプロジェクトとしての『シン・エヴァ』映画制作を振り返る公式報告書籍『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン』を上梓。2023年11月下旬に株式会社カラーを退社、以降フリーランスとなる。
SNSアカウント:@Narita_Kazumasa
書籍公式サイト: https://www.khara.co.jp/project-eva/
ニコニコ動画開発者がシステムを再設計 まずビジョンから
アニメ制作のデジタル化は1990年代ごろから急速に進んでおり、2000年代には定着。カラーにもシン・エヴァ制作前からシステム部があり、ネットワークやサーバといった制作用システムが整備されていた。一方で「潜在的な問題が積み重なっていた」と成田氏は言う。
当時の問題について前出の書籍には、「作品制作を最優先にするあまり、システムの根本的な思想・ビジョンが定まっていなかった」「プロジェクトごとにシステムマネジメントが行われており、ノウハウが蓄積されず、引き継ぎが困難などの問題があった」「その結果、システム障害が長引くこともあった」などと書かれている。
問題を分析してビジョンを定め、システムを設計・構築し直したのが、執行役員/技術管理統括の鈴木慎之介氏だ。鈴木氏は2000年に高校生でドワンゴに入社。「ニコニコ動画」に実質開発総指揮として立ち上げに携わるなどした後、シン・エヴァ制作中の2018年に執行役員になった。
鈴木氏が定めたシステムのビジョンは「クリエイティブに専念できる環境の構築」「継続性のあるシステムの実現」の2つだ。庵野氏をはじめとしたトップにビジョンと投資計画を説明し、承認を得てシステムを整備していった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
メルカリ、梨の転売疑惑に「盗品の出品は確認されず」 誹謗中傷には利用制限も
-
2
Anthropic、「Claude Opus 5」公開 Fable 5に迫る性能を半額で――サイバー安全策は緩和、拒否時は自動フォールバックも
-
3
「iPhone高騰」はこれからも続く? 中国CXMTに近づくApple、メモリ競合へのけん制が不発に終わりそうなワケ【後編】
-
4
「ニューロマンサー」実写ドラマ、Apple TV+で2027年1月配信開始へ
-
5
検索結果に「詐欺ではありません」と表示させる詐欺手口、警視庁が注意喚起 AI要約も餌食に
-
6
「こんなのに追われたら……」急斜面もやすやす爆走、中国製の車輪付き四足ロボのデモ動画が話題 最高時速20km超
-
7
海外の新作バカゲー「電車アタック」にマンガ家が感心した理由 ブッ飛んだ内容と完成度の高さ、そして“日本”
-
8
「めっちゃカメレオン」公式Discord乗っ取り 担当者PCがマルウェア感染、管理者が全員BANに 現在は復旧
-
9
暑さ対策が熱い! 「猛暑対策展」で感じた、転んでもただでは起き上がらない日本人のエネルギー
-
10
スーパーに並んだ「ごちゃごちゃ生成AIポップ」が物議 “看板王”こと、きぬた歯科院長「これはアリ」
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR